第78回国立病院総合医学会 The 78th Annual Meeting of Japanese Society of National Medical Services

会長挨拶

会長 松村 泰志
(国立病院機構 大阪医療センター 院長)

副会長 奥村 明之進
(国立病院機構 大阪刀根山医療センター 院長)

副会長 尹 亨彦
(国立病院機構 近畿中央呼吸器センター 院長)

 第78回国立病院総合医学会は、近畿グループが担当となり、大阪医療センター、大阪刀根山医療センター、近畿中央呼吸器センターが中心となって準備を進めています。
 学会のテーマは「進化していく病院であるために~心理的安全性の高い組織づくり~」としました。日本では高齢者が多くなり、また、医療が高度化・複雑化していく中で安全性が求められ、人手と技量を要するようになり、現場の負担が増しています。一方、男女とも働く時代にあって、家庭を守りながら働ける職場環境にしていくことは必須事項です。にもかかわらず、診療報酬点数は原価ぎりぎりに設定されており、病院経営は厳しい状況に置かれています。そうした中、Covid-19のパンデミックが起こり、ロシアのウクライナ侵攻に伴い、水道光熱費・物価の上昇に見舞われています。しかし、病に苦しむ患者さんは減ることはありません。私達病院は、患者さんが安心して医療が受けられるよう、正しい医療を提供し続けていかねばなりません。
 生命は過酷な環境下に置かれた時、進化して環境に適応して生き延びてきました。私達病院も、厳しい状況下にあっても、体制や運用を変えながら、この厳しい状況に適応していかなければなりません。ハーバード大学のエドモンドソン教授は、変化が激しく先が読めない時代において継続して発展できる組織の条件を調べ、組織のメンバーが自分の意見を安心して上司、同僚に率直に発言できる雰囲気があることを見出し、心理的安全性(psychological safety)と表現し、1999年論文で発表しました。グーグル社のプロジェクト・アリストテレスの調査研究で、効果的な生産性の高い組織の条件を調べたところ、心理的安全性が重要な要素との結論に至ったことが2012年に発表されたことにより、この言葉が広く知られるようになりました。
 変化が激しく先が読めない時代とは、まさに今の私達が置かれている状況です。これに適応していくためには、現場を担う職員が様々な観点で率直に意見を出し合い、正しく状況を分析し、何を変えていくべきかを話し合い、皆が協力して実行していくような、柔軟で力強い組織になっていく必要があります。こうした思いを、このテーマに込めています。
 国立病院総合医学会は、多職種の職員が一堂に会する学会です。病院間で共通する課題は多く、多職種の視点から様々な課題に対し解決に向けた提案、議論がされます。是非、他病院の優れた考え方、工夫された運用を持ち帰り、それぞれの病院を進化させていって頂きたいと思います。
 大阪の地で、多くの方々にお越し頂けるよう、準備してお待ちしております。