会長挨拶

第52回日本腹部救急医学会総会開催ご挨拶
「進歩のための原点回帰-集え、学べ 若い力-」


この度、第52回日本腹部救急医学会総会会長を仰せつかり、2016年3月3日(木)・4日(金)の2日間、京王プラザホテルにおいて本総会を開催させていただくこととなりました。5500名余の会員を擁する日本腹部救急医学会の、外科、内科、救命救急、放射線科、内視鏡科らの様々な専門医師が一堂に会する伝統ある総会を日本医科大学が主催させていただくことは、この上ない栄誉であるとともに、その重責に身の引き締まる思いです。

腹部救急疾患は頻度も高く、最も社会が要求している医療分野の一つです。その診断治療を夜間でも的確に行う医療機関は都市でも限られており、ましてや医療崩壊が叫ばれている地方では限定されています。この問題を解決するには様々な問題がありますが、重要な打開策としては、若手の育成であろうと思います。本学会は「若手の登竜門、若手の育成および教育」という理念を発足当時より重視し、多くの若き医師への実践的知識・経験の継承に努めてきました。

若手医師の育成という本学会の理念から、第52回総会のメインテーマを「進歩のための原点回帰―集え、学べ 若い力―」としました。「若手の登竜門」として熱意ある若手を経験のある上級医が暖かくも厳しく指導することで標準医療を確実に伝授し、次の世代が社会に貢献できるような環境の構築の一助となるような総会にしたいと考えました。そして、今回はポスター発表を採用しませんでした。これは、医療に必要な緊張感を学会発表でも経験し、十分なコミュニケーション能力を発揮してもらいたいと考えたためです。

一方、当学会では腹部救急疾患に関する種々のガイドラインを作成してきました。これらを自ら検証し、さらなるエビデンスを求めるために、ガイドラインおよびその検証に関するセッションも多数設定しました。優れたガイドラインの作成・発信は当学会の重要な課題ですので、熱い議論をよろしくお願い申し上げます。

皆様より約1000題の演題応募をいただき、テーマに沿って上級演題、一般演題を組むことができました。本総会では今後の本学会の方向性を示す理事長企画、特別講演としては、脳機能開発研究の指導的立場の川島隆太先生(東北大学加齢医学研究所所長)、鉄道運輸事業のリーダーとして小縣方樹氏(JR東日本株式会社副会長)のお二人をお招きし、腹部救急とは異なる分野からの興味深いご講演をいただくことになっています。

科学の進歩によりもたらされた技術革新を腹部救急領域疾患に適切に導入することも本学会の使命と考えています。治療においては鏡視下手術の有効性が示され、MDCTなどの診断機器の進歩は腸間膜血栓症や腸閉塞などの腹部救急疾患の診断に大きな進歩をもたらし、多くの患者の診療に不可欠となりました。本総会においては日常遭遇する疾患に対する、新しい知見や技術を早く、広く普及させるための議論も進めるとともに「原点回帰」を目指したいと考えています。

今回より、本学会の認定医・教育医制度によるセミナーも開催されます。詳細はプログラムページを参照ください。先生方におかれましては、新年度を控えた3月というご多忙な時期とは存じますが、日常診療の激務の中、共に研鑽を積んできた若手医師の成果発表と慰労、そして厳しい環境の中で支え合う強い絆を築く場としてご参加いただければ望外の喜びです。

第52回日本腹部救急医学会総会 会長
日本医科大学消化器外科 主任教授
内田 英二