日本環境変異原学会(The Japanese Environmental Mutagen Society、略称JEMS)は、
昭和47(1972)年に結成されて以来40余年にわたって、人間・生物・地球環境における変異原、特に公衆の健康に重大な関係を有する変異原とこれに関連する基礎研究の推進、並びに関連情報・技術の伝達を目的として活動をしてきています。JEMSの事業として、年1回大会を開催し、総会、並びに学術上の研究成果の発表及び知識・情報の交換を行って参りました。この度、第44回大会は、「ゲノム変異の生成と抑制:分子メカニズムの理解からレギュラトリーサイエンスへ」をテーマとし、平成27年11月27日(金)~28日(土)の2日間、福岡市にある九州大学の馬出(病院地区)キャンパス(コラボ・ステーション I・II)において開催する運びとなりました。

医薬品を含む多様な化学物質は、私たちの日常生活に欠かせないものですが、これらには、ゲノムを構成する遺伝子に傷をつけ、突然変異や発がんを引き起こす(遺伝毒性)負の側面があることは否めない事実です。今日では、微生物や培養細胞、そして実験動物(マウス、ラット等)を用いる各種の変異原性試験法が定式化され、行政的な枠組みの中に組み込まれ、ゲノムに対して有害な作用を示し、発がん性を示す恐れのある物質は、市場に出回る前に排除される仕組みができています。日本環境変異原学会の40余年の歩みは、ヒトを化学物質の遺伝毒性から防護するという意味で、重要な役割を果たしてきたと言えるでしょう。

一方、様々な化学物質等が生殖細胞のゲノムに損傷を与え、次世代のゲノムに変異を誘発する「経世代的な遺伝毒性」については、まだこれからの課題として残されています。また、内因性変異原としての酸化ストレスがヒトの健康に及ぼす影響や、ゲノム変異と発がんの関係を実験動物の同一個体で調べる手法等の開発は、基礎研究のみならずレギュラトリーサイエンスの分野で、今後益々発展させるべき課題と考えられています。

近年の科学技術の急速な進歩により、ゲノム変異に起因する遺伝毒性やがんの誘発メカニズムを分子レベルで理解することが可能になってきました。本大会では、ゲノム変異の生成と抑制に関する分子メカニズムの新知見を会員の皆さんと共有し、研究成果の展開が今後の様々な化学物質の遺伝毒性や発がんのリスク評価へと繋がるような議論の場を提供したいと考えています。産官学いずれの研究者にも興味をもっていただける内容を企画していますので、皆様のご参加を心よりお待ち申し上げます。

平成27年1月吉日

日本環境変異原学会第44回大会
大会会長 續 輝久
(九州大学 大学院医学研究院 基礎放射線医学分野 教授)

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