第86回日本循環器学会学術集会

プログラム

会長講演

座長: 松﨑 益德 山口大学名誉教授
演者: 伊藤 浩 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科循環器内科学

美甘レクチャー(日本心臓財団美甘基金)

座長: 永井 良三 自治医科大学
演者: Valentin Fuster Physician-in-Chief, Mount Sinai Hospital (New York, USA)
Director, Mount Sinai Heart (New York, USA)
General Director, National Center for Cardiovascular Research (Madrid, Spain)

真下記念講演

座長: 堀 正二 大阪国際がんセンター名誉総長
演者: 坂口 志文 大阪大学フロンティア研究センター実験免疫学分野教授

特別講演

座長: 伊藤 浩 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科循環器内科学
演者: 磯田 道史 国際日本文化研究センター

プレナリーセッション

英語

動脈硬化に対する新しいアプローチ(炎症/遺伝子背景)
Novel approaches targeting immune system in atherosclerosis

座長: 平田 健一 神戸大学大学院医学研究科 循環器内科学分野
座長のことば

超高齢社会を迎えた日本では、心筋梗塞や脳梗塞など動脈硬化をベースに発症する疾患に罹患する患者は、増え続けており、死亡原因としてだけではなく健康寿命を損なう要介護の原因ともなっている。心血管イベントの予防には、LDLコレステロール、糖尿病、高血圧に代表されるような古典的危険因子のコントロールだけでは十分とは言えず、未知の動脈硬化症発症メカニズム探索、予防法の開発が望まれている。
次世代シークエンス技術の発達に伴い、大規模ゲノムワイド関連解析(GWAS)による疾患感受性遺伝子変異の同定はもちろん、1細胞レベルで遺伝子の発現状況をトランスクリプトームレベルで明らかにするシングルセルRNA-Seq、オープンクロマチン領域の情報からエピジェネティクスを解明するシングルセルATAC-Seqなどが開発され、動脈硬化性疾患の病態においても1細胞レベルで迫ることが可能となった。これらの技術を駆使し、この数年で、動脈硬化を構成する免疫細胞の詳細な特徴、骨髄のClonal hematopoiesisの動脈硬化形成への関与、動脈硬化の新しい抗原など、免疫系が動脈硬化へ深く関与し、治療ターゲットとなることが次々と報告されてきている。本シンポジウムでは、これらの新しいアプローチを使った最先端の動脈硬化研究について論じたい。

英語

MINOCAを整理する
Overview & Future Perspective of MINOCA

座長: 辻田 賢一 熊本大学大学院生命科学研究部 循環器内科学
  中澤 学 近畿大学病院
座長のことば

冠動脈の閉塞を伴わない心筋梗塞(MINOCA:myocardial infarction [MI] with non-obstructive coronary arteries)の疾患概念が提唱されて久しい。MINOCAの有病率はグローバルには心筋梗塞患者全体の約6%で予後良好との報告があるが、本邦の循環器疾患診療実態調査(JROAD)のDPCデータベースからは、MINOCAの頻度は約10%と高率で、閉塞性冠動脈疾患を有する心筋梗塞(MI-CAD:MI with obstructive coronary artery disease)に比べてMINOCAでは冠危険因子の関連が小さく、心臓以外の併存疾患の関連が大きいことが明らかとなった。院内予後についても、MINOCAがMI-CADと比べて院内死亡の関連因子であることが明らかとなり、MINOCAの病因による院内死亡リスクの違いが示唆された。これらのデータから、MINOCAは確定診断ではなく、さらなる評価が必要な暫定診断(working diagnosis)と考えて対応すべきと考えられている。
本セッションでは、これまでのMINOCAのエビデンスを整理し、本邦におけるMINOCA診療の現状と今後の展望をディスカッションしたい。

日本語

大動脈緊急症に対する救急医療体制の現状と課題
Medical system and interhospital communication for acute aortic emergency: Current status and problems to be solved

座長: 東 信良 旭川医科大学外科学講座血管外科学分野
  前村 浩二 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科循環器内科学
座長のことば

手術手技・周術期管理の向上や血管内治療の普及も相まって、急性大動脈解離や大動脈瘤破裂などの大動脈緊急症の救命率は徐々に改善されてきているが、さらなる救命率向上と質の高い救急医療提供のためには、発症から治療病院到着までの医療体制改革が望まれている。
大動脈緊急症に対する救急医療体制整備やネットワーク構築は循環器病対策推進基本計画において重点的に言及されており、当学会が発表した脳卒中と循環器病克服第二次5カ年計画においては大動脈拠点病院構想が提案され、広域ネットワーク体制整備の重要性が述べられている。
特に、広域医療過疎地域においては、地方拠点病院と大動脈拠点病院の情報連携、循環器内科医と心臓血管外科専門医の情報連携の深化、そして、できるだけ短いdoor to intervention timeの達成が重要となると考えられる。
本セッションにおいて、それぞれの地域における問題点あるいは改善に向けた取り組みなどをご報告いただき、今後の都道府県循環器病対策推進計画にも資する議論・提案を期待したい。

英語

COVID-19と心血管疾患
COVID-19 and Cardiovascular Disease

座長: 野出 孝一 佐賀大学医学部循環器内科
座長のことば

COVID-19 は全世界で猛威を振るい、本邦においても2021年2月現在、累積SARS-CoV-2陽性者数は約42万人、累積死亡者数は約7500人に上る。COVID-19では、加齢に伴う重症化率・死亡率の上昇が報告されており、本邦におけるCOVID-19死亡の大半も60代以上の高齢者が占める。COVID-19 において循環器疾患の併存は、COVID-19による死亡率の上昇と関連することが報告されている。特に高齢者においては循環器疾患の合併も少なく、重症化リスクの重複による予後の増悪が懸念される。一方、循環器疾患とCOVID-19 の関連については、循環器疾患の併存が予後不良因子であるのみではなく、逆にSARS-CoV-2感染が直接・間接的に心血管系を障害し、新型コロナウイルス関連循環器疾患を引き起こすことが報告されている。本セッションでは新型コロナウイルス関連循環器疾患、およびCOVID-19における重症化因子としての循環器疾患の存在、そしてCOVID-19流行・ロックダウンによる循環器疾患への影響について議論していただく。

英語

Autonomic nerves in arrhythmia / heart failure; pathophysiology and treatment

座長: 森田 宏 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科先端循環器治療学
  Peng-Sheng Chen Department of Cardiology, Smidt Heart Institute, Cedars-Sinai Medical Center, USA
座長のことば

近年、不整脈や突然死のトリガーや心不全の病態増悪に自律神経系が重要であることが認識され、治療対象として考えられるようになってきた。不整脈領域においては、心房細動や心室頻拍・細動の発生や不整脈ストーム発生に交感・副交感神経の関与が重要である。このため不整脈起源・回路に直接作用する抗不整脈薬やカテーテルアブレーション治療以外に、自律神経系を修飾する治療が有用である。自律神経修飾としてβ遮断薬が用いられるが、1990年代より先天性QT延長症候群における左交感神経切除も心室性不整脈予防効果を示すこと知られている。さらに心房細動でのGPアブレーションによる迷走神経修飾、器質的心疾患を有する心室性不整脈に対する心臓交感神経切除も行われるようになっている。また腎臓交感神経アブレーションによる不整脈予防効果も報告されている。心不全では、交感神経活性亢進、副交感神経活性減弱が起こり、心筋障害を助長し,予後を悪化させる。自律神経修飾として、β遮断薬治療は低心機能での必須の基本的治療としての地位を確立している。副交感神経活性低下も予後不良因子であることから、脊椎刺激、耳介刺激、頸動脈体刺激など様々な副交感神経刺激装置が報告され、予後改善に結びつく可能性が示されている。自律神経の心疾患病態への関与や、分子遺伝学的機序、自律神経機能評価、自律神経修飾による心不全・不整脈治療など、自律神経は今後,大きな予後評価・治療ターゲットとなる分野であり、このトピックスを様々な視点から概説し、今後の展望を示したい。

日本語

健康寿命延伸のための心房細動に対する包括的治療戦略
Comprehensive Treatment Strategy for Atrial Fibrillation to Extend Healthy Life Expectancy

座長: 峰松 一夫 医療法人医誠会
  清水 渉 日本医科大学大学院医学系研究科 循環器内科学分野
座長のことば

心房細動(AF)は、最も頻度の高い不整脈の一つであり、年齢と共に頻度が増える。AF患者では、洞調律の健常人に比べて脳梗塞発症リスクが約5倍であるが(後期高齢者脳梗塞の最大の原因はAFである)、心不全や認知症発症リスクもそれぞれ約3倍、約2倍と高い。これらの心原性脳塞栓症、慢性心不全、認知症は、高齢者の介護の主要な原因であり、健康寿命延伸のためにもAFに対する包括的治療戦略を立てることは重要である。循環器領域では、近年AFに対する根治療法としてカテーテルアブレーションが広く普及しており、特に心不全例では予後改善や心不全入院の減少効果が報告され、また脳梗塞の予防効果も示唆されている。しかし持続性・慢性AF患者ではアブレーションのみでは有効性も十分ではなく、薬物治療に加えて、併存疾患や器質的心疾患も含めた包括的治療の重要性が示唆されている。一方、脳領域では、心原性脳塞栓症の血栓回収療法の登場により急性期治療は大きく変化し、また、リハビリから在宅医療へのシームレスな医療体制の構築が、昨年閣議決定された「脳卒中・循環器病対策基本法」の循環器病対策推進基本計画にも盛り込まれている。本プレナリーセッションでは、循環器と脳神経領域の専門家にご登壇いただき、健康寿命延伸のための心房細動に対する包括的治療戦略について議論したい。

英語

Destination Therapy導入における補助人工心臓の長期管理
What is an ideal long-term management of continuous-flow ventricular assist device in the era of destination therapy?

座長: 小野 稔 東京大学大学院医学系研究科心臓外科
座長のことば

植込み型補助人工心臓(cf-VAD)のdestination therapy(DT)使用が2021年5月から保険償還されことになった。補助人工心臓治療関連学会協議会DT部会では、DTのスムーズな導入に向けて基準策定作業を進めてきた。使用デバイスはHeartMate 3に限定されるが、まずDT治験を行った7施設を初回実施認定施設とすることになった。これまで移植への橋渡し(BTT)装着で課題となっていたケアギバー要件を緩和することを決めたが、逆に患者の理解能力を一定程度担保するために評価基準を新設した。年齢制限は設定していないが、他臓器の予備力を含む全身状態評価に加え、5年以上の余命が期待されることを条件とした。初回装着よりも侵襲度が高い体外設置型VADからのcf-VADへの植替え(BTB)は慎重に行うことを条件にDT実施が認められた。J-MACS報告では50歳以上のBTT装着患者の予後は40歳代までの患者群より予後が有意に不良であることが判明しているために、特にDT導入による恩恵が高いと思われる65歳以上の高齢患者においては慎重な患者選択と長期管理が求められる。DTが今後一般的治療として広く認知されるためには、安全性と有効性を市販後データで示していく必要がある。各施設のこれまでのBTT装着の中で培われた経験と、DT導入に向けた施設内における検討内容を踏まえて、DTが導入されるこれからのcf-VAD治療の安全かつ優れた長期管理の取り組みに関して発表して頂きたい。

英語

心血管画像診断におけるAIの活用
Utilization of AI in cardiovascular imaging

座長: 佐田 政隆 徳島大学大学院医歯薬学研究部 循環器内科学分野
座長のことば

人工知能(AI)とはコンピュータが人間の認知機能を模倣し,収集したデータに基づいて学習し,問題解決を行う技術を指す.循環器領域における応用分野では,診断や結果を予測したり最適な治療法を選択したりすることがAIの目的である.循環器画像検査は豊富なデータソースと電子カルテやモバイルヘルス機器からの臨床情報と組み合わせることで,新たな臨床的知見を得ることができる.また,AIは多数の入力データをうまく扱うことができるため,心血管イメージングを進化させる可能性がある.

本シンポジウムでは,心エコー,核医学イメージング,CT(コンピュータ断層撮影),CMR(心臓磁気共鳴)などの心臓血管イメージングにおけるAIの役割を説明し,自動化,病気の認識,予測などの現在のAIの活用について議論したい.

英語

パラメトリックマッピングを用いた最新CMRによる心筋疾患攻略法
Latest CMR diagnostic strategy for myocardial hypertrophy

座長: 佐久間 肇 三重大学大学院医学系研究科放射線医学
座長のことば

心臓MRI(CMR)による心筋疾患の診断では、シネMRIによる左室・右室の形態と機能評価と、遅延造影MRIによる線維化評価が主に用いられてきた。近年、造影前の心筋T1緩和時間(ネイティブT1)、造影前後の心筋と血液のT1緩和時間から算出される細胞外容積(ECV)、水分増加を反映する心筋T2緩和時間などを定量的に表示するパラメトリックマッピングが可能となり、心筋疾患の診断と予後評価におけるCMRの重要性がますます高まっている。特に、心アミロイドーシスや心Fabry病の診断に関しては、前者がT1値延長、後者がT1値短縮を示し、正常心筋と明瞭に区別できるため、これらの疾患が疑われる場合や原因がはっきりしない左室肥大患者では、パラメトリックマッピングは極めて有効である。一方、心筋症におけるT1値等の変化はこれら心筋疾患と比較すると少なく、T1値やT2値はパルス系列や撮影条件によって変動が生じるため、パラメトリックマッピングを診療に広く用いるためには精度管理も重要な課題となる。本セッションでは、パラメトリックマッピングは組織のどのような変化を反映しているのか、計測値の正確性と再現性、心肥大を呈する各種心疾患におけるパラメトリックマッピングの有用性について議論し、我が国におけるパラメトリックマッピングの利用拡大を目指す。

日本語

高齢者(80歳以上)の大動脈弁狭窄症治療の限界と適応
Desicion making an appropriate candidate of invasive treatment in elderly patients with severe aortic stenosis

座長: 塩瀬 明 九州大学大学院医学研究院循環器外科
  山本 真功 豊橋ハートセンター
座長のことば

未治療の重症大動脈弁狭窄症(AS)は予後不良の疾患であり、80歳を超える高齢者においても基本的には侵襲的治療の適応が議論される。経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)は、低侵襲性と良好な臨床成績から急速に普及しており、実臨床において80歳以上の高齢者AS患者に対して施行されることが多い。外科的大動脈弁置換術(SAVR)に関しても、AS以外の心疾患合併、解剖学的にTAVIが施行困難など様々な理由で、TAVIと同様80歳以上の高齢者AS患者に施行されている。技術の進歩と短期治療成績の向上により、SAVRやTAVIのような侵襲的治療の適応は日々拡大している。侵襲的治療の適応が加速度的に拡大する一方で、80歳以上の高齢患者は虚弱度(フレイル)が高く、心疾患以外の併存疾患が多く存在することが多い。そのような集団に対しては、ASを解除することによる生命予後改善効果が限定的となることが報告されている。治療の選択肢と可能性が広がる中、われわれ臨床医には、侵襲的治療の限界を知りその適応を適切に判断することが求められている。本セッションでは、これら今後の課題に対して、高齢者AS患者に対するSAVRやTAVIの現状把握とその治療効果に関する議論を深めることで、前向きな対策を検討したいと考える。

英語

心血管疾患としての2型糖尿病;病態と新たな治療戦略
T2DM as cardiovascular disaease:
Pathophysiology and new treatment strategy

座長: 伊藤 浩 岡山大学大学院医歯薬総合研究科循環器内科学
  E. Dale Abel University of Iowa, Carver College of Medicine, USA
座長のことば

2型糖尿病(T2DM)は心血管疾患のリスク因子であるが、今までは代謝疾患に分類され、代謝内科医による血糖管理を目的とした治療が行われていた。その流れを変えたのが新規糖尿病治療薬の安全性試験として行われたcardiovascular outcome trials (CVOTs)である。GLP-1RA, SGLT2阻害薬は心血管死、心筋梗塞、脳卒中のhard endpointを減少させたことから、血糖管理を越えた心血管イベント予防効果があることが明らかにされ、CVOTsの結果を元に欧米の糖尿病診療ガイドラインが書き換えられた。そこで強調されたのはハイリスクT2DM患者の生命予後の改善における治療薬選択の重要性である。さらに、SGLT2阻害薬はT2DM合併の有無に関わらずHFrEFの治療にも有効なことが明らかとなり、心不全治療薬に加えられた。CVOTsの結果はT2DMによる動脈硬化、心不全、心房細動の発症機序に新たな視点をもたらした。高血糖による血管内皮機能障害、AGE/RAGEの蓄積、脂質代謝異常、高血圧の合併だけではなく持続する微小炎症、ミトコンドリアのエネルギー代謝異常、交感神経活性亢進、RAA系亢進、高インスリン血症による細胞増殖、Na貯留など、T2DMが心血管疾患を発症する機序が明らかになりつつある。それは新たな治療ターゲットの発見にもつながるものである。本プレナリーセッションはT2DMと心血管疾患に共通する病態を明らかとし、T2DM患者の生命予後を改善するための治療戦略を代謝内科医と循環器専門医が共有することを目的とする。

英語

Unsolved issues and future perspective in ACHD: Beyond the Guidelines

座長: 赤木 禎治 岡山大学 循環器内科
  Michael Gatzoulis Royal Brompton Hospital London, UK
座長のことば

成人先天性心疾患診療は循環器内科医にとって避けて通れない現実問題となった。過去の推測通り、循環器内科で管理を必要とする先天性心疾患の対象は、中等症から重症の心疾患の割合が確実に増加している。特にチアノーゼ型心疾患を主体とする複雑心疾患では、成人期になると不整脈、心不全、肺高血圧など避けて通れない問題となっている。これらの問題点は循環器内科医にとって通常の日常診療で扱う問題点と同様であるが、成人先天性心疾患では個々の心疾患が多様である。さらに患者ごとに異なった外科治療選択が選択されていることが多く、その病態はさらに多様化する。このような心疾患の多様性が治療方針を複雑化し、個々の症例における個別治療を必要としている。また各心疾患の症例数は限られており、多数例での均一化した評価は難しい。成人先天性心疾患はこれまで循環器領域で経験されなかった新しい疾患群であり、Fontan術のように時代とともに変遷した手術法もある。日本循環器学会や海外の診療ガイドラインによって一定の管理基準は確立しつつあるが、エビデンスの低い領域も多く、的確な治療指針は今後も変化していくと思われる。本セッションでは、成人先天性心疾患においてエビデンスが乏しく、いまだ解決されていない臨床上の問題点を明確にし、それらの問題点において今後予測される病態、さらに新たな治療法について最新の知見をもとに論議を進めたい。

英語

循環器医療におけるゲノム医療の進歩
Progress of genome medicine in cardiovascular diseases

座長: 小室 一成 東京大学
座長のことば

我が国の死因のトップであるがんに関しては、研究の進歩によって発症機序の理解が進んでいる。がんの多くは細胞の増殖に関係する遺伝子の変異によって起こるが、その遺伝子(ドライバー遺伝子)がコードする分子を標的にした治療薬が次々に開発されている。その結果、がんの予後は急速に改善し昨年発表されたがん全体の5年生存率は68.6%である。現在ではまずがんの遺伝子を解析しドライバー遺伝子を同定した上で治療法を選ぶというゲノム医療が日常臨床で行われてきている。それでは循環器病においてゲノム医療はどのようになっているのであろうか。循環器疾患といえどもゲノムが疾患発症に関与しているということはがんと同じであるが、循環器疾患の難しいところは、遺伝的な要因以外に多くの環境要因が複雑に関与することである。しかし同じような環境要因、例えば抗がん剤の投与や高血圧であっても心不全を発症する人としない人がいるのは、遺伝的な背景の違いであることが徐々に明らかになってきた。将来的には遺伝子を解析し、心不全になり易い心筋症の原因遺伝子の変異や多型を持っている人は普段から厳格な生活習慣の管理が必要になるであろうし、薬剤の投与に関しても遺伝子型によって異なる種類や量を選択することになるであろう。本プレナリーセッションでは、循環器医療におけるゲノム医療に関して現状と将来展望についてご講演いただく。

英語

人工知能を切り開く循環器未来像
Artificial Intelligence in Cardiovascular Medicine.: New perspectives and challenges

座長: 安田 聡 東北大学大学院医学系研究科循環器内科学分野
座長のことば

AI(人工知能)の活用は循環器の領域においても急速に進んでいる。AIに関する新しいニュースを見ない日はないほどだ。その背景にあるのは深層学習(Deep Learning)技術の発展によるところが大きい。循環器疾患には、発症・重症化の「予防」、罹患している人を鑑別し「診断」、発病者の転帰を改善する「治療」の3ステップがある。画像「診断」へのAI応用に加えて、自然言語処理技術の急速な発達により、カルテ情報の解析も可能となった。患者の病態把握・他疾患リスクの統合的把握や、血液ビッグデータ解析により循環器病の発症や再発するリスクをより正確に予測する道が広がってきている。AIを利用することで薬剤の効果・相互作用の予測、新規のみならず既存薬剤の再開発が期待されている。本セッションでは 進行中のプロジェクトを基に 人工知能が切り開く循環器未来像について 議論したい。

シンポジウム

日本語

急性心筋梗塞の現状と院内・院外の死亡率低下に向けた取り組み
Current status and challenges for reduction of in-hospital and out-hospital mortality from acute myocardial infarction

座長: 天野 哲也 愛知医科大学
  森野 禎浩 岩手医科大学内科学講座循環器内科分野
座長のことば

急性心筋梗塞に対する初期治療である緊急血行再建術(primary PCIなど)においては、その生命予後改善効果は議論の余地はないと思われる。しかし一方で、ここ数年間の急性心筋梗塞院内死亡率は必ずしも低下しておらず、緊急血行再建術施行率の地域格差、院外トリアージ、心筋梗塞回復期~慢性期における医療提供体制等々、死亡率低下に向けた取り組みは多岐にわたっている。また、一昨年制定された「健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病に係わる対策に関する基本法」(法律第百五号・平三〇・一二・一四)においても、循環器病に係わる予防、診断、治療、リハビリテーションなどの死亡率の低下等に資する事項についての時間軸を意識した議論取り組みが要求されている。さらには、Withコロナ時代においては、コロナ禍が心筋梗塞治療に与える影響なども加味しなければならない。本セッションでは、リアルワールドデータなどをもとに急性心筋梗塞の現状を再考しつつ、院内・院外の死亡率低下に向けて、予防から急性期、回復期~慢性期に渡る、心筋梗塞死亡率低下に向けた取り組みを議論する場としたい。

日本語

ISCHEMIA試験以後のCCSの評価と治療戦略
Diagnostic and therapeutic strategy for CCS following ISCHEMIA TRIAL

座長: 伊苅 裕二 東海大学
  坂口 元一 近畿大学病院心臓血管外科
座長のことば

ISCHEMIA試験は、虚血が証明されたCCS例に、直ちに血管造影を行いPCIもしくはCABGで血行再建を行う群と、内科治療を優先させ、必要になるまで血管造影を行わない内科治療群の無作為化試験である。結果としてこの2群間に総死亡に有意差を認めなかった。注意すべき点は内科治療群においても4年間で4分の1の症例はPCIもしくはCABGを受けている点である。総死亡以外のエンドポイントとして、血行再建群で狭心症の改善と、自発的に発生する心筋梗塞は低下させた。またサブ解析の結果心不全既往例に関しては予後を改善することも示唆されている。
現在CCSに対しては、虚血を証明し、虚血のある血管に対する血行再建は正当化されるが、虚血のない血管に対しては血行再建を行わずDEFERするのが正しいとされている。ISCHEMIA試験では虚血が証明されても、すぐに血行再建をせず、内科治療を優先してもよいことを示しており、ただし内科治療優先群は4年で4人に一人はPCIかCABGが必要になってくる。

このようなエビデンスを踏まえると、今後のCCSに対する診断と治療戦略は新しい時代を迎えなければならない。今までのエビデンスを整理し、今後我々が進むべき方向性を示すことができるような会を期待している。

英語

大型血管炎(高安動脈炎)の病態・診断・治療の現状を考える
Takayasu arteritis: Pathogenesis, current diagnosis and treatment

座長: 磯部 光章 榊原記念病院
座長のことば

高安動脈炎は主として若い女性が罹患し、大動脈とその分枝に狭窄、閉塞が生じ臨床症状を呈する大型血管炎を主体とする全身疾患である。症状が非特異的であるため、長く診断されずに経過することも稀でない。病因は不明であるが、最近いくつかの遺伝子多型とそれに関連した病因の探索が進んでいる。血液学的診断ではCRP、血沈などの非特異的炎症マーカーを用いているのが現状である。画像診断の進歩は著しく、造影CT、MRA、FDG‐PET/CTが早期発見、合併症診断に有用であることが報告されてきた。診断上の問題は特異的診断法が存在せず、標準的な画像診断基準が存在しないことである。またトシリズマブ使用下での活動性評価も大きな課題である。
治療面の進歩も著しい。ステロイドは炎症の沈静化に有効であるが、治療中の再発は70%と多く、再燃診断が難しいことも大きな臨床上の問題である。内服免疫抑制剤の功罪はなお今後の課題である。抗IL-6 受容体拮抗薬や抗TNFα受容体拮抗薬など生物学的製剤が臨床応用されているが、無効例もある。
狭窄血管の治療が必要な場合はバイパス手術やバルーン/ステント治療が選択されるが本症での長期的有効性についてはなお大きな課題である。

本シンポジウムでは本疾患の最新の研究成果と臨床の最前線について、基礎、疫学、診断、内科治療、血管治療の観点から最新の知見の紹介と討議を行いたい。

英語

CLTIに対するバイパス・EVT・内科治療の棲み分け
The strategic distinction for CLTI among BSX, EVT and medications

座長: 保科 克行 東京大学血管外科
  曽我 芳光 小倉記念病院循環器内科
座長のことば

CLTIに対するバイパス・EVT・内科治療の棲み分けを考えるのは容易ではない。CLTI患者のゴールは血行再建の成功ではなく、創傷治癒であり、最終的には生命予後の改善を目標としているからである。また、同じような病変であったとしても、患者の全身状態からprimary amputationが選択されることもある。欧米のガイドラインでは、durableな自家静脈と2年以上の生命予後が期待される患者においては、外科的血行再建を第一選択としている。しかし、2年以上の生命予後が期待される患者において明確な定義はなく、透析が多い日本人のCLTI患者において十分に反映されるとは言えない。近年、血管内治療の有効性が多く報告されるようになったが、本邦では膝下動脈においてはballoon angioplastyが中心で、高い再狭窄率と再治療率から限界も多い。

今回のCLTIシンポジウムを通して、効果的な創部治癒を達成するために、またよりよい生命予後を期待するためにどのようなアプローチが有効なのか、血行再建の戦略的棲み分けと集学的治療の境界、創傷治癒におけるリスクの層別化と展望、補助療法(腰部交換神経節切除、高気圧酸素療法、炭酸泉浴、アフェレーシス)の役割を議論できればと考えている。

英語

不整脈疾患におけるゲノム医療
Genomic medicine for arrhythmic diseases

座長: 古川 哲史 東京医科歯科大学難治疾患研究所
座長のことば

不整脈疾患のゲノム研究は、1990年代に連鎖解析によりQT延長症候群やBrugada症候群などの原因遺伝子としてイオンチャネル遺伝子が同定されことに始まる。イオンチャネル遺伝子異常は、表現型をパッチクランプ法を用いて高精度に解析できるため、ゲノム研究が他疾患に先駆けて進展した。その後、次世代シークエンス技術の普及により家族性不整脈疾患の理解が飛躍的に進み、原因遺伝子変異だけでなくモディファイア―遺伝子多型の存在も明らかになりつつある。また、全ゲノム関連解析の展開により心房細動などのコモン不整脈疾患の疾患感受性遺伝子多型も数多く同定された。これらのゲノム研究で得られた情報が、実臨床に応用されるゲノム医療も行われている。QT延長症候群では原因遺伝子によって異なる治療が行われている。心房細動では複数の心房細動感受性遺伝子多型から算出されたゲノムリスクスコアからハイリスク患者を同定し、長時間ホルター心電図やアップルウォッチなどのウェアラブルデバイス等で心房細動発症の早期の検出が試みられている、本シンポジウムでは、これらのゲノム情報を基盤とした不整脈疾患の最新のプレシジョン・メディシンについて取り上げる。

日本語

持続性心房細動の非薬物療法-Watchman・アブレーション・外科治療を含めて
Recent Advances of Nonpharmacological Therapy for Persistent Atrial Fibrillation-Topics for Left Atrial Appendage Occlusion Device, Catheter Ablation and Surgical Therapy

座長: 草野 研吾 国立循環器病研究センター心臓血管内科
  夛田 浩 福井大学医学部循環器内科学
座長のことば

心房細動は、心原性脳塞栓の大きな原因として重要であるが、心不全発生にも密に関わる重要な疾患である。近年、カテーテルアブレーションによる心房細動への非薬物治療が、こうした患者に対して大きな福音をもたらすことが報告され、全国における心房細動アブレーションは増加の一途をたどっている。現在、発作性心房細動に対する治療ストラテジーはほぼ確立されたと言って過言ではないが、心房細動診療の大きな問題点は、心房細動は進行する疾患であり、心房リモデリングの進行により、心房細動は持続しやすく、また僧帽弁逆流や血栓形成の頻度が増加することである。従って、進行した持続性心房細動に対する適切かつ有効な治療が求められている。今回のセッションでは、持続性心房細動の非薬物治療に関して近年のアブレーションの進歩、さらに左心耳閉鎖デバイスや外科治療の進歩に関して、一線の先生方からの演題応募を元に、適切で安全な治療ストラテジーに関してdiscussionを企画している。多くの応募を期待したい。

英語

心内膜心筋生検に関する見解
Position statement on endomyocardial biopsy

座長: 中村 一文 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科
  Petar M. Seferovic Serbian Academy of Sciences and Arts, University of Belgrade Faculty of Medicine, Serbia 
座長のことば

1962年に日本の今野先生・榊原先生によって開発されたカテーテルによる心内膜心筋生検法は,有力な検査法として世界中に広まった.現在は心臓移植の拒絶反応の診断・心筋炎や心筋症の診断に欠かすができない検査法である.近年心筋症関連疾患には新たな治療法が開発され, multimodality Imagingによる診断法も進歩し,心内膜心筋生検法についても見解を新たにする時期が来ている. 2021年 には日・欧・米の心不全学会からも「心内膜心筋生検に関する見解」も発表された. 本シンポジウムでは, 新たな疾患概念・治療法・multimodality imaging等の話題を加えながら, 心内膜心筋生検法の適応・手技・結果の解釈と活用についての見解を議論したい.

英語

Breakthroughs in the pathophysiology and treatment of HFpEF

座長: 山本 一博 鳥取大学医学部循環器・内分泌代謝内科
  Barry A Borlaug Mayo Clinic, USA
座長のことば

HFpEFはHFrEFと異なり、患者の生命予後改善効果を認める治療方針が見出されていない。その大きな理由が、HFpEFは高齢者に多いこともあり病態が多様であるにもかかわらず、これまではHFpEFとしてone-size-fits-allの発想で病態の解明、治療アプローチの模索が行われてきたことにある。近年、この問題を解決するために、phenomappingなどによりHFpEFをいくつかのクラスターに分け、各々において病態を探る試みがなされている。これまでに人種差を考慮した群分けが必要と思われる研究結果も示されていることから、日本人における検討が待たれている。治療面では、いくつかの薬物治療の効果が検討されると同時に、心房中隔シャント作成など非薬物療法の有用性も検討されている。HFpEFの重症度を左右する併存症をターゲットとする治療も注目されており、心房細動あるいは心房細動による心房性機能性僧帽弁逆流に対する介入、骨格筋機能障害への介入、栄養障害に対する介入など様々な角度からのアプロ―チが試みられている。本セッションでは、新しいアプローチによるHFpEFの病態解明がどこまで進んでいるか、治療介入についてどのような方法が模索されているか、最新の知見をもとに議論を深めたいと考えている。

英語

新たな分子病態から見た心不全の治療への挑戦
Challenge for treatment of heart failure based on new molecular pathogenesis

座長: 矢野 雅文 山口大学大学院医学系研究科 器官病態内科学
  桑原 宏一郎 信州大学医学部循環器内科
座長のことば

最近ARNIやSGLT2阻害薬などの心不全に対する新規治療薬の有効性が、大規模RCTにより示されたことを受けて、わが国でもこれらの薬剤がすでに臨床使用可能となり、心不全患者の予後改善が期待されている。しかしながら、依然として心不全患者の予後は不良で、根本的治療法の開発までには至っていないのが現状である。近年の細胞、分子レベルでの詳細な研究により、炎症および酸化ストレスを伴う神経・液性因子の活性化、代謝障害、細胞内Ca2+ハンドリング障害、細胞増殖/細胞死などの多岐にわたる関わる因子が、心不全の病態に複雑に関わりあっていることが明らかとなり、新規の分子標的治療が模索されている。また心不全の病態において、心臓と他の臓器・組織をリンクさせる分子・システムも治療標的になりうる。このセッションでは、心不全の分子メカニズムに関する最新の研究成果に基づいて、心不全の新たな治療法を探求したい。

日本語

心不全薬物治療の最前線
Front line of pharmacological therapy for heart failure

座長: 斎藤 能彦 奈良県立医科大学 循環器内科
  筒井 裕之 九州大学大学院医学研究院 循環器内科学
座長のことば

基礎研究による心不全の病態の解明と大規模臨床試験に基づくエビデンスをふまえて、心不全の薬物治療は従来の利尿薬と強心薬を中心とした治療から、神経体液性因子の活性化を抑制する治療へと大きく進歩してきた。左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)に対しては、従来から推奨されてきたACE阻害薬・アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)・ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)などのRAA系抑制薬やβ遮断薬に、Ifチャネル阻害薬イバブラジン、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)サクビトリルバルサルタン、SGLT-2阻害薬ダパグリフロジンとエンパグリフロジンが加わった。さらに可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬vericiguatと心筋ミオシン活性化薬omecamtiv mecarbilの有用性も報告された。このように従来の標準治療に比し更なる有用性を示す心不全治療薬が次々と登場している。実際の診療の現場での経験をもとに、心不全治療薬の有効性や安全性などの評価、使用方法に関する知見が積み重ねられつつある。さらに、薬物治療の進歩にもかかわらず心不全患者の生命予後は依然として不良であり、より有効な治療薬の開発を目指した基礎研究も活発に展開されている。

本シンポジウムでは、臨床・基礎を問わず幅広い立場から心不全薬物治療に関する最新の研究成果を発表いただき、心不全治療の現状と将来を展望したい。

英語

心不全イメージングの進歩
Progress in Heart Failure Imaging

座長: 坂田 泰史 大阪大学大学院医学系研究科循環器内科学
  土肥 薫 三重大学大学院医学系研究科 循環器・腎臓内科学
座長のことば

心不全とは、心臓ポンプ機能低下により、うっ血や臓器低灌流をきたす臨床症候群である。よって、ポンプ機能障害に関連する病態を反映する循環器イメージングは全て心不全イメージングである、とも言える。しかし、狭義の心不全イメージングは、心機能、心形態、血行動態、さらに心筋性状を表すものになろう。心不全イメージングは、その状況、対象患者によって必要性は変わる。急性心不全、または慢性心不全の急性増悪の場合、まず患者さんの血行動態を把握し、早期にうっ血や臓器低灌流を改善することが目的である。その場合、ベッドサイドで頻回に測定できることが必須となる。一方、ある程度病態が安定し、外来で管理する状況になれば、うっ血や臓器低灌流増悪のサインを見逃さず、早めに検知できるイメージング技術が必要である。また、心不全患者全体の経過とステージを把握できる、つまり再入院や予後を推測できるイメージングは、緩和ケアの程度を考えるために重要である。このように、心不全イメージングは患者さんの幅広い状態を観察することが要求され、一つのモダリティで全てをカバーできるものではない。ハイブリッドイメージング、分子イメージングあるいはIoTなど新しい技術を用いた先進的な心不全イメージングも含め、どのような未来を描けるか議論したい。

日本語

冠微小循環の最適診断法
Optimal diagnostic method for coronary microcirculation

座長: 松本 直也 日本大学病院循環器内科
  田中 信大 東京医科大学八王子医療センター
座長のことば

冠血行再建術の要件として、心筋虚血を証明することが必要である。近年は心筋虚血を来す冠動脈狭窄病変の検索にFractional flow reserve(FFR)検査や負荷パーフュージョンモダリティ(心筋シンチ・CT・MRIなど)が用いられる。FFR検査の陽性閾値は0.75-0.8が用いられSOTとして心筋シンチが用いられているが、FFRと心筋シンチの乖離は日常臨床でよく見られる現象である。近年、Ischemia with no obstructive coronary artery disease(INOCA)とも呼ばれいわゆる細動脈における微小循環障害(coronary microvascular dysfunction:CMD)がその一因である。CMD患者の予後は不良であり、左室拡張能低下やひいてはHFpEFの原因としても重症視されている。CMD患者において心外膜冠動脈に血管形成術を加えても必ずしもCMDの改善が得られるとは限らず、多角的診断法が重要である。CMD評価の方法として侵襲的にはIndex of microcirculatory resistance(IMR)が、非侵襲的には安静時・負荷時の冠血流をPET/CTを用いて測定する方法(coronary flow reserve:CFR)があげられる。

本シンポジウムではCMDの最適診断法としてモダリティの選択、負荷方法、治療法を含めて議論したい。

日本語

低左心機能に合併した機能性僧帽弁閉鎖不全症に対する治療-カテーテル治療(MitraClip、TMVR)と僧帽弁形成術、僧帽弁置換術
Transcatheter and Surgical Intervention for Secondary Mitral Regurgitation caused by LV dysfunction; MitraClip/TMVR or Valve repair/replacement

座長: 松居 喜郎 華岡青洲記念病院
  渡邉 望 宮崎大学医学部機能制御学講座循環動態生理学分野
座長のことば

機能性僧帽弁逆流は、そもそもの低心機能による予後の悪さに、そのメカニズムの多彩さ、内科治療・カテーテル治療・外科治療の適応、治療選択の難しさが加わり、画一的な診断や治療介入が難しい疾患である。日本循環器学会ガイドラインでも、2020年改訂版において機能性僧帽弁逆流の診断治療につき踏み込んだ記述がなされたが、最終的には現場のハートチームでの議論・決断が重要であり、そのためには疾患のメカニズムや予後予測を含めた正しい病態の理解と、現時点での先端医療を含めた治療の専門的知識を深めることが求められる。このセッションでは、近い将来に臨床応用されるであろうTMVRの適応や役割も含め、現時点での機能性僧帽弁逆流に対する病態の理解、治療法のup to dateにつき、内科的、外科的視点での発表を期待する。患者の様々な背景を含めた全人的医療の一環としてそれぞれの治療ストラテジーをどう選択していくのか、これからの治療選択のヒントとなるセッションとしたい。

日本語

大動脈弁形成術-標準化された治療法か?良い適応と弁置換とすべき症例
Can aortic valve repair be the standard procedure for patients with aortic regurgitation? Current indications

座長: 大北 裕 高槻病院
  中谷 敏 大阪府済生会千里病院
座長のことば

大動脈弁逆流に対する大動脈弁形成術式は1960年代から報告されているが,その早期および遠隔成績は僧帽弁形成術と比較して劣ることから,広く行われることはなかった.しかしながら,1990年代を迎え,自己弁温存大動脈基部置換術の経験が集積され,特に若年者において本術式が積極的に行われるようになってきた.これらの背景には大動脈基部の基礎的解剖知識の集積,経食道エコー,精密CT検査の普及による正確な大動脈逆流の診断がなされるようになったことがある.

本シンポジウムでは,大動脈弁逆流症例に対する大動脈弁形成術式の適応について,大動脈弁逆流の形態的および計量的診断,手術手技,その早期および遠隔成績について,循環器内科医と心臓外科医を交えて論議したい.

日本語

遠隔心臓リハビリテーションの可能性を探る
Exploring the possibilities of remote cardiac rehabilitation

座長: 牧田 茂 埼玉医科大学国際医療センター
  三浦 伸一郎 福岡大学医学部心臓・血管内科学
座長のことば

新型コロナウイルス感染症の感染拡大を契機に遠隔医療が注目されている。遠隔医療とは、情報通信機器を活用した健康増進や医療行為を実施することであり、心臓リハビリテーションの分野でも研究が進んできた。特に、外来心臓リハビリテーションは、通院継続実施率が低く、未だに十分とは言えない。また、外来では、集団指導のため密を避ける必要があるといった問題などを考慮すると、今後、「遠隔心臓リハビリテーション」の重要性はますます大きくなっていくと思われる。これまでの報告から、在宅心臓リハビリテーションの効果や安全性は外来通院型心臓リハビリテーションと同等であり、2021年に改定された心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドラインでも推奨クラスIIaとなっている。しかし、安全性・必要性・有効性の観点から、患者や家族、医療スタッフが安心して利用できる適切な遠隔システムの構築を推進する必要がある。本シンポジウムでは、「遠隔心臓リハビリテーション」が適応となる心血管疾患、運動プログラムや実施状況を報告していただく。さらに、運動機器やセンサー、監視システムなどの双方向の通信手段、また、医療コストなどといった点において、現在、どのような課題が存在し、それをどのように克服していくかなどを議論したい。

英語

成人期に達した先天性心疾患への再介入
Re-intervention for congenital heart disease in adulthood

座長: 白石 公 国立循環器病研究センター
座長のことば

小児期の診断および外科手術の進歩により、多くの先天性心疾患患者が救命され、現在では約90%の患者が成人期を迎えるようになった。これらの患者では、成長期にある小児期には比較的良好な生活を営むことができるが、成人期以降には、経年的な遺残症や続発症の影響により、難治性不整脈、心不全などの新たな病変が発症する。またFontan手術後患者では、年齢とともに全身臓器に障害が及ぶ。そのため、成人先天性心疾患診療においては、術後の遺残症や続発症を的確に察知し、適切な時期に再介入することが患者の生命予後を改善する上で大変重要な課題となっている。本シンポジウムでは、成人期に到達した先天性心疾患への再介入について、外科手術のみならず、カテーテル治療、アブレーションなど、多方面からのアプローチについて議論し、今後の診療に繋げたい。

日本語

ガイドラインの先を行く肺高血圧治療-従来治療に挑む
Beyond the clinical practice guidelines: New horizons in pulmonary arterial hypertension therapies

座長: 福本 義弘 久留米大学医学部内科学講座心臓・血管内科部門
  大郷 剛 国立循環器病研究センター
座長のことば

肺動脈性肺高血圧症の治療はこの20年で飛躍的に進歩し、予後やQOLが大きく改善していることはこれまでのエビデンスで示されてきた。その改善に最も大きく貢献しているのはプロスタサイクリン、一酸化窒素、エンドセリンの三系統のメカニズムより開発された肺血管特異的拡張薬であることは言うまでもない。また第6回の肺高血圧ワールドシンポジウムでの治療提案でもこれらの薬剤を初期から組み合わせて使用する初期併用療法が推奨され、我が国の治療ガイドラインでも初期併用療法が推奨され近年さらに予後は改善しつつある。しかし肺動脈性高血圧症の病因は複雑であり、その発症や進展にはさまざまな要因が関わっており、従来の肺血管拡張薬で十分な治療効果が得られない症例や難治例の存在が際立つようになってきた。肺動脈性肺高血圧症のさらなる予後改善を目指し、従来の治療ガイドラインで示されている治療薬の課題を解決する新規治療への挑戦は我々の使命である。遺伝子診断、個別化医療、新規発症メカニズムをターゲットとしたトランスレーショナル研究成果に基づいた新たな治療法の可能性など、ガイドラインで示された従来治療の先を行く将来の肺高血圧治療について総合的に議論し、次世代への発展の一助としたい。

日本語

循環器領域女性医師のキャリア継続の現状と課題
How to clear the hurdles of carrier - Challenge for the sustainable future

座長: 上村 史朗 川崎医科大学 循環器内科
  坂東 泰子 名古屋大学循環器内科
座長のことば

近年、医学部入学者に占める女性の割合は3分の1を超え、女性医師の割合は今後さらに増えることが予想される。一方、人口の超高齢化に伴って心不全パンデミックがさらに激しさを増す循環器領域は女性医師の割合が低い領域であり、この分野への女性医師の参画を如何に推進するか、同時に女性医師のキャリアの継続と向上をどのように図っていくかが、医師の働き方改革実現の点においても不可欠な視点である。特に女性医師では「Unconsciousness bias」として知られる性別役割分担意識を背景に、出産・子育て等によって仕事と生活を両立させることが困難となりキャリアを中断せざるを得ない場合が多く、卒後10年目前後で20%近くが退職するという特有のM字カーブ現象が認められる。女性医師を取り巻く状況を明らかにし、ライフイベントと医師のキャリアを両立できる環境を整備していく事が求められている。もう一つの問題は、女性リーダーの欠如である。女性に多いもう一つの「Unconsciousness bias」すなわち謙譲を美徳とする本人の潜在意識や因習のため、医学界を含めて女性がリーダーになる機会は乏しい。欧米ではすでにクオーター制をはじめ様々な制度が実現しているが、日本はOECD諸国の中でも最下位に甘んじている。医療現場の労働環境改善と女性リーダーの創生は両輪の関係にあり、これが実現しない限り欧米先進国レベルの女性参画とキャリア継続は達成不可能とさえ言えよう。

本シンポジウムでは、キャリア継続の壁とキャリア向上の壁をどうしたら打破できるのか、ジュニア医師とシニア医師の男女有識者を交え、その現状と課題を洗い出していきたい。

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老化の基礎研究
Basic biology of aging

座長: 南野 徹 順天堂大学大学院医学研究科 循環器内科
座長のことば

人生100年時代を迎え、日本は人類が未だかつて経験したことのない超高齢社会に直面している。そのような状況の中で大きな社会問題となっているのは、医療の進歩にも関わらず、健康寿命と平均寿命の差が大きく乖離していることであり、その原因の少なくとも一部に対して、虚血性心疾患や脳卒中をはじめとした脳心血管疾患が関与していることは明らかである。健康寿命を短縮しているこれらの疾患は、多くの高齢者において共通に認められることから、病的老化の形質の一部として捉えることができる。すなわち、これらの疾患の究極的な治療のターゲットは、個体老化を調節する仕組みそのものかもしれない。このような現状の中、日本を含めた多くの国々で、老化を病気として捉えて研究する取り組みが国家プロジェクトとして始まっている。例えば、DNA損傷などによって加齢に伴い蓄積する老化細胞が慢性炎症を惹起することで病的老化に関与しているという「細胞老化仮説研究」においては、老化細胞を特異的に取り除くことで様々な加齢関連疾患の改善が示されており、その臨床応用に向けて老化細胞除去薬の開発が進んでいる。一方、増血系細胞における加齢に伴う体細胞変異の蓄積は、増血系細胞のクローナルな増殖をもたらすことで慢性炎症を惹起し、病的老化形質に関与する。また、加齢に伴うDNA損傷の修復を促進しようと試みる研究も進んでいる。そこで本シンポジウムでは、健康寿命延伸を目指した老化の基礎研究の成果を議論することで、今後の新しい循環器疾患治療の発展につなげていきたいと思う。

英語

幹細胞・遺伝子治療・心臓再生の最前線
Cutting-edge Science in Stem Cell, Gene Therapy, and Regeneration for Cardiovascular Disease

座長: 家田 真樹 筑波大学医学医療系 循環器内科
座長のことば

2007年にヒトiPS細胞の樹立が発表されて2022年には15年目を迎える。この間にゲノム編集技術としてCRISPR-Cas9、シングルセル解析、AIなど様々な研究領域で発展があった。これまでの循環器疾患の病態解明や治療開発は、主にモデル動物や特殊なセルラインを用いて行われてきたが、今後はこれらの新しい技術を組み合わせて大きく発展していくことが期待される。またcovid19に対するワクチン治療として、mRNAワクチン、アデノウィルスベクターワクチンなど、従来にない新しいワクチンが開発され、世界を大きく変えた。これまでの化合物や抗体医薬を中心とした治療から、様々な疾患に対する新しい遺伝子治療薬研究も進んでおり、一部の疾患ではヒトで劇的な効果が示されている。一方、心臓再生医療はどうであろうか?2000年代に加熱した骨髄細胞や心臓幹細胞を中心とした心筋再生は、その後の多くの科学的検証からこれらの細胞が心筋に直接分化するというより、細胞から出るパラクライン効果が主であることがわかってきた。今後はiPS細胞など多能性幹細胞を用いた心筋再生、ダイレクトリプログラミング、また心筋細胞に対する若返り治療の研究など新しい取り組みが期待される。本シンポジウムでは、幅広い領域の研究者から、最新の知見を発表していただきたい。

日本語

医療機器開発における進歩ー非臨床から臨床評価ー
Progress in Medical Device Development -From Non-clinical to Clinical Evaluation-

座長: 中村 正人 東邦大学医療センター大橋病院
  中村 匡徳 名古屋工業大学
座長のことば

ワクチン接種は徐々に進んではいるものの,未だ,コロナ禍から抜け出せていない.国産のワクチンは未だ承認されておらず,輸入頼みである(2021年5月).医療機器開発においても,日本は世界の後塵を拝している.ちょっと古いデータになるが,医療機器の貿易収支は約8000億円の輸入超過,すなわち,赤字である.医療機器は,いまや医薬品と並んで医療を支える必須のものとなっている.注射器や体温計のような安価なものから,CTやMRIといった高価なものまであり,種類は多岐に渡る.一説によると,現在使用されている医療用医薬品が約1万5000種類であるのに対し,医療機器は50万~60万種類もあるそうである.これらを安心に使用するためには,事前に安全性と有効性を評価する必要がある.安全性と有効性を担保しつつ,より,承認審査を迅速化するためには,臨床評価のみならず,非臨床評価の活用が望まれる.動物愛護の観点からもしかりである.日本循環器学会は,臨床と工学との相互理解を目指して,日本機械学会との学会連携協定を結んでいる.連携企画の1つである本セッションでは,工学的視点と医学的視点の双方から医療機器開発における非臨床および臨床評価のあり方について議論していきたい.

英語

集中治療室での循環器治療医とのコラボ-循環器管理から感染対策まで-
Collaboration with cardiologists in the intensive care unit: from cardiovascular management to infection control

座長: 佐藤 直樹 かわぐち心臓呼吸器病院 循環器内科
  伊藤 智範 岩手医科大学
座長のことば

循環器救急疾患は、高齢患者の増加とともにより集学的な治療が求められるようになってきている。循環器疾患に加えて、肺炎や敗血症を代表とする感染症、腎機能障害といった多臓器障害に対する対応が求められることが多くなってきている。このような状況に対して、より迅速にかつ的確に対応するためには、集中治療医と連携を取ることが極めて重要である。特にCOIVD19パンデミックにおいて、心筋炎や血栓症を含む循環器系疾患合併に対するアプローチが必要になることもある。循環器内科医と集中治療医の協力体制によって対応し得た経験を踏まえて、より強固な循環器集中治療を考える場を提供したい。

英語

集中治療室での加療をいかにプレポスピタルから開始するか
How to start treatment in the intensive care unit from the pre-hospital stage

座長: 田原 良雄 国立循環器病研究センター
  遠藤 智之 東北医科薬科大学病院 救急科
座長のことば

集中治療室に入室する患者の疾患は多岐にわたる。とりわけ急性冠症候群、心不全、急性大動脈症候群などの循環器救急疾患は原因疾患に対する根本的な治療開始までの時間や集中治療室に入室するまでの時間の短縮を含めた時間管理および合併症や血行動態の評価に関する詳細な全身管理が求められる。
集中治療室における質の高い管理が効果を発揮するためには、集中治療の適応となりうる疾患を適切に集約化することにある。そのためには開業医(一般臨床家)、プレホスピタルの救急隊員、救急外来の救急医、そして循環器専門医の連携が重要である。
本セッションでは、①集中治療を必要とする心血管疾患に関する地域におけるレジストリー、②地域の心血管救急医療体制(病院選定、メディカルコントロール、CCUネットワーク)、③救急外来でのトリアージ(院内体制、ハートチームの構築)、④重症心血管救急疾患に対する緊急治療(早期治療開始への工夫)、⑤血行動態評価法(エコー他)と補助循環装置(IABP, ECMO, IMPELLA)の適応、⑥重症度評価と転帰を改善するための対策(SOFAスコア、APACHEスコア、体温管理療法など)について討論する。

救急現場から循環器専門医療機関に、より迅速かつ適切に搬送可能な体制を構築するために、本セッションでの発表内容がプレホスピタルからの情報提供や病院収容前に開始可能な治療法に関する有益な情報を提供し、地域の実情に応じた医療提供体制構築に貢献できれば幸いである。

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がん治療による循環器合併症の現状と課題
Challenges and Opportunities in Cancer Therapeutics-Related Cardiovascular Disorders (CTRCD)

座長: 南 博信 神戸大学大学院医学系研究科 腫瘍・血液内科学分野
  佐瀬 一洋 順天堂大学大学院医学研究科臨床薬理学
座長のことば

がん医療の進歩によりがんの年齢調整死亡率は低下し、結果としてがんサバイバーシップケアの重要性が高まっている。心血管疾患(CVD)はがんサバイバーの最も重要な死因の一つである。具体的にはCVDとがんには共通の危険因子が多く、心疾患の既往を有する高齢者が増加しつつある。更に抗がん剤や放射線治療の心毒性および分子標的薬や免疫療法など最新の治療法ではがん治療関連心血管系障害(CTRCD)と呼ばれる多彩な病態が顕在化しつつあり、現状の認識とともに課題の解決が急務となっている。

腫瘍循環器学は急速に発展しつつある学際領域連携である。循環器専門家とがん専門家が患者の予後改善という目標を共有することで、CTRCDの予防・診断・治療を含む新たな課題に取り組んでいる。当初、チーム医療の必要性はがん拠点医療機関や大学等の教育病院において現場レベルで認識されていた。しかし、次第に国家レベル、学術レベルの連携に発展すると、治療ガイドラインの基盤となるエビデンスの不足、および基礎・臨床・疫学研究の必要性が顕在化した。

本シンポジウムでは、日本臨床腫瘍学会(JSMO)および日本腫瘍循環器学会(JSMO)の協力を得て、腫瘍専門家と循環器専門家による学際領域連携を更に円滑に進めることを目的として、最新のがん医療の成果を共有するとともに、がん治療による循環器合併症の現状と今後への課題について議論を深めたい。

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循環器診療のあり方と医療政策および医療体制

座長: 池田 隆徳 東邦大学大学院医学研究科循環器内科学
  中川 義久 滋賀医科大学 循環器内科
座長のことば

健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法が制定され、循環器病対策推進基本計画の概要が厚生労働省から示された。現在、施策としての循環器疾患の「予防」「急性期」「回復期から維持期」の診療体制の構築に向けた動きが活発化してきた。その中で施設間の医療提供体制の整備、循環器病を予防する健診体制の構築、循環器病の発症および重症化の予防、専門的医療を行う施設の役割、専門施設としての認定指標の設定、施設間ネットワークシステム構築などについて深く議論されている。さまざま問題を抱えているものの、いずれもが循環器診療を円滑に行うためには重要な課題である。いうまでもなく、心疾患はがんに次いで死因の第 2 位を占めており、要介護度 4~5の医療費においてはがんを抑えて第 1 位である。急性心筋梗塞、重症心不全、難治性不整脈などの危険な循環器疾患の診療体制の構築は急務となっている。一方で、増大し続ける医療費の抑制も考慮に入れなければならない。さらには、「チーム医療」「在宅医療」「遠隔医療」「医師負担軽減」などについても考慮する必要がある。循環器医療のあり方は、今後のわが国の医療政策においてきわめて重要な位置を占める。

本シンポジウムでは、今後の循環器医療を進めていくうえでのさまざまな医療政策あるいは医療体制について議論する予定である。指定演題とは別にこのテーマに関する演題を広く公募する。

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公募無し

2022年度診療報酬改定に向けての取り組みとその結果について

座長: 池田 隆徳 東邦大学大学院医学研究科循環器内科学
  松本 万夫 東松山医師会病院
座長のことば

診療報酬改定は2年毎に行われる。各学会で関係する医療技術の未収載・既収載、基本診療料、医薬品の再評価の提案書を作成し、厚生労働省内の分科会において検討された後、中央社会保険医療協議会(中医協)で審議される。評価の対象となる医療技術および医薬品については、薬事承認されていることを前提とする。提案書の様式については、安全性・有効性の記載に加えて、エビデンスを明確化するため、診療ガイドライン上での位置づけや参考文献の記載を義務づけている。また、想定される年間の患者数の記載も必要である。中医協では、関係有識者と連携しながら、国際的な動向も踏まえて評価する方針としている。日本循環器学会では、主に内科系学会社会保健委員会連合(内保連)を介して提案書を提出している。日本循環器学会は関連22学会を束ねており、循環器関連委員会として活動している。関連学会から出された提案書を日本循環器学会の保険診療委員会で吟味し、関連学会の提案に日本循環器学会が共同提案する体制を前回から整えている。このような2年毎の提案とは別に、関連学会あるいは学会員から早急に診療報酬設定を希望する医療技術・医薬品がある場合は、適宜、要望書を厚生労働省に提出している。

本シンポジウムでは、まず2022年診療報酬改定における内保連の基本方針を解説し、次いでこの度の診療報酬改定に向けて提出した主な学会の要望内容とその結果について報告していただく。

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ビッグデータ解析の現状と課題
Current state and challenges of big data analysis

座長: 的場 聖明 京都府立医科大学大学院医学研究科循環器内科学
  宮本 恵宏 国立循環器病研究センター
座長のことば

第二次脳卒中と循環器病克服5ヵ年計画でも登録事業の推進が柱の一つとして取り上げられています。症例数が多く、比較的速やかにデータ化され、データの種類が多いという特徴を持つビッグデータが、診療実態の把握、医療の質の改善、そして研究に活用されることが期待されています。包括医療費支払い制度で使われるDPCデータもビッグデータということができますが、日本循環器学会は循環器疾患診療実態調査を通じて収集したDPCデータを多くの研究に利用できるようにしてきました。また、悉皆性が高いレジストリーは、ビッグデータといえますが、JCVSDやJ-PCIレジストリーなどからは、多くの研究成果が報告されています。しかし、現在のビッグデータには、患者の長期予後の情報が乏しいことや、医療機関が異なる同一患者の情報をリンケージすることが難しいなど、多くの課題も残されています。本シンポジウムでは、ビッグデータを活用した研究の現状を紹介していただくとともに、残された課題と解決方法を提案していただきたいと思います。

チーム医療セッション

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シンポジウム1
肺高血圧症の診断と治療における放射線診療の役割

座長: 赤木 達 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 循環器内科学
  高尾 由範 大阪市立大学医学部附属病院 中央放射線部
座長のことば
肺高血圧症とは肺血管の狭窄や閉塞により、著明な肺動脈圧の上昇から右心不全をきたす重篤な疾患である。近年肺血管特異的に作用する様々な肺血管拡張薬(エンドセリン受容体拮抗薬、PDE5阻害薬、可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬、プロスタサイクリン製剤)が使用可能となり、長期予後の改善がみられている。肺高血圧症の原因は、特発性、膠原病、先天性心疾患、門脈圧亢進、薬剤、左心疾患、肺疾患、血栓塞栓症など多岐にわたるが、原因疾患別に治療方針が異なるため、正確な診断が極めて重要となる。特に特徴的な所見がみられるCT、肺換気血流シンチ、肺動脈造影などの放射線画像は診断に有用であり、MRIによる右心機能評価も右心不全の状態を把握するうえで大切である。また治療介入を行った後に、これら放射線画像をフォローすることで治療効果の判定に役立つ。このように肺高血圧症の診断と治療において、放射線診療の役割は非常に大きい。そこで本シンポジウムを医師や診療放射線技師をはじめとする肺高血圧症の診断と治療に携わるスタッフが、共通の認識を持って診療に当たれるよう肺高血圧症の放射線画像を学ぶ機会にしたい。

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シンポジウム2
多様なフレイル・サルコペニアと心疾患との関係

座長: 荒井 秀典 国立長寿医療研究センター
  高橋 哲也 順天堂大学保健医療学部
座長のことば

平成25年5月に日本老年医学会が「虚弱」と訳されていたFrailtyの訳を「フレイル」とすることを提言して以来、全国的にフレイルの概念が浸透し、その予防策や効果的な介入方法が様々議論されるようになった。循環器疾患についても、心房細動や慢性腎臓病などの重複疾患のほかに「フレイル」が加わることで治療が著効しにくいことが明らかになり、フレイル対策がさらに注目を集めている。フレイルには、身体的フレイル、精神・心理的フレイル、社会的フレイルがあり、最近では口腔機能の低下に着目したオーラルフレイルにも注目が集まっている。また、身体的フレイルの原因としてのサルコペニアについては、骨格筋以外にも呼吸筋サルコペニアや骨の脆弱性に着目したオステオサルコペニアなどが指摘されるようになり、フレイルやサルコペニアは多様化の様相を呈している。ゆえにフレイルやサルコペニアを総合的にケアするチーム医療がますます重要になってきており、特に健康寿命延伸のためには、disabilityの克服に加えて、転倒予防やセルフケア能力の改善を目指す理学療法の役割が極めて重要といえる。

本セッションでは、心疾患に関連する様々なフレイル・サルコペニアを整理しながら、フレイルやサルコペニアと運動機能、生命予後との関係を議論し、循環器医療におけるチーム医療の重要性を改めて考えるセッションとしたい。

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シンポジウム3
併存疾患を有する循環器疾患患者への薬物治療

座長: 植田 真一郎 琉球大学 臨床薬理学
  志賀 剛 東京慈恵会医科大学臨床薬理学
座長のことば

近年、人口の高齢化とともに循環器疾患患者も複数の併存疾患を抱えていることが多い。現在の医療はどの領域においてもエビデンスに基づいた治療(Evidence-based Medicine, EBM)が展開されている。確かに臨床試験の結果を適切に取り入れたガイドラインに沿った薬物治療は予後を改善する。とくに循環器疾患はリスク管理という観点から多剤併用による薬物治療が行われることが多い。一方で併存疾患が増え、それぞれが適切なガイドラインに沿った薬物治療を行うと薬の数が増えるのも現実である。しかし、効果は足し算でない。さまざまな併存疾患を有する患者に、多様な診療環境で治療が行われると、実際の効果は臨床試験で示された効果よりも低い場合があるといわれる。EBMに基づいた薬の併用が、本当に目の前の患者の利益になっているのか?逆に、患者の不利益(害)になっていないか?また、併存疾患に対する治療が、循環器疾患への治療効果を妨げている可能性、あるいは循環器疾患への治療が併存疾患を悪化しうる可能性、薬物相互作用なども考慮しなければいけない。そこには各患者の病態を正確に把握し、その治療ゴールを明確にしたうえでの併存疾患を意識した薬の選択と使い方が必要とされる。

本シンポジウムでは、これから増えてくる併存疾患を有する循環器疾患患者に対する適切な薬物治療について、その課題、解決へ向けての取り組み、新しい視点に立った研究などを示してもらい、多方面から考えてみたい。

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シンポジウム4
左室壁運動異常を考える-再現性良く診断するために-

座長: 岩永 史郎 埼玉医科大学国際医療センター 心臓内科
  田中 教雄 西宮渡辺心臓脳・血管センター
座長のことば

左室壁運動の評価は、心エコー図検査の基本ではあるが、施設や指導者によってバラツキがあり、確立されたものとはいえない。壁運動異常は断層像の動画を観察して評価するため、検者の主観的な判断に依存する。また、ガイドラインには低収縮、無収縮、奇異性収縮といった異常所見の分類は記載されているが、正常収縮とは何かが定義されていない。評価結果がばらつくために、初心者はもちろんのこと、ベテランにおいても苦手意識を持っている人が少なくない。

 多数の症例の心エコー動画を複数の検者で観察して、壁運動異常を一緒に診断していると、診断結果の検者間誤差が少なくなるため、同一施設内であれば壁運動評価の再現性を高めることもできる。しかし、施設が異なるとまったく違った評価が行われていることに驚くことがある。左室壁運動を客観的・定量的に評価することによって、このようなバラツキが少なくなるため、様々な手法が検討されている。組織ドプラ法、スペックル・トラッキング法、三次元心エコー法などを用いた壁運動評価が試みられているが、日常臨床にルーチンに使用されているわけではない。このような定量評価法にも検者間誤差や普及を妨げる問題点が存在する。本シンポジウムでは、日常臨床において左室壁運動異常を鋭敏に検出し、診断の再現性を高める方法や技術、さらには客観的・定量的評価の将来の展望について討論する。

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シンポジウム5
循環器疾患患者の倫理調整

座長: 三浦 稚郁子 地域医療振興協会 
  白石 裕一 京都府立医科大学循環器腎臓内科
座長のことば

昨今、厚労省は、ACPの考え方を推進しているが、患者が自分の望む医療やケアを前もって家族とともに考えていたとして、いざ、急激に生命の危機状態に陥ったとき、もしくは患者の認知機能に障害が起き自分で意思決定できなくなったとき、果たして代理決定者は、ジレンマなく、患者の意思を尊重した意思決定ができているのだろうか。
消防庁の急病の疾病分類では、脳疾患及び心疾患等を含む循環器系が全体の15.7%を占め、死亡及び重症(長期入院)において、脳疾患や心疾患等が占める割合が高い(令和元年版「救急・救助の現状」)。また、介護が必要となった主な原因に占める割合は、脳血管疾患と心疾患を合わせると 20.6%となる(令和元年版「国民生活基礎調査:厚生労働省」)。このような循環器病の背景を考えると、循環器疾患患者には、常に様々な場面で危機的な状況が訪れる可能性があり、医療者は患者・家族の意思決定支援のために適切な倫理調整が必要である。
クリティカルケア領域で倫理的問題が生じやすい理由として、治療効果を上回るリスクがある、患者の意思表明が難しいことが少なくないこと、重症患者のトリアージに際して治療の意味やその効果の不確定さなどが挙げられる。患者の自己決定権、知る権利、脳死や臓器移植の問題、医療経済的に見て高度医療の限界などの問題がかかわってくる。患者の意識がない、意思決定や表明が出来ないなどの状況では患者の価値や信念が尊重されない場面も生じる。

本シンポジウムでは、循環器疾患患者の治療選択やケアの方向性を意思決定する際に、チームや組織で倫理調整に取り組んでいる施設の在り方を共有することで、循環器医療の現場で患者・家族にとってよりよい意思決定ができる倫理調整を検討していきたい。