ご挨拶

日本ペインクリニック学会
第4回東海北陸支部学術集会 会長 柴田 康之
(名古屋大学医学部付属病院手術部 准教授)

 この度、日本ペインクリニック学会第4回東海北陸支部学術集会会長を拝命いたしました名古屋大学医学部附属病院手術部の柴田 康之でございます。新型コロナウィルスのパンデミックの流行波も第8波となって、国内の感染者数、死亡数は過去最多を記録しています。当初はこのウィルス感染症は致死率5.4%と高く、私たちは未知の感染症による死の恐怖に直面しました。しかし、人類は科学の力を結集し、ワクチンや抗ウィルス薬を開発し、病態から集中治療の方法を確立して、今やその致死率は0.2%と低下しています。こうした現状を踏まえ、日本政府は新型コロナウィルス感染症の感染症法上の位置づけを本年5月8日から「2類相当」から「5類」に段階的に移行することを決定しました。これに伴い日本ペインクリニック学会第4回東海・北陸支部学術集会は名古屋で現地開催させていただくことにしました。これは東海地区と北陸地区が合体して初めての現地開催の支部学術集会となります。私どもが未だ経験したことのない規模の支部学術集会になるはずですので、今後の東海北陸支部学術集会の試金石となると考えております。
 最近のペインクリニックでは、慢性疼痛の多くが侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、痛覚変調性疼痛が複雑に絡んで長期化しているため、薬物療法やインターベンション治療に加えて心理的アプローチや運動療法も行って「痛みがあっても社会生活ができる」ように患者を導くことが治療の軸になっています。新型コロナウィルス感染症の治療が日々進歩していったように慢性疼痛の治療もコロナ禍でも変化しています。
 インターベンション治療では新しい低侵襲な機器や治療法が登場して痛みの緩和を提供できるようになっています。癌の薬物療法では癌の長期生存者に対する適切なオピオイド使用やその副作用への対応が問題になってきています。また腹腔神経叢ブロックなどの従来の侵襲的処置も再びニーズが増えています。医療機器メーカー、製薬会社、ペインクリニック医が一緒になって慢性痛治療を改善させようと努力する姿がそこにあります。われわれは常に現状把握をして、問題解決のために次の方向性を見いだしていく必要があります。そこで本支部学術集会では「痛み診療のレベルアップ」
をテーマとしました。ペインクリニック医が今の状況を把握して、翌日からの診療を変えることができるように学びの場になればと考えております。
 多くの演題登録とご参加を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

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