会長挨拶
第30回日本心不全学会学術集会開催にあたり

第30回日本心不全学会学術集会
会長 絹川 弘一郎
富山大学学術研究部医学系内科学(第二)講座 教授
このたび第30回の日本心不全学会学術集会の大会長を拝命いたしました絹川でございます。第30回の記念すべき大会をお任せいただきまして、身の引き締まる思いでおります。私自身は2022年10月第26回の学術集会時の理事会で理事長に選任いただきまして、第30回の学術集会時には4年勤めさせていただくこととなります。この間、心不全領域においては多くの学術的進歩がありまして、いかにそれを実践し、普及していくかを常に考えさせられてきた数年間であったと思います。第26回奈良での学術集会はCOVID-19パンデミックが明け対面での学会再開時期にあたり、大変多くの会員その他の方々にお集まりいただきましたが、その後学術集会への参加人数は年々右肩上がりに増加しており、この領域への関心度の高さ、また関わっておられる方々の熱意が感じられる次第です。第29回は米子、第30回は富山、そして第31回は新潟と日本海シリーズが続きますが、10月はどの地域も気候が安定しており、これまで訪れたことのない方々もぜひその地方ならではの名勝美味をご堪能いただけるのではないかと思います。
さて、今回第30回のテーマは「pauca sed matura」とさせていただきました。これはドイツ(当時は神聖ローマ帝国)の18世紀から19世紀にかけての大数学者C. F. Gaussのラテン語の座右の銘であります。ご存じの方も多いと思いますが、ガウスは近代数学の第一人者であり、未発表のものを含めると現代の数学、物理学、天文学の基礎をほとんど網羅的に作ったと言える人です。「pauca」は少ない、または狭い、「sed」=「but」、そして「matura」は成熟した。または深い、という意味で、日本語的にはいくつか訳があるのですが、私は「狭くとも深くあれ」、がもっとも相応しいと感じています。ガウス自身の業績は少しも「狭くなく」、それでいてすべて「深い」研究なのですが、私自身は何か1つでも「狭くても」、「深い」仕事ができればと思い、この30年来やってまいりましたし、その思いを若い世代に伝えたく今回のテーマにいたしました。心不全の臨床・研究は実に幅が広く、そのすべてに深い考察が必要ですが、ぜひ若い先生方にはこれだけは誰にも負けない分野を1つでもいいので持っていただきたいと思っております。その意味で第30回の学術集会ではなるべく1つのことを深掘りするセッションを構成したいと思います。
時代は激動しており、日本心不全学会も今後新たな形を作るべき時に来ていると思います。学会のあり方もこれからまた多くの議論が必要でしょう。第30回の学術集会までまだ少し時間がありますが、それまでに少し新たな方向づけもご提案できるよう努力してまいります。それでは2026年10月富山で数多くの方々のご参加お待ちしております。