学術会長挨拶

令和2年10月吉日

学術会長 佐谷 秀行

第80回日本癌学会学術総会

学術会長 佐谷 秀行

慶應義塾大学医学部 先端医科学研究所

遺伝子制御研究部門 教授

令和3年(2021年)9月30日(木)~10月2日(土)の3日間、パシフィコ横浜において、第80回日本癌学会学術総会を開催させていただくこととなりました。第1回日本癌学会学術総会が1941年に大阪で開催されてから、途中第二次世界大戦でやむなく休会があったものの、2021年に第80回を数えることになります。私達はこの記念すべき総会を「80年を超え、がん撲滅の願いを未来へ」というテーマで開催することにいたしました。新しい知識や技術に基づいてがんの診断や治療は今後飛躍的に発展することが期待されますが、それらは全て先人の努力と成果の上に積み上げられたものです。第80回総会ではこのような先人によって構築された知識の集積を感謝の気持ちをもって顧み、そして彼らにとって困難であった部分を技術革新によって克服し、新たながん撲滅のための戦略を議論したいと考えております。

がんの基礎研究を通してがんを征圧することが日本癌学会の最も重要なミッションであることは間違いありません。しかし、基礎研究で得られた創薬シーズを臨床現場で応用する過程には「死の谷」と呼ばれる大きなギャップがあり、これまで多くのがん研究者たちはその崖の前で呆然とせざるを得ませんでした。一方で、様々な分野の科学は飛躍的に発展を遂げており、それら異分野の研究者が協働することによって、全く新しい学術領域が拓け、それががんの診断や治療に確実にインパクトを与えるようになってきたことは事実です。理系のみならず文系を含めた多彩な分野の専門家の参入によって、時空間的にもこのギャップが縮まり、基礎と臨床が一体化する構図が生まれつつあります。革新的な診断・治療法の開発には、このような分野や領域、さらには職種を超えた協働が必要であり、小さな発見が一気にがんの征圧に繋がることも夢ではありません。

第80回学術総会では、企業を含めた多彩な分野の人々を「がんを撲滅する」というミッションのもとに集め、研究室内の理想と仮説を現実化するための実験的なフォーラムにしたいと考えております。そのため、アカデミア、企業、社会が共に考え、共に協働できる有機的な連携の仕掛けを構築したいと考えております。またこの観点に加えて、次世代のがん研究を担う若手研究者や学生たちが魅力を感じ、主体的に参加できる工夫を凝らしたいと思っております。また、これまでの学術総会が努力して積み上げてこられた国際化を引き継ぎ、新しい形のグローバリゼーションを目指した総会にしたいと考えております。

開催時期において新型コロナウイルス感染がどのような状況になっているかはまだ読めませんが、可能ならば皆さまを横浜にお迎えし活発なご発表とご議論をいただきたいと願ってあります。ご参加をお待ち致しております。

謹 白