教育講座2 「理屈を知らずに心電図を読んでいませんか?」

「たこつぼ症候群におけるパラダイムシフト」
聖マリアンナ医科大学 循環器内科明石 嘉浩

たこつぼ症候群は可逆性の心室収縮異常を呈する疾患群として、今では全世界で日本から発信された病名が認知されるようになった。当初は予後良好な疾患群として考えられていたが、実際には予後不良例も散見され、院内死亡率は急性冠症候群患者と比べて同等であることが解り、今では心臓性突然死を来す疾患として認識されている。また、再発例も報告される他、右室壁運動異常を合併する症例が存在すること、壁運動には様々なバリエーションが存在するなど、左室心尖部のみ収縮低下を来す症例ばかりでは無いと理解されるようになった。診断基準の再編があり、冠動脈狭窄合併例や褐色細胞腫、クモ膜下出血に合併する左室壁運動異常は本疾患群に含めようとする潮流より、現在では「心筋症」から「症候群」と変わりつつある。今回はたこつぼ症候群に関する総論と、自身も参画し、誌上発表されたエキスパート・コンセンサスの一部から、患者管理とリスク層別化について触れ、本症候群を取り巻く情報を整理してお伝えしたい。