第54回日本創傷治癒学会
会長 木山 輝郎
(武蔵野徳洲会病院 特命副院長)
2024年12月5日、6日に東京都千代田区の一橋大学一橋講堂において第54回日本創傷治癒学会を開催させていただくことになりました。1971年に第1回研究会が開催され、恩師である日本医科大学第一外科 恩田昌彦 教授、病理学教室 浅野伍朗 教授、そして直接ご指導いただいた本学会名誉理事長 徳永 昭 教授が開催した本学術集会をお世話できますことを大変光栄に思っています。
創傷治癒との出会いは大学院での胃がんにおける上皮増殖因子EGFでした。その後、米国Johns Hopkins大学外科に留学し、創傷治癒と栄養経路の研究を行いました。消化管を用いるほうが静脈栄養よりも創傷治癒が促進することを示すことができ、本学会の奨励賞を頂きました。しかし、そのメカニズムは現在も明らかではありません。先日、腸内細菌の産生するH2ガスが細胞内の酸化還元状態を変化させる可能性を示すことができ、消化管利用と創傷治癒促進との糸口を見つけられたと考えています。そこで、メインテーマを「New innovations in wound healing:創傷治癒の新たなイノベーションを求めて」としました。
近年、外科手術では開腹手術から低侵襲である腹腔鏡、ロボット手術へ移行し、手縫い吻合から器械吻合へ、器械のステイプルも2列から3列へ、組織補強のためのシートなど技術革新が起こり、臨床現場で導入されています。慢性創傷に関しても持続吸引陰圧療法、創傷被覆材、除圧ベッド、栄養補助食品など治癒を改善し、瘢痕形成を減らすための革新的なアプローチが生まれています。基礎研究から臨床応用、そして社会実装へと本学会のカバーする範囲が広がってきました。創傷治癒に関する全ての研究者が集うことができるように準備を進めたいと考えています。更に特別講演をお二人の先生にお願いしました。京都大学 プロボスト 理事・副学長/大学院医学研究科細胞機能制御学 岩井一宏 教授から「細胞の鉄動態調節機構とその破綻による細胞死誘導」を、また徳島大学大学院医歯薬学研究部 生体栄養学分野/宇宙栄養学研究センター 二川 健 教授から「無重力や寝たきりによる筋萎縮の栄養学的予防・治療法の開発」をお話しいただきます。細胞内と無重力という新たな視点から創傷治癒を考える機会を頂ける有意義な機会になると楽しみにしています。
学術集会会場は東京駅にほど近いお堀に面した一橋大学一橋講堂としました。会期の12月初めは東京でも紅葉が美しい時期で、丸の内や銀座も近く街歩きや美味しいものを楽しむことができます。学会での熱気あふれる議論につかれた時はぜひ素敵な街を散策していただければと思います。
皆様のご参加をお待ち申し上げます。
© 2024 The 54th Annual Meeting Japanese Sosiety for Wound Healing