第8回日本サルコペニア・フレイル学会大会

大会長挨拶

第8回サルコペニア・フレイル学会大会開催にあたり
幸福長寿のためのフレイル研究の新展開

このたび、第8回サルコペニア・フレイル学会大会の大会長ならびに副大会長を務めさせていただくことを大変光栄に存じます。役員をはじめ関係の方々に心より感謝申し上げます。本学会のテーマを「幸福長寿のためのフレイル研究の新展開」とし、特に予防・治療法の確立につながる研究の進捗を参加者で共有することにより、フレイル、サルコペニア、ロコモを次のステップに押し上げる契機になることを期待しております。

さて、日本は世界屈指の長寿国になりましたが、高齢者人口増加により高齢者の健康「格差」が顕在化しています。75歳以上では心身共に健康な高齢者から要介護や寝たきり状態の高齢者まで存在する状況で、暦年齢を指標とした高齢者対策では不十分な時代になっています。そのなかで登場した前要介護状態を客観的に捉える「フレイル」は、健康な高齢者をそのまま維持し、要介護予備軍を要介護・寝たきりに進まないように維持・改善させるために重要な概念であることは理解されるようになってきました。この大きなテーマに対して国・自治体も積極的に取り組むようになり、2020年春からは高齢者健診において「後期高齢者の質問票」の使用も開始されるなど、よりフレイルを重視する体制が整ってきています

これまで7年間に渡り、本学会でフレイル、サルコペニア、ロコモをテーマに医師、メディカルスタッフ、企業に加え行政からの参加者とともに最新の知見を元にフレイル、サルコペニア、ロコモについて議論をしてきました。この間に日本のサルコペニア、フレイルのガイドラインが発表され、アジアのサルコペニアワーキンググループ(AWGS)によるサルコペニアの診断基準も改定されるなど、特に定義、診断、疫学の領域では目覚しい進歩がありました。しかし、診断法が確立されたにも関わらず、実臨床においてそれに基づいてフレイル・サルコペニア・ロコモを診断し、対策を講じることが十分に活かされていないという現状があります。地域における積極的な活動は増加していますが、実臨床ではフレイル・サルコペニアの評価、加療に対する診療報酬がないため研究レベルに留まっています。また予防や治療に関するレベルの高いエビデンスがまだ多くありません。一方で、2040年を見据えた2020年から5年間の健康・医療戦略における疾患領域開発において老年医学が取り上げられるなど、フレイルの関する研究を全国的に進めていく環境は整備されています。

今回、face-to-faceでの学術的交流の場を作りたいという思いで、全国から交通の便の良い千里ライフサイエンスセンターを会場として開催を計画しております。(コロナ対策のために現地開催でお集まりいただくことが困難な場合は、第7回と同様に、オンデマンドを含むWEB開催も検討いたします。)大阪空港からも新幹線の新大阪駅からも公共交通機関で25分程度です。コロナ禍がどのように収束していくのか予想がつかない状況が続いておりますが、多くの皆様に大阪にお越しいただけることを心より願っております。大阪はご存知のとおりくいだおれの街ですので、食事も楽しんでいただきたいですが、大阪城や世界遺産となった百舌鳥・古市古墳群、ユニバーサルスタジオジャパン、海遊館など見どころもたくさんあります。大阪は非常に活気のある街ですので、フレイル対策の必要な「活動性の維持」につながる部分もあるかと思いますで、一人でも多くの参加を心よりお待ちしております。

大会長: 楽木 宏実 (大阪大学大学院 老年・総合内科学 教授)
副大会長: 杉本 研 (川崎医科大学 総合老年医学 教授)
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