第40回 日本循環制御医学会 総会・学術集会 in 軽井沢 第40回 日本循環制御医学会 総会・学術集会 in 軽井沢

会長挨拶

福田 恵一

第40回日本循環制御医学会総会・学術集会

会 長 福田 恵一

(慶應義塾大学医学部 循環器内科 教授)

先進医療を支える循環制御

循環制御の古典的な考え方は前負荷、後負荷、心拍数、心収縮力の4つの心血行動態の因子の重要性を把握することが基本でした。その後、フランクスターリングの法則と仮説が提唱され、圧容積関係の正確な理解から始まり、左室拡張末期圧と肺うっ血の関係、心収縮力の指標、拡張障害へと理解が拡がりました。そして心不全には収縮不全(HFrEF)と拡張不全(HEpEF)があることが示され、循環制御の重要性が広く理解されるに至りました。さらに、これらの心機能の制御システムとして交感神経・副交感神経の作用と神経体液性因子が注目されるに至りました。心臓手術を安定させるのは、麻酔における循環制御が重要であることはいうまでもありません。さまざまな薬剤が循環制御にかかわる因子を多方向に変動させるため、その理解と調節は極めて重要であることがこの領域の発展の一つの鍵となりました。循環制御の研究は、さらに心筋虚血と再灌流障害の回避、心筋保護、ischemic pre­conditioningの発見と機序の解明に進みました。これを支えるため、基礎研究の充実と、医療技術として心エコー、心臓カテーテル検査、心臓CT、MRI等が活用され、循環制御の研究は大きく発展してきました。

21世紀に入り臨床医学はさらに急速に発展し、低侵襲治療を始めとしたさまざまな技術の開発がなされてきました。従来は外科手術で治療をしてきた大動脈弁狭窄症、心房中隔欠損症、動脈管開存症、肥大型閉塞型心筋症、慢性血栓塞栓性肺高血圧症等もカテーテルによる先進治療で治せるようになりました。心臓手術もいまやminimum invasive surgery等の先進治療が花盛りとなっています。また、再生医療はもはや空想の時代ではなく、現実の医療になろうとしています。これに加え、遺伝子治療、ゲノム解析に立脚した個別化医療・先制医療、AI技術を応用した診断等も急速に臨床医学に入ろうとしています。本学会では発展した先進医療において循環制御がいかにあるべきかに焦点をあて、先進医療を支える循環制御をテーマとし、学会参加者の間で広く議論を進めたいと思っております。多くの皆様のご参加を心よりお待ち申し上げております。

2018年6月吉日