会長挨拶

会長 荒井 裕国

第71回日本胸部外科学会定期学術集会 
会長 荒井 裕国 
(東京医科歯科大学大学院・医歯学総合研究科 心臓血管外科学 教授)

この度、第71回日本胸部外科学会定期学術集会を開催することになりました。私はじめ、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科・心臓血管外科学分野にとりましては、大変光栄なことであり厚く御礼申し上げます。本学としては38年前(昭和55年)に故浅野献一先生のもと第33回集会が開催されて以来、関東としても9年前(平成21年)第62回の四津良平先生以来となります。

会期は2018年10月3日から6日の4日間、10月3日はPGC、評議員会といたしました。会場は、グランドプリンスホテル新高輪・国際館パミールとなります。今回は全てのセッションが、ひとつの大きな建物内で行われますので、会場間の移動を要しません。最寄りの品川駅は、東京の新しい玄関口として東海道新幹線の停車駅でもあり、羽田空港からのアクセスも良好です。

テーマは、”Scientific Creativity”、すなわち“科学に基づく創造性”としました。
外科医は技量が問われますから、ある手技を習得するために練習を繰り返すことは必須であり、手技が人よりも上達すれば名医と呼ばれるようになるかもしれません。しかし、確立された学問や技能を習得し反復するばかりでは、現状の問題は解決されず限界が生じます。「単調に練習を繰り返すのではなく、実験を重ね、エビデンスを検証する」のが科学であり、「考えを巡らして、常に特別な新しい何かをつけ足していく」のが創造性。一見、相反するように思われる科学的である事と創造的である事を行きつ戻りつしながら試行錯誤する姿勢・視点・方法が、Scientific Creativityであり、外科学の近未来を拓く原動力ではないかと考え、本学術集会のテーマといたしました。

今回のポスターの絵柄は、私が原図を描き、それをイラストレーターに仕上げてもらいました。心臓と肺・食道をデフォルメした怪鳥(?)のようなものが東京湾上空に浮かんでいます。私の頭の中での創造物Creatureで、三領域の統括学会としての胸部外科学会の飛躍をイメージしました。

プログラムは、学会テーマのコンセプトに沿って、Creativeな企画になるよう意識いたしました。まず、新しい試みとして、Techno-Academy とSurgical Colosseumを企画しました。Techno-Academyでは、各領域の主要トピックを海外招請演者と国内のエキスパートにより外科手技を軸として講演して頂き、討論を重視してコンセプトを掘り下げていくセッションを企画しています。Surgical Colosseum は、治療に難渋したBailout case やNightmare caseを症例毎にカンファレンス形式で徹底討論する企画です。演者には3面スクリーンの円形会場の中央に登壇してもらいます。聴講者が四方八方から積極的に討論に加わる相互参加型のセッションを期待します。
今回は、プレナリーセッションは行わずに、領域毎での優秀演題によるFeatured Abstract Sessionを行います。
学会の国際化に向けて、4会場で日英・英日の同時通訳を設置いたします。海外からの参加を促すため、事前登録(Pre-registration)システムを導入します。会員・非会員にかかわらず、事前登録と当日登録で参加費が異なりますので、ご注意ください。できる限り、事前登録をお勧めいたします。また、海外、特に東南アジアからの参加者を対象としたThe 2nd JATS Asian travelling fellowshipを国際委員会の主導で企画していただきました。
心臓のセッションは、本会3日間通して行われますが、呼吸器のセッションは本会初日と2日目に、食道のセッションは本会2日目と3日目の各々2日間に集約いたしました。総会の日程も、本会2日目(10月5日)の早朝(本会開始前)となりますので、ご注意ください。

現在決定している海外招請者は、心臓領域では、David H. Adams先生、Glen van Arsdell先生、Duke Edward Cameron先生、Taweesak Chotivatanapong先生、Gilles Dreyfus先生、Khalil Fattouch先生、Bob B. Kiaii先生、Ki-Bong Kim先生、Ivan Netuka先生、Hans-Joachim Schäfers先生、David Paul Taggart先生、Joseph Woo先生、呼吸器領域では、Raphael Bueno先生、Elie Fadel先生、Gunda Leschber先生、Alper Toker先生、Cameron Dorrans Wright先生です。

会員の皆様の多数のご参加を楽しみにしております。

呼吸器外科 大久保 憲一

呼吸器領域 大久保 憲一 
東京医科歯科大学大学院・医歯学総合研究科
呼吸器外科学 教授

第71回日本胸部外科学会定期学術集会におきまして荒井裕国会長のもと呼吸器外科領域プログラムを担当させていただきます。伝統ある本学会の領域プログラムのお手伝いすることを大変光栄に存じます。

呼吸器では領域プログラム委員会で検討を重ねて上級演題テーマを設定しました。Techno-Academyとして ①低侵襲・ロボット支援手術と ②気道再建、の外科手技トピックスを企画し、シンポジウム・パネルディスカッションとして局所進行肺癌の術前化療放射線療法・拡大手術と悪性胸膜中皮腫の集学的治療を採りあげました。それぞれのテーマごとに海外の第一人者による講演に続いて演題発表・討論をお願いします。
海外招請演者は Cameron Wright先生(アメリカ)、Raphael Bueno先生(アメリカ)、Elie Fadel 先生(フランス)、Gunda Leschber先生(ドイツ)、Alper Toker先生(トルコ)です。

プログラム日程を組み替えて、呼吸器領域の採用演題数を同じくして演題発表を2日間に集約し、この間常に複数列の呼吸器セッションが催されます。呼吸器にとって密度の濃い充実した学術集会となることを祈念いたします。久しぶりに関東・東京で開催される学術集会に多数のご参加をお待ちします。

食道外科 河野 辰幸

食道領域 河野 辰幸 

東京医科歯科大学 名誉教授

荒井裕国会長のもと、食道領域委員の皆様にご協力をいただきながら企画を担当しています。

第71回のテーマは”Scientific Creativity”ですが、食道癌に対して既存の概念を大きく変える術式がわが国で開始される一方、以前からの難題に対しても様々な新しいアプローチにより問題の解決が図られています。急速に広まった胸腔鏡下食道癌手術へのロボット支援や、短期間で健康保険への収載が決まった経縦隔的な食道癌根治術などがシンポジウム「アプローチ法からみた食道癌手術の現状と展望」で取り上げられ、古くて新しい課題である「胸部食道癌手術における理想の食道再建法」がパネルディスカッションで討議されます。

さらに、本会を特徴づける新たな試みであるSurgical Colosseumには「局所進行食道癌に対する集学的治療」「他臓器重複癌を有する食道癌に対する集学的治療」の2テーマが、そしてTechno-Academyでは「食道癌手術における左反回神経周囲リンパ節郭清手技」が論じられます。そしてそのような課題へ積極的に取り組んでいる海外の医師にも参加していただく予定です。

品川で皆様のご参加をお待ちします。