第13回膵癌術前治療研究会(PREP2018 FUKUOKA)

テーマ:経験からevidenceへ

ご挨拶

  • 第13回膵癌術前治療研究会
  • 当番世話人 中村 雅史
  • 九州大学大学院医学研究院 臨床・腫瘍外科(第一外科)教授
当番世話人:中村 雅史 写真

謹啓 会員の先生方におかれましては益々ご隆盛のこととお慶び申し上げます。

この度、2018年10月6日(土)、福岡市の九州大学医学部百年講堂におきまして、第13回膵癌術前治療研究会を当番世話人として開催させていただくこととなり、大変喜ばしく、また光栄に存じます。今回のテーマは、「経験からevidenceへ」とさせていただきました。

膵癌は現代に残された難治がんの代表であり、過去においてはもっぱら外科的な拡大郭清が追及されてきました。しかしながら複数のRCTにより拡大郭清が予後を延長しないことが証明され、さらに、2014年にはD2郭清でさえもほぼ郭清なしのPDと予後に差が無いとするRCTが発表され、外科的治療のみで膵癌を克服することを目指す時代は完全に終焉を迎えました。時代は逆行しますが、2004年にESPAC-1が史上初めて外科治療+補助化学療法により膵癌の予後を改善できることを証明し、以後、術後補助療法を中心とした膵癌の複合的治療法は、ゆっくりとではありますが着実に進歩をしてまいりました。そして、今後の膵癌治療開発の方向性としては、外科治療を組み込んだ集学的治療であるべきことが明らかになりました。これらの流れはBRという切除可能性分類のカテゴリーの確立や、短期的な腫瘍縮小能力が高いGEM+アブラキサン療法、FOLFIRINOX療法の出現により加速されました。さらにBRと新規治療薬の組み合わせは効果が高く、それまで治癒切除が困難であった多数の膵癌症例においてR0切除が可能となりました。しかしながら、一方で切除不能膵癌に対する化学療法も進歩を遂げており、R0切除を行ったBR・局所進行膵癌の予後が最新の化学療法による予後を真に凌駕するのかという疑問も払拭できておりません。

このような歴史的経緯も振り返りつつ、今回の研究会のテーマを「経験からEvidenceへ」とさせていただきました。癌治療の絶対的プライマリーエンドポイントである予後改善という点において手術を前提とした術前治療が如何に貢献しているのかいないのか、R, BR, LA-UR、そしてオリゴメタについても客観的かつ功利主義的な議論を望みます。また、今後は集学的治療の進歩とともにより進行した膵癌が外科治療の対象となってくることが予想されますが、これは膵機能が廃絶した栄養不良な膵癌患者の頻度が外科治療分野において増加することを意味しています。加えて、高齢化社会の本邦においてはfrailtyの状況下にある患者の治療も喫緊の課題であり、これらの患者にたいする栄養治療は術前治療・外科治療の完遂に重要な要素となって参ります。今回の研究会においては栄養療法も術前治療におけるトピックの一つとして取り上げています。また、術前治療を行った膵癌症例は術後補助療法の完遂率が低い傾向になるのではということも懸念されつつあります。低侵襲手術である腹腔鏡下手術、ロボット手術がこれらの問題の克服に貢献するかということも今後の課題として取り上げたいと考えております。

多くの皆様のご支援を得て実りある研究会になることを祈念しております。奮ってご参加くださいますようお願い申しあげます。

謹白

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