ご挨拶

江面正幸
独立行政法人国立病院機構仙台医療センター 院長

2024年11月16日、高橋明(以下明)先生が急逝されました。仙台を離れてから趣味にされていた、ログハウスの屋根からの滑落死ということでした。このたび、明先生の追悼を主目的に、7月に復活蔵王セミナーという形で、明先生の追悼集会を開催したいと考えております。最初に蔵王セミナーについてご説明いたします。

1993年11月仙台市において、第9回日本脳神経血管内手術研究会が開催されました。この会の会長は東北大学脳神経外科教授の吉本高志先生でしたが、当時広南病院に勤務されていた明先生が事務局長を務めておりました(但し当時そのような正式役職はなかったようです)。それに先立つ1993年8月、明先生の声かけにより第1回血管内脳外科Brush upセミナーin ZAOが開催されました。なぜ11月に全国学会を主催するタイミングで蔵王セミナーを始める気になったのか、今となってはわかりません。全国学会では扱えないようなことをやりたかったのかな、とは思います。第1回の開催案内には「・・・広南病院に見学、研修に来られた先生方とともに・・・直面した困難、問題点、合併症、疑問点などをもちより、とことん議論し、brush upをはかろう・・・。格好の良い話は一切抜きにして・・・」とあります。この会は第2回から血管内脳外科蔵王セミナーと改称され、最初の6回までは蔵王で3回、秋保で3回行い、第7回から仙台市郊外で3回行ったあと第10回は記念開催としてグアムで行いました。

この間2000年11月に、明先生を会長として第16回日本脳神経血管内治療学会が仙台市で開催されました。実は同じ2000年の3月に、明先生の声かけで第1回東北脳神経血管内治療研究会(のちにJSNET東北地方会に移行)が開催されております。蔵王セミナーは初期には東北地方会のような役割もしていたのですが、第16回の前に蔵王セミナーとは別に東北地方会を立ち上げたのは、明先生にとってはむしろ必然だったのかもしれないと考えております。

蔵王セミナーは、第11回からは開催場所を仙台市内とし、脳血管内治療仙台セミナーと改称しています。蔵王セミナーの途中から仙台セミナーの終わりまでは私が主催者となり、2013年の第21回まで続き、BSNETと合併するかたちで終了しました。この途中の2012年に私が会長として、第28回日本脳神経血管内治療学会が仙台市において開催されております。つまり第9回とともに誕生した蔵王セミナーは、第28回の翌年に終了した、ということになります。

明先生は震災を契機に音楽の重要性を感じ、音楽大学に入学してチェロに傾倒していきました。ですので、この10年くらいは脳血管内治療とはかなり距離をおいておりました。私が主催した第28回JSNETにもいらっしゃっておりません。しかしそのことと、明先生が脳血管内治療に残した功績はまた別問題だろうと思います。むしろ近年は脳血管内治療から離れてしまった方だからこそ、その死去に当たっては共に脳血管内治療を育みけん引してきた方たちと、追悼の集まりを開催したいと思いました。そしてその開催形式としては、明先生が立ち上げ、後進の指導の場として注力していた蔵王セミナーとするのが良いのではないかと考えました。鋭い方はお気づきかもしれませんが、今回のタイトルの脳血管内治療蔵王セミナーというのは本当は一度も行われておりません。従いまして、「脳血管内治療蔵王セミナー」というのは、おそらくこれが最初で最後になる予定です。蔵王セミナーはグアム開催を除き全て8月に開催されておりました。今回は7月になりましたが、どのみち「夏の暑い時期」というのは同じです。明先生を偲ぶ、一度きりの復活開催に、多くの方々のご参加を心からお待ちしております。