ご挨拶

第35回腎と脂質研究会
当番世話人 鶴屋 和彦
(奈良県立医科大学腎臓内科学)

代表世話人 鶴屋 和彦

この度、第35回腎と脂質研究会の当番世話人を拝命し、主催させていただくこととなりました。伝統ある本会を担当させていただき大変光栄に存じますとともに、このような機会を与えて下さいました世話人の先生方に心より御礼申し上げます。

近年の高齢化に伴い腎硬化症による慢性腎臓病(CKD)が増加し、2020年末の調査では、透析導入患者の原疾患として腎硬化症が全体の17.5%を占め、慢性糸球体腎炎を抜いて第二位となっています。今後、さらに増加すると予想されますので、CKD対策における動脈硬化症対策の重要性はさらに高まり、脂質管理の重要性も増してくるものと思われます。

近年、動脈硬化症におけるCKDと高TG血症が注目されています。2022年に動脈硬化性疾患予防ガイドラインが改訂され、CKDのリスク管理について新たに項目が追加され、CKD患者における早期からの積極的な脂質低下療法が推奨されました。また、脂質異常症診断基準は新たにトリグリセリド(TG)の項目が追加され、空腹時採血で150 mg/dL以上、随時採血で175 mg/dL以上を高TG血症とする診断基準値が設定されました。最近われわれは、特定検診データの解析を行い、高TG血症が腎機能障害例で多くみられ、CKDの発症や進展の独立した危険因子であることを明らかにしました。CKD患者における高TG血症の治療において、従来、TG低下作用の強いフィブラート系薬剤の使用は、その多くが腎排泄型であったことから消極的でしたが、近年、胆汁排泄型のベマフィブラートが使用可能となり、高度腎機能障害例には禁忌とされているものの、CKD患者においてTG低下療法が行いやすくなっています。しかしながら、その予後改善効果については現時点では不明であり、臨床でのエビデンスが待たれるところです。一方、先進医療として行われていた「難治性高コレステロール血症に伴う重度尿蛋白を呈する糖尿病性腎症に対するLDLアフェレシス療法」の有効性が評価され、2022年の診療報酬改訂で保険適用として承認されました。

このように、CKD患者の脂質低下療法の重要性は明らかに高まっていると思われますが、腎と脂質の関連性についてはまだ不明なところが多く、さらなる議論が必要と思われます。本会が、腎と脂質の臨床・研究に携わる方々の貴重な議論の機会となり、明日からの診療に少しでも貢献できることとなれば幸いです。多くの皆様のご参加をお待ち申し上げております。

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