会長挨拶

戸山 芳昭

第50回日本脊髄障害医学会 会長
慶應義塾 常任理事
慶應義塾大学医学部 教授
戸山 芳昭

第50回日本脊髄障害医学会(2015)開催に当たって

この度、記念すべき第50回日本脊髄障害医学会を慶應義塾大学が担当させて頂くことになりました。大変名誉なことであり、次の50年に繋がる素晴らしい学会になるよう企画、運営に当たっていく所存です。

さて、ご承知のように、本学会は九州大学整形外科の天児民和教授と慶應義塾大学整形外科の岩原虎猪教授により創始され、昭和41年に第1回が天児教授を初代会長として開催されました。翌年の第2回は岩原教授が会長を務めております。当時は高度経済成長期に当たり、炭鉱などの各種産業での労災事故や交通事故などの増加と相俟って脊髄損傷患者が急増し、その対応が大きな社会問題となっていた時代でもありました。そのため、脊髄損傷の病態と診断・治療に関する研究が精力的に進められ、今日の脊椎・脊髄外科の基礎を築いたと言っても過言ではありません。そして、本学会に関係した多くの先人達の努力により、世界に向けて数多くの業績を発信し、脊椎・脊髄外科の治療成績向上に大きく貢献してまいりました。このように、本学会は脊髄障害、中でも脊髄損傷に対して、臨床では整形外科や脳神経外科、神経内科、泌尿器科、リハビリテーション科などが、基礎では神経生理学や電気生理学、さらには薬学や再生医学などが、加えて、臨床現場での治療においては理学・作業療法士や看護師、ソーシャルワーカーなどが多方面から密に連携し、今日に至っております。

その中で、特に近年の分子生物学や遺伝学、幹細胞医学、画像診断学等の発展は目覚ましく、医学・医療を根本から大きく変え、難治疾患や不治の病とされてきた疾患・障害までも治すことが出来る可能性が出てまいりました。素晴らしいことです。50年前、本学会が始まった頃、誰がこの脊髄損傷再生の可能性、実現を考えていたでしょうか。医学の進歩、基礎研究の成果により、今や組織、臓器やその機能まで再生可能なところまで来ております。そして、画像でも見えなかったものが見える時代を迎えています。

そこで、本学会では、過去50年間の脊髄障害、脊髄損傷に対する基礎・臨床研究を振り返り、現状を総括し、将来展望として脊髄再生への挑戦を熱く論じて頂く学会になるよう企画するつもりです。本学会のテーマは『脊髄損傷再生への挑戦−半世紀を振り返り、次の百年へ−』、会期は平成27年11月19日(木)、20日(金)の二日間、会場は東京のグランドプリンスホテル高輪と致しました。そして、本学会の特別講演には、iPS細胞の生みの親、育ての親であるノーベル医学・生理学賞受賞者の京都大学・山中教授をお迎えすることが出来ました。この記念すべき第50回の本学会に山中教授をお迎えできることは誠に光栄であり、多くの会員の皆様のご参加を心よりお待ちしております。

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