会長挨拶

年会長 佐々木 均

第42回日本臨床バイオメカニクス学会
会長 宗田 大
東京医科歯科大学大学院 運動器外科学 教授

 私の整形外科研究の原点となった日本臨床バイオメカニクス学会を、今回東京医科歯科大学大学院運動器外科学が主体となって開催させていただけること、まことに光栄に存じております。会場は大学のすぐ近く、御茶ノ水のシンボル聖橋の南に最近できたソラシティカンファレンスセンターにいたしました。交通のアクセスの大変良い、東京ならではの会場です。

 私のバイオメカニクスとの出会いは1983 年。長野県のリハビリテーション病院に赴任することを決心した時からです。その病院には研究施設があり、すでに私の先輩、同輩が力学試験やひずみ計測、歩行解析を始めていました。膝前十字靭帯損傷の魅力に目覚めていた私は、当時1980 年代のNoyes 先生のACL 引っ張り試験にとくに興味を持ち、自ら日本白色家兎を仕入れながらACL の引っ張り試験を始めました。その後大学に戻り工学系の先生に支援を得ながら、屍体膝を用いた力学試験やキネマティクス研究も続けました。1990 年米国ミネソタ大学整形外科バイオメカニクス部門に留学したのも、当時のミネソタ大学の研究手法を私が踏襲していたからでした。その後もバイオメカニクスを中心とする研究を維持してきましたが、アイデアはあっても研究の息切れが強く、2000 年の現職就任を契機にバイオメカニクスの研究はたち切れになってしまいました。その大きな原因は手法とシステムが確立できなかったこと、工学系の先生と1 つの目標に向かうしっかりした関係が構築できなかったことにあると思います。

 今回の学会のテーマを“Let’s practice clinical biomechanics!” としました。

 整形外科を中心とする目に見える臨床にとって、バイオメカニクスは多くの若い医師に実践していただきたい研究手法です。基調講演として史野理事長と古賀良生先生に自らが手がけたバイオメカニクス研究についてお話ししていただくことにしました。招待講演としてSteadman Philippon Research Institute のLaPrade 先生に膝靭帯損傷のバイオメカニクスをお話ししていただきます。先生はミネソタ大学で長年バイオメカニクス研究をされていたこともあり、今回お呼びすることにしました。その他、本会のテーマを実現すべく、基本的なバイオメカニクス手法などの講演を13 と臨床・基礎の6つのシンポジウムを組みました。

 また東京医科歯科大学生体材料工学研究所の川嶋先生に内視鏡支援ロボットのお話を、私が大変お世話になった高久田先生には東北大の仲井先生とともに新材料とバイオメカニクスについてお話ししていただきます。

 当初演題が集まらず、どうなることかと思いましたが、最終的に昨年同様の演題数をいただくことができ、何とか本会をできそうな気になっています。ありがたい限りです。少しでも新しい研究のイマジネーションをかきたてられれば、参加して有意義な学会だと思っています。

 学会の成否は参加する皆様にかかっております。どうかよろしくお願い申し上げます。