Japanese Society of Oral Implantology

公益社団法人日本口腔インプラント学会第39回中部支部学術大会

超高齢社会のインプラント治療 -新たな挑戦-

市民公開講座

歯科における細胞治療の最前線 ― 細胞治療で健康寿命の延伸 ―
大会長:村上 弘
愛知学院大学歯学部 口腔解剖学講座
本田 雅規
 さて、もう「健康寿命」という言葉はご存知ですよね。健康寿命とは、健康上の問題がない状態で日常生活を送れる期間のことです。平均寿命と健康寿命の間には、男性で約9年、女性で約13年の差があるようです。市民の皆様も、健康でいきいきとした生活を送りたいと考えていると思います。一方で、「細胞治療」という言葉はご存知でしょうか?ここでは、歯科でも始まっている細胞治療について、わかりやすくご説明します。この細胞治療によって歯が延命されると、それに伴って健康寿命の延伸に繋がると考えて、今回の副題に「―健康寿命の延伸―」としました。
  講演の初めでは、どうして歯の延命が健康寿命の延伸に繋がるかをお話します。近年の調査で、元気な高齢者になるには、できるだけ多くの歯を残すことが大切であることを示す調査結果が出てきました。歯が多い人ほど咬む力が強いと考えると、咬む力が強いほど健康寿命を延伸することが期待できるようです。言い換えると、残っている歯が多くてもしっかり噛めないと健康寿命の延伸はできないことになります。では、歯を多く残すためにはどうしたらよいのでしょうか?一つの答えは、歯科医院で定期的に検査を受けて、予防治療を受けることです。しかし、すでに歯周病(歯槽膿漏ともいう)や齲蝕(むし歯)などが進行している人はどうしましょうか?進行が進んだ人への治療法は、まだ確立されていないのが現状です。この進行した歯周病や齲蝕に対する新しい治療技術が細胞治療(再生医療とも呼ぶ)によって開発されつつあります。この細胞治療についてのお話が今回の本題です。
 歯科で用いる細胞治療の細胞を間葉系幹細胞と言います。この間葉系幹細胞は、骨や脂肪の組織の中に潜んでいますが、いざ、必要となると活発に活動し始めて、骨、脂肪および軟骨を新しく作りだすことができます。最近では、この間葉系幹細胞が炎症を抑えたり、血管を新しく作ることを補助したり、免疫機能を調節することも明らかになってきましたので、炎症性疾患にも応用されています。
 口の中は、この間葉系幹細胞が採取できる部位が多いのが特徴です。骨、歯根膜、歯肉、そして歯髄です。中でも歯髄は、脱落しそうな乳歯からも採取できることから、誰からでも採取可能な部位です。歯髄にいる間葉系幹細胞を歯髄幹細胞と呼び、この歯髄幹細胞から歯髄や歯を支える組織(歯周組織)および骨が再生できます。話は少し大きくなりますが、細胞を使って、新しく歯を作り出す研究についての話もさせていただきます。
 以上、この講演が終了時には、歯と歯周組織の基本的な知識から、歯髄や歯周組織を取り戻すための新しい細胞治療が健康寿命の延伸に繋がることを理解していただき、聴講されている皆さんが、歯の大切さを再認識していただければ幸いです。