「今を紡ぎ、未来につなぐ」第52回学術集会の開催にあたって
 
第52回日本リハビリテーション医学会学術集会
会長 里宇 明元
慶應義塾大学医学部 リハビリテーション医学教室 教授

 2015年5月28日(木)から30日(土)の3日間、新潟市朱鷺メッセで第52回日本リハビリテーション医学会学術集会を開催いたします。伝統ある本学術集会の会長を拝命しましたことを光栄に存じますとともに、魅力的なプログラムのご提案、多数の演題のご応募、講演ならびに座長依頼のご快諾など、多くの皆様のお力添えにより開催に漕ぎ着けられましたことに心から御礼申し上げます。とりわけ、新潟での開催にあたり、企画段階からさまざまな形でご支援、ご協力くださいました新潟県リハビリテーション研究会の皆様には本当にお世話になりました。
 学術集会のメインテーマは、「今を紡ぎ、未来につなぐ」とさせていただきました。これは、リハビリテーション医学・医療に携わる者一人ひとりが、それぞれの置かれている環境や立場の中で、今できること、なすべきことを丁寧に紡ぎながら、学術集会という集いの場に成果を持ち寄り、それぞれの糸を1本の太い糸に束ね、力強く未来につなげて行きたい、という願いを込めたものです。
 リハビリテーション医学は、疾病、外傷、加齢などの要因により心身・生活機能に生じた「変化」を的確に診断・評価し、さまざま治療手段を駆使して、新たな状態への「適応」を創造的に支援する、すなわち「変化に対する適応をデザインする」医学と捉えることができます。
 このような特質を持つリハビリテーション医学が、医学と社会のさらなる進歩に向けて一層の貢献を果たしていくべく、学術集会を、 1)サイエンスとしてのリハビリテーション医学が深化・進化する場、 2)研究・教育・臨床の実践能力が高められる場、 3)若手が活き活きと力を発揮できる場、 4)国内外のリハビリテーション関係者・団体、一般市民との連携が深まる場と位置づけ、プログラムを組ませていただきました。
 プログラムは、特別講演8、教育講演14、シンポジウム8、パネルディスカッション3、共催シンポジウム1 ハンズオンセミナー/ワークショップ6、ランチョンセミナー17、市民公開講座3、レジデント企画、ハルビン―新潟交流プログラムなどから構成されています。加えて、一般演題795題、関連専門職ポスター演題261題と充実したプログラムを組むことができましたので、活発な討議を通じ、学問を深化・進化させながら、参加者間の交流が深まることを願っております。
 特別講演には、向井 千秋先生(宇宙医学、宇宙航空研究開発機構JAXA)、宮下 保司先生(認知記憶、東京大学生理学教室)、木村 淳先生(筋電図学、University of Iowa)、Andrew Jackson 先生(霊長類神経科学、Newcastle University)、Fay B.Horak 先生(バランス障害、Oregon Health& Science University)、 Hartwig R. Siebner 先生(多次元脳機能マッピング、Danish Research Centerfor Magnetic Resonance)、Jianan Li 先生(国際リハビリテーション医学会(ISPRM)会長)、Zaliha Omar 先生(第10 回ISPRM 会長、Malaysia)をお招きしました。国際的に著名な各分野の第一人者から、多くの示唆に富んだお話が伺えるものと楽しみにしております。
 教育講演では、Ying-Zu Huang 先生( 磁気刺激、Taiwan)、Peter Konrad 先生(動作解析、USA)、Stephen Scott 先生(ロボット評価、Canada)、Anton Johannesson 先生(切断、Denmark)による海外招聘講演をはじめ、国内の第一線の研究者・臨床家によるリハビリテーション医学に関わる多彩なテーマでの講演を予定しております。
 なお、海外招聘者と向井先生には、“Meet the Mentor Session”へのご協力もお願いしました。気軽な雰囲気の中で、各界の先導者と親しく交流を深められるよい機会ですので、奮ってご参加ください。
  リハビリテーション医学の多様な分野の最新動向を俯瞰すべく、シンポジウムでは循環器、災害、神経科学、がん、認知症、ロコモティブシンドローム、回復期リハビリテーション関係のテーマを、パネルディスカッションでは呼吸、地域、動作解析関係のテーマを取り上げました。この中のいくつかは、本学会と関連の深い学協会との合同企画として開催されます。
 さらに、難しい症例にチームでチャレンジしながら若手の交流を深めるレジデント企画、共催サテライトシンポジウム、筋電図・臨床神経生理、HANDS療法、歩行解析、ボツリヌス療法、ITB療法、運動負荷試験をテーマとした実践的なハンズオン企画ならびに多彩なテーマのランチョンセミナーを予定しており、全体を通してリハビリテーション医学の広がりと奥深さを堪能していただけるものと思います。
 また、国際交流の一環として新潟市と友好都市協定を結んでいる中国ハルビン市との交流プログラムを開催いたします。人口約1000万のハルビン市は、黒竜江省の政治・経済の中心であり、新潟市とは直行便で2時間半で結ばれています。人口の高齢化とともにリハビリテーションに対するニーズは高く、日本との交流に大きな期待が寄せられています。今回、約20名のリハビリテーション医学関係者が来日され、学術集会プログラムやソーシャルイベントへの参加、ポスター演題発表、摂食嚥下リハビリテーションに関する集中セミナーへの参加、また、学術集会終了後には日本各地の先進的リハビリテーション医療施設への見学ツアーなどが予定されています。草の根から日中の交流が深まることを期待しております。
 併せて、社会に向けての発信として、3つの市民公開講座を企画しております。学術集会2日目には歌手のイルカさんにより、パーキンソン病を患われたご主人の介護体験を通した講演が行われます。そのあとの全員懇親会ではミニコンサートをお願いしており、ファンのひとりとして今から楽しみです。3日目の午後には、JAXAと共同で宇宙医学研究シンポジウムを開催し、リハビリテーション医学と関わりが深い宇宙医学研究の現在と未来を医療関係者・市民と共有します。翌日31日(日)には、2020年東京オリンピック・パラリンピックの成功を願い、横浜市の慶應義塾大学日吉キャンパスにおいて、“トップアスリートが語るパラリンピックの魅力”のテーマで、小中学生による車いすバスケット体験とシンポジウムを行います。
 学術集会の成功に向け、教室員が一丸となって準備・運営に取組んでまいりますが、参加される皆様一人ひとりのお力により、第52回学術集会が「今を紡ぎ、未来につなぐ」ための素晴らしい交流の場となりますことを願い、ご挨拶にかえさせていただきます。




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