第48回日本高血圧学会総会
会長 苅尾 七臣
(日本高血圧学会 理事長/自治医科大学)
このたび、2026年に開催される第48回日本高血圧学会総会を、栃木県宇都宮市の「ライトキューブ宇都宮」にて主催させていただくこととなりました。宇都宮は、東京から新幹線でわずか50分。自然と都市が調和し、また“ジャズの街”としても知られる文化豊かな都市です。街角から音楽が流れ、人と人とが心地よくつながる温かな街――まさに「ネットワーク」というテーマにふさわしい場所です。ぜひ多くの皆さまにお越しいただき、学びと交流の時間をお楽しみください。
■ テーマ:「新時代のネットワーク高血圧学 ― 時空間をつなぐ次世代医療へ」
日本では現在、約4,300万人が高血圧を有していますが、治療中であっても十分に血圧が管理されている方はわずか4分の1にとどまります。その背景には、「測らない」「続かない」「つながらない」という三つの壁があります。これらの課題を克服するため、私たちは「実装高血圧学(Implementation Hypertension)」の理念のもと、ガイドラインの浸透と社会実装を進めています。特に「血圧朝活キャンペーン」は、全国民が朝の血圧を測る文化を育てる運動として広がり、“測ることが守ること”という新しい健康意識の定着を目指しています。
■ 新しい降圧治療の進歩と実装
近年、高血圧治療は薬物療法の枠を超え、エビデンスとテクノロジーの進化により新たなステージを迎えています。SGLT2阻害薬、ARNI新世代MRブロッカーといった心腎連関を意識した薬剤や、現在開発が進むアルドステロン合成阻害薬やRNA干渉薬など新規の降圧薬は、夜間血圧を含めた24時間血圧管理に寄与することが明らかになりつつあります。固定配合剤による服薬アドヒアランスの改善、そして腎デナベーションをはじめとするデバイス治療の臨床応用も進展し、治療抵抗性高血圧に対する新たな希望として、世界的にも注目が高まっています。こうした「新しい降圧治療の進歩」を、薬物療法・生活習慣介入・デバイス治療の三本柱として統合的にとらえ、次世代高血圧治療モデルを探求してまいります。
■ デジタルハイパーテンションの時代へ
AI解析、ウェアラブル血圧計、遠隔モニタリング、そしてアプリ治療(DTx)などのデジタル技術の進歩により、高血圧管理は新たな次元へと進化しています。これらの技術を活用し、診療室・家庭・地域・職域のデータを統合することで、「デジタルハイパーテンション(Digital Hypertension)」という新しい概念が現実のものとなりつつあります。デジタルハイパーテンションは、血圧の変動を時間(朝・夜・季節)と空間(自宅・職場・診療所)の軸で可視化し、AIによる解析で個々人に最適な血圧管理を可能にします。こうした時空間を超えたデータ連携は、「時空間ネットワーク高血圧学」の中核をなし、人とデータ、科学と生活をつなぐ新しい医療の形を創出します。
■ 国際連携と未来への展望
本大会では、アジア諸国との協働を通じて、「アジア型高血圧治療管理モデル」の確立を目指します。食塩摂取や気候、文化など地域特性を踏まえたエビデンスを共有し、世界の高血圧診療をリードしていくことが、私たち日本高血圧学会の使命です。
日本高血圧学会2026宇都宮では、国際セッションを丸一日行います。アジア各国より高血圧管理治療に関する演題をお待ちしています。
発表演題については、希望者にはHypertension ResearchへのFast Track査読も行います。カバーレターに発表演題の登録番号及びFast Track希望と明記していただき、発表演題の登録時に論文を投稿いただければ幸いです。光と音に包まれた交流拠点「ライトキューブ宇都宮」で、科学・社会・文化が響き合う新たな高血圧学の未来を、ともに描きましょう。
多くの医療関係者、研究者、そして地域の皆さまのご参加を心よりお待ち申し上げます。
© 2025 The 48th Annual Scientific Meeting
of the Japanese Society of Hypertension