会長挨拶

第43回日本救急医学会総会・学術集会
会長 堤 晴彦

時下、皆様におかれましては、益々御清祥のことと御慶び申し上げます。
また日頃より、格別のご理解とご協力を賜り、篤く御礼申し上げます。

さてこの度、私、堤晴彦は第43回日本救急医学会総会・学術集会の会長に指名されその運営にあたらせて頂くことになりました。大変光栄に存じますと共に重い責任を感じながら準備を始めております。学会は2015年10月21日(水)、22日(木)、23日(金)に、東京国際フォーラム(東京都千代田区丸の内三丁目五番一号)で開催されます。

1973年に日本救急医学会が創設されて既に40年余りが経過しました。この間、救急医療に従事する医師たちは、重症の救急疾患や外傷、あるいは一般の診療科で対応出来ない疾患や急性中毒など、数多くの救急患者の診療に寝食を忘れて従事し、同時に、病院前を含む救急医療体制の充実を図り、社会に貢献してきております。さらには、その間に、救急医学に関する学術的な研究の成果もあげ、各種ガイドラインなどの策定にも力を注いできております。これら先人達の功績が、日本の医療体制全体に与えてきた影響は極めて大きいと考えております。

しかしながら一方で、現在、日本の社会状況は救急医学会創設時には誰も想像できないほど激変しつつあります。その結果、今私たち救急医療に従事する医師はさまざまな問題点や課題を抱えています。救急医療体制については、救急患者の収容困難事例の多発問題(いわゆる“たらい回し”)、高齢者救急や受け入れ先の少ない小児救急、精神科救急の問題など、多くの課題があげられます。終末期医療や脳死問題など倫理的な課題も、今後多くの検討が必要な分野となっております。また、本年秋に始まる「医療事故調査制度」も大きな課題であります。研究分野においても、研究不正問題、利益相反(COI)の問題などが指摘され、医療界全体に改善が求められているところです。さらには、本年度から研修を開始する医師が対象となる日本専門医機構の専門医制度は、救急医学会としてもっとも重要な課題の1つとなるものであります。このように、救急医療に関する問題や課題をあげれば枚挙にいとまがないと言っても過言ではない状況にあります。

救急医療の原点は助けられる生命を如何に救うかであり、この基本方針は変わらないし変えてはいけないことであります。一方で、私達救急医療に従事する医師がこのまま何も考えずに現状を維持、あるいは受け身の姿勢でいこうとするならば、救急医療の将来に大きな不安を覚えます。

上記の理由から、今学会のメインテーマを「救急医療のイノベーション」としました。本来は、「救急医学のイノベーション」と書くべきところでしょうが、救急医学と書くことには正直若干の抵抗があり、英語標記として” Innovation of acute medicine“と入れさせて頂いた次第です。

さらに、副題は “Vision! Passion! Action! to Mission!”としました。“Vision! Passion! Action!”という言葉は、私どもの高度救命救急センターのキャッチ・フレーズです。現状を変えて行く最初の力は、1人一人の“Vision! Passion! Action!”でありますが、今後は、それら個々人の力が一体となって、私たち救急医学会の会員全体のMissionになって欲しいという期待と希望を込めております。

そして、ポスターのデザインは、アンモナイトとオウム貝を組み合わせたデザインになっております。その意味は、アンモナイトは絶滅したがオウムガイが生き延びた、、、という進化の過程を現したデザインになっております。その背景にある文字は、“It is not the strongest of the species that survives,nor the most intelligent that survives. It is the one that is the most adaptable to change. ”(生き残るのはもっとも強いものでも、もっとも賢いものでもなく、もっともよく変化に対処出来るものである。)というダーウインの言葉です(もちろん、ダーウイン自身はそんなことは言っていないという説が有力ですが、、、)。私たちが、今何か行動を起こし、救急医療を取り巻く社会環境の変化に対応できれば、未来は違ったものとなるでしょう。そして、そうでなければいけないと考えております。

学術集会におきまして、メインテーマに相応しい話題提供やセッションを用意したいと考えております。会員の皆様から多くのご提案やアイデアを頂き、創意工夫を凝らし、内容が豊富で充実した学会となることを目指したいと考えております。多くの方々にご参加頂き、活発に意見交換を行い救急医療の未来をさらに輝かしいものにしようではありませんか。

会員の皆様のご協力とご支援をお願い申し上げます。

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