第37回スパズム・シンポジウム

会長挨拶

会長顔写真

第37回スパズム・シンポジウム

会長 岩渕 聡

東邦大学医療センター大橋病院 脳神経外科

このたび、第37回スパズム・シンポジウムを主催させていただくことになり、大変光栄に存じます。第37回の本会は第46回日本脳卒中学会学術集会および第50回日本脳卒中の外科学会学術集会と合同でSTROKE 2021として福岡で開催されますが、初日の2021年3月11日(木)の開催に向け、教室員一同、鋭意準備を進めています。

今回、自身が脳血管撮影における時間濃度曲線を用いてスパズム期の脳循環評価を行ってきたこともあり、テーマを「スパズムと末梢循環」とさせていただきました。そこで、電気通信大学の正本和人先生とUniversity of Vermontの小出昌代先生をお招きして、微小循環障害についてご講演を賜る予定です。

私が脳神経外科医の道を歩み始めた昭和の終わりの頃、脳動脈瘤クリッピング術を終え、食事ができるほどまで回復していたくも膜下出血患者さんが、その後急激に意識状態が悪化し、広範な脳梗塞を生じて命を落とす例を経験しました。一度回復している姿を見ているだけに、担当医としてもやり場のない気持ちに陥りながら、くも膜下出血の怖さを痛感し、また同時にこの病気に大きな関心を抱くようになりました。その後、私は昭和64年1月に新しく設立された病院へ出向し、その病院長が吉田康成先生でした。吉田先生はくも膜下出血後の線溶系と脳血管攣縮との関連について、基礎研究および臨床研究を長年続けてこられ、くも膜下出血例に対してウロキナーゼ髄腔内投与を初めて行った先生です。吉田先生は専門医試験前の未熟な私に、脳血管攣縮に対して線溶剤の髄腔内投与に至った経緯、抗凝固療法や蛋白分解酵素阻害剤への期待などをいつもお話しして下さり、時には脳神経外科医とは、などといった医師道をお伺いすることもありました。この吉田先生との出会いが、私がくも膜下出血、脳血管攣縮の研究を志すきっかけとなりました。

最近は、脳血管攣縮で命を落とすようなくも膜下出血例は見なくなり、大きな後遺症を残す例も少なくなりました。成績の向上に伴って、脳動脈瘤手術後はプロトコール通りに薬物が投与されるようになり、脳血管攣縮について若い世代からあまり関心をもたれなくなったようにも感じます。しかし、薬物治療やモニタリングが進歩しても、依然、遅発性脳虚血により障害を残す例が存在します。STROKE 2021の主題は「脳卒中制覇 ~さらなる頂へ~」です。遅発性脳虚血は未だ解決されておらず、発症ゼロを目指して、さらに進んで行かなくてはなりません。そこで、現状での問題点を明らかにする目的で、多面的治療が行われる現在において、遅発性脳虚血により梗塞巣や後遺症を残した例を検証するシンポジウムを企画させていただきました。

また血管内治療の普及によりスパズム期に来院したくも膜下出血例もスパズムの改善を待たずに脳動脈瘤治療が行われるようになりました。しかし、実際の治療成績や治療法についてまとまったデータはほとんどありません。そこでスパズム期の脳動脈瘤治療についても議論をお願いしたくシンポジウムに取り上げました。

個々の実臨床例を検討する時間が多い内容となっていますので、多くの若い先生方にもご参加いただければ幸いです。

先頭に戻る