第86回日本循環器学会学術集会

会長挨拶

第86回日本循環器学会学術集会 会長
伊藤 浩
(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科循環器内科学 教授)

 新型コロナ感染に対する緊急事態宣言も解除され、ワクチン接種も開始され、少しずつ明るい兆しが見えてきました。しかしながら、第4波に対する不安の中、日々目の前の患者を救うために奮闘していらっしゃる皆様に敬意を表します。
 第86回日本循環器学会(JCS 2022)を2022年3月11日から3月13日まで神戸国際会議場、神戸ポートピアホテル、神戸国際展示場において開催致します。今回は和歌山県立医科大学循環器内科教授 赤阪隆史先生が会長を務められるAPSC (Asian Pacific Society of Cardiology) 2022との合同開催となります。コロナ禍を乗り越えた後の初めての学会ということでオンサイトをメインとしWEB配信も行う「ハイブリッド形式」を考えています。
 コロナ禍により様々なものが大きく変わりました。3密を避ける、テレワークを推進する流れの中で学術集会もWEB開催が当たり前になりました。WEBは情報伝達としてはとても優れています。時間に縛られない、移動が要らない、経済的に安いなどのメリットにより多くの参加者に喜ばれているのも事実です。地方からの移動が大変、臨床が多忙で移動が難しい、しかし新しい知識を得たいと希望する会員が多いことを考えると、コロナ禍が去ったとしてもWEB配信は残す必要があります。
オンサイトの意義は何でしょうか? 学会場で顔を突き合わせて直接議論を交わすことで得られる体験、先達からの直接の励ましの言葉、遠方の友人とのコミュニケーション、廊下での立ち話、そのようなことが人の輪を広げ、そして日本の循環器病学の基礎体力を養っていくと思います。さらに、素晴らしい仕事をしている海外の研究者と直接語り合う興奮、今回はAPSCとの併催ということもあり、アジアの研究者との交流、ワクワクします。人と人が交わることの大切さを再認識できたのもコロナ禍の影響です。私ども医局員一同、会場でなければ得られない体験をしていただけるような面白い企画を考えております。
 今回の学術集会のテーマは「翼を広げる循環器病学」(Cardiology Spreading its Wings)としました。心不全をはじめとする心血管疾患患者数は激増し、また循環器病学の扱う領域も飛躍的に広がっています。CKD, DM, COPD、悪性腫瘍、フレイルなど他科にまたがる合併症を有する高齢患者が増え、合併症が心疾患を増悪させる連関が明らかとなってきました。成人先天性心疾患、腫瘍循環器学など新しい領域への対応も迫られています。診療体制も医師だけではなく多職種がかかわるチーム医療へ、診療内容も超高齢者や末期心不全患者にはcureからcare、そして緩和医療へと広がっています。新たにゲノム編集、iPS細胞、分子標的薬、Big data、AI、新規デバイスなど今後の循環器医療を大きく変える領域が加わってきました。これらの領域をカバーすべく、プレナリー、シンポジウムに加えて、意見の異なる問題を徹底的に議論するディベート、最先端の情報を提供するトピックス、各分野のエキスパートと議論するmeet the expertなど、参加者が知的満足と興奮を覚えるような企画を準備しています。
 我々は患者様の健康寿命を延ばすために医療政策にもかかわらなくてはなりません。2019年12月1日には、脳卒中を含む循環器医療に携わる者全員の念願であった、「脳卒中と循環器病対策基本法」が施行されました。2021年度からは各都道府県で対策法の3つの目標、①循環器病の予防や正しい知識の普及啓発、②保健医療及び福祉に係るサービスの提供体制の充実、③循環器病の研究推進、に向けた取り組みが始まります。各地域の実情に合わせて、どのように実践していくのか良いか日本循環器学会会員が知恵を絞り、お互いの体験を情報交換する必要があります。今までにない発想が求められています。
 このような急激に領域を広げていく循環器病学に対応するためには、医療・学術などあらゆる面で、これまでの伝統を継承しつつも新しい世界を創造していくことが求められます。本会では多職種が参加し、様々な意見を出して議論することで新たな循環器病学の未来像を描くことができればよいと考えています。学術集会の主役は参加される皆様です。是非、オンサイトでご参加いただき議論の輪に加わっていただき、世界に情報を発信していきましょう。