第42回日本自殺予防学会総会

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大会長挨拶

「あるべきように生きる―地域のつながりの中で自殺を防ぐ―」

近年のわが国における自殺者は、平成22年から徐々に減少し始め、平成28年の自殺者数は21,897人と、22年ぶりに22,000人を下回りました。これは、平成18年の自殺対策基本法の制定を機に、各地で自殺予防対策が講じられ、様々な人々が関わり、協力し合うことで得られた成果です。本学会ではこれらの成果を共有しながら、新たな知見を取り入れることで、各地域の自殺予防に還元し、さらなる自殺者の減少を目指してきました。

自殺予防が「つながり」に重きを置く一方で、少子高齢化、経済のグローバル化、デフレーションの進行などわが国の社会情勢は大きく様変わりし、地域においても集団の社会から個の社会へと変わり、つながりの希薄化が生じています。この傾向は今後さらに加速していくことが予想され、これまでのように家族だけで個を支えることが困難となり、地域やコミュニティの役割がさらに求められていきます。

本学会のテーマである「あるべきよう」は、『栂尾明恵上人遺訓』の別題である、『阿留辺畿夜宇和[あるべきようわ]』から引用しています。ここでは、『人は阿留辺畿夜宇和の七文字を持つべきなり。僧は僧のあるべきよう、俗は俗のあるべきようなり。乃至(ないし)帝王は帝王のあるべきよう、臣下は臣下のあるべきようなり。このあるべきようを背くゆえに一切悪しきなり。』と述べられています。河合隼雄は、その著作「明恵夢を生きる」の中で、『「あるべきようわ」は、(中略)時により事により、その時その場において「あるべきようは何か」と問いかけ、その答えを生きようとする』ものであると述べており、何でも受け入れる母性的なものでもなく、肩肘を張って物事を峻別しようとする父性的なものでもなく、違いを認めながら共和する心が大事だと説いています。ここから、患者さん本人が背伸びをせず卑屈にもならず、「あるべきよう」な個を尊重する生き方を体現してほしいという願いを本学会に込めています。そして、その生き方を尊重しながら、画一的ではない個々の支援ができるような地域・コミュニティを形成し、自殺を防いでいくということが非常に大切ではないかと考えております。

開催地である奈良県橿原市は、大和朝廷時代には歴史の中心的役割を担い、江戸時代には自由都市として栄えました。日本で最初の本格的都城である藤原京や、江戸時代の面影を残す今井町、神話と伝説が交差する神社仏閣、日本最古の歌集「万葉集」に詠まれた場所が数多く存在します。その中で人々は互いに認め合い、つながり、コミュニティを形成しながら歴史を作ってきました。この歴史の深い土地で本学会を開催することで、先人達の歴史を学び、これからの幸せを考える絶好の機会となることを期待しております。

皆様の多数のご参加を心よりお待ちしております。

第42回日本自殺予防学会総会

大会長 岸本 年史

奈良県立医科大学 精神医学講座 教授