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会長挨拶

第24回日本心不全学会学術集会
大会長 福田 恵一
慶應義塾大学医学部 循環器内科 教授

大会長 福田 恵一

第24回日本心不全学会学術集会を、2020年10月15日(木)から17日(土)まで3日間にわたり、パシフィコ横浜を会場として開催させていただく予定でありましたが、COVID-19の感染状況に鑑み、会員の皆様の安全を第一優先とし、WEB開催することと致しました。

薬物の開発やデバイスの発達により、高血圧、高脂血症、虚血性心疾患、不整脈、心臓弁膜症、先天性心疾患、代謝性心疾患等の治療が飛躍的に発展し、効果的かつ非侵襲的に治療ができる時代となりました。その一方、心不全は現時点ではまだ根本的な治療法が構築されていないのが現状です。これは、心不全の原因疾患が多彩であり、さまざまな心疾患の終末像であることに起因しています。これまでの心不全の治療は、原因疾患に関わらず心不全を一つの病態として捉え、単一の薬剤で治療しようとする試みがなされて参りました。β遮断薬やACE阻害薬、ARB、アルドステロン拮抗薬という有効な薬剤が見いだされ、CRT等のデバイス治療も登場しましたが、その後は新たな治療法の開発は困難を極めています。

これは心不全の病態を心収縮力低下(駆出率)によりHFrEFとHFpEFの二つに単純化して理解しようとしたことに根本的に無理があり、さまざまな原因疾患ごとに病態の解明と治療法を開発すべきであると、私は考えております。心不全の原因は、(1)心筋梗塞・心筋炎のような心筋細胞の量的不足、(2)肥大型心筋症・遺伝性不整脈のような心筋の質的異常、(3)心ファブリー病や心アミロイドーシスのような心筋内・間質組織への異常蛋白の蓄積、(4)拘束型心筋症や心内膜線維弾性症に代表される線維化等に分類し、それをさらに成因別に分類する必要があると思われます。そして、その成因ごとに正確に診断するとともに治療法を講じていくべきでしょう。癌の研究では、発生部位・病理組織の分類から発癌の原因遺伝子ごとに再分類され、個別化医療への道が開かれました。心不全も同様に、心不全の発症原因ごとに再分類され、これに基づいた治療法の開発に向かうべき転換期を迎えております。

心不全においても、近年個々の病態に応じた診断・治療法の考え方が少しずつ普及してまいりました。心ファブリー病や心アミロイドーシスの診断法が確立されるとともに、治療法が開発されました。肥大型心筋症も原因遺伝子が多彩であるにもかかわらず、表現型が酷似していることから、新たな治療法の考え方が提言され、治療法が開発されつつあります。また、私がライフワークとして続けてきたiPS細胞由来再生心筋細胞の移植による心不全治療法も充分成熟し、FIH(First in human)をいつ開始するかの段階にまで到達しております。心筋梗塞や心筋炎後等の心筋の量的不足を起因とする疾患に対して、心筋再生療法は活用されるであろうと思われます。

そこで、本学術集会のテーマを『心不全の個別化治療への挑戦』とさせていただきました。昆虫記で有名なファーブル先生も、昆虫を詳細に観察することから、その生態を明らかにすることが出来ました。本学術集会を機に、我々もファーブル先生のように、個々の心不全症例を詳細に観察することによりその成因(遺伝要因と環境要因)を究明し、その病態に応じた個別化医療を切り拓いていく第一歩にしたいと考えております。