ご挨拶

第38回日本てんかん外科学会
会長 中里 信和
(東北大学大学院医学系研究科てんかん学分野 教授)
第38回日本てんかん外科学会の開催にあたり,一言,ご挨拶を申し上げます.
てんかんをもつ方が多くの誤解と偏見に悩まされていることは周知の事実です.てんかんの外科治療に対してさえもかつては大きな誤解があり,それを避けるべく本学会はペンフィールド記念懇話会という名称を使わざるをえませんでした.現在,てんかんの外科治療は急速に進歩発展し,てんかん外科医になりたいという理由から脳神経外科医を目指す若者も出てきていることは喜ばしい限りです.これも多くの諸先輩方の努力の賜物と存じます.
一方で,てんかん外科に対する誤解と偏見はまだ歴然と存在しています.本来なら手術で発作が抑制され,普通の人生を取り戻せるはずの人たちが,「まだ試していない薬があるから」,「発作が軽いから」,「発作が少ないから」,「脳波で異常がないから」,「MRIで異常がないから」,「多発病変だから」等々の理由で,専門的診療を受けられずにいることは悲しい事実です.紹介元医から「まさか手術適応があるとは思わなかった」といわれたてんかん外科医は少なくないと思います.
今回の学会テーマには,ペンフィールド自叙伝のタイトル「NO MAN ALONE」を使わせていただきました.その理由は,てんかん外科のさらなる発展のためには,私たちがより広くアウトリーチ活動を展開すべきと考えたからです.本学会の参加者が,自身の診断技術と手術技量の向上に加えて,てんかん診療システム全体にも目を配り,てんかん診療に携わるすべての医師と,医師以外の医療職,さらには患者・家族・社会に対するアドボカシーを重視し,てんかん外科に対する誤解と偏見を取り除くよう願ってやみません.
平成26年7月