会長挨拶

第48回日本脳卒中の外科学会学術集会
会長 岩間 亨
(岐阜大学大学院医学系研究科 脳神経外科学分野)

このたび、第48回日本脳卒中の外科学会学術集会を2019年3月21日(木)~23日(土)の3日間、パシフィコ横浜において開催させていただきます。伝統ある本学会の会長を務めさせていただくことを大変光栄に存じます。今回はSTROKE2019として第44回日本脳卒中学会学術集会(東京女子医科大学脳神経内科学講座 北川一夫教授)および第35回スパズム・シンポジウム(秋田県立脳血管研究センター脳神経外科診療部 石川達哉センター長)と合同で開催いたします。

今世紀に入ってからの医学、医療の進歩には目覚しいものがあります。脳卒中の領域におきましても、t-PA静注療法の認可後、新規抗血小板薬・抗凝固薬が登場し、新たな血栓回収用血管内治療デバイスの登場によって、脳梗塞に対する超急性期治療から二次予防、一次予防までが大きく変わりつつあります。脳動脈瘤にクリッピングが行われて50年、コイル塞栓術が登場して20年、そして新たにFlow Diverterが加わりました。新規薬剤や新規医療機器の開発によって、これまで治療困難と考えられていた病態が、治療可能な病態へと変わりつつある中で、STROKE2019では、全体テーマを“進化を遂げた脳卒中医学・医療の今後の展望―次世代へのメッセージ:We can treat stroke―”といたしました。超高齢化と地域偏在による人口転換にAI(artificial intelligence)の導入が加わって脳卒中の医療体制に激変が生じようとしているこの時に、最新の脳卒中医学・診療に関する開かれた討論の場を提供し、今後の脳卒中医療を担う中堅、若手医師を鼓舞する強いメッセージを発信できる機会となることを期待しています。

内科的治療や血管内治療の進歩により、脳卒中医療の中における外科治療の役割も当然変わりつつあります。脳卒中の外科は、手術という侵襲的治療であるがゆえに、今も、あるいは低侵襲治療が発展しつつある今であるからこそ、最後の砦として重要であり続けていると思います。手術というとアプローチや手技、技術に関心が向きがちです。もちろん手技、技術は大切ですが、それらと知識は手術を行う上での基本事項であって、手術を行うという事は、自身の経験と論理的思考に基づいて、この手術では「何を目的に、何をするのか、しないのか」を明示し、それを全うする事であると思います。そのような想いから、第48回日本脳卒中の外科学会では侵襲的治療でもある脳卒中外科の有り様を問うべく“脳卒中外科の哲学”をサブテーマとし、このテーマで会長講演をさせて頂きます。手技だけではなく脳卒中外科医の備えるべき“心”を若手医師にメッセージとして届けることができればと考えております。

脳卒中診療における外科治療の役割を明確にすべく、いくつかのシンポジウムを企画しました。特別企画として「破裂内頚動脈前壁血豆状動脈瘤の治療」を取り上げました。学会主導研究としてのアンケート調査を元に、現在のわが国の治療の実態を明らかにしたいと思っています。私自身の興味から、「血行力学的脳虚血急性期に対する治療的バイパス手術」、「乳幼児もやもや病の治療戦略」、「Coil優先で治療すべき中大脳動脈瘤はあるか?」、「椎骨動脈部分血栓化動脈瘤の治療」、「小脳AVMの治療」をシンポジウムに取り上げ、ビデオシンポジウムとしては、「中大脳動脈瘤:クリッピングメソッド」と「脳幹海綿状血管腫の外科治療」を企画しました。いずれも、一部演者指定で公募もいたしますので奮ってご応募下さい。

昨年企画され、大変好評でありました手術教育ビデオセミナー 技術認定医養成講座「脳卒中の外科をマスターしよう」を今年も開催いたします。今年は技術認定の課題でもある、クリッピング、バイパス、CEAに絞って企画させて頂きます。若手の先生方には技術認定医取得を目指して、基本からadvanced techniqueまでを学んで頂きたいと思います。また、海外からの招待講演者としてフィンランドからNiemelä教授、ドイツからVajkoczy教授をお招きしております。お二人ともまだ若く、これからのヨーロッパ、そして世界の脳神経外科を牽引していかれる先生です。ぜひ、世界の最先端のお話をお聞きいただき、共に明日の脳神経外科を展望していただければ幸いです。

3月の横浜で、皆様の多数のご参加を心よりお待ちしております。