会長挨拶

第65回日本病理学会秋期特別総会を2019年11月7日、8日の2日間、つくば市つくば国際会議場にて開催いたします。

現代の病理学において、医学の基盤となる“基礎病理学”と日常医療の基盤である“診断病理学”は我々病理を専門にする会員にとって欠かせない両輪であることは周知の通りですが、基礎病理学を支える会員と診断病理学を主たる業務とする会員の間でその活躍の場に隔たりが生じていることを感じない会員はいないのではないでしょうか。本来、両者は病理学の両輪を担う学問であり、病理学を牽引すべき両輪であるはずです。そこでこの秋期特別総会では、「病理診断は学問か?医学研究か?」をテーマにあげて、病理学が日本の医学にどのように貢献できるかを議論する会にしたいと考えております。

本総会では、病理診断特別講演、A演説、B演説を従来通り行うほか、シンポジウムを3つ計画しております。病理診断特別講演では、国立循環器病研究センター病理部長の植田初江先生に心筋生検の極意をお話しいただけることになりました。また、本年度はA演説4題、B演説2題が採択されました。肺、唾液腺、胆道、膀胱、卵巣、リンパ節、と色々な臓器の興味ある病理学的研究をご発表願います。また、シンポジウム1は“早期がん研究の現状と将来”と題していくつかの臓器における早期がん研究の現状と将来をお示しいただき、臓器横断的に研究の成果を理解し合えるシンポジウムを目指しています。シンポジウム2“基礎研究医養成活性化プログラム”では平成29年度大学教育再生戦略推進費による事業である「基礎研究医養成活性化プログラム」を推進する各校の試みとその進捗状況をご発表願い、病理学会全体で、病理学を基盤とした基礎研究医養成の方略を考えるシンポジウムになればと思います。最後にシンポジウム3“ゲノム生物学は人体病理学をどのように変えられるか?”では次世代シーケンサの汎用化に伴ってその影響力を増しているゲノム生物学と人体病理学について考えたいと思います。人体病理学はどのようにゲノム生物学を利用していくことができるのでしょうか。また、シンポジウム3では新しい企画として一般ポスター演題の中から3題ほど選択させていただき、本会場でご発表をお願いしました。若手病理学者の声も届けられればと思います。

さらに、平成29年朝日賞受賞者である筑波大学睡眠医学研究機構教授の柳沢正史先生にお話しいただく他、海外からの演者もお呼びする予定です。

落ち着いた雰囲気の研究学園都市、つくばの地で実りの多い秋期特別集会ができますよう心より多くの会員の皆様のご参加をお願い申し上げます。

第65回日本病理学会秋期特別総会 会長
筑波大学医学医療系診断病理学 教授
野口 雅之