第40回 日本外傷学会総会・学術集会
Harmony in diversity
会長挨拶
President's Greeting埼玉医科大学総合医療センター
高度救命救急センター 教授・外傷センター長

謹啓
時下、皆様におかれましては益々ご清祥のこととお喜び申し上げます。
このたび、第40回日本外傷学会学術集会を、2026年6月11日・12日の両日、大宮ソニックシティにて開催させていただく運びとなりました。このような大役を仰せつかり、光栄に存じるとともに、身の引き締まる思いで準備に取り組んでおります。
本学術集会のテーマは「Harmony in Diversity(多様性の中の調和)」です。医療現場では、今まさに多職種連携の重要性が一層高まっており、外傷診療においても各職種が互いを尊重し、専門性を発揮し合うことで、より良いアウトカムに直結するものと確信しております。また、地域の特性や医療資源の違いにより治療戦略には多様性がありますが、その中でいかに調和を保つかが今後の外傷医療の深化につながると考えます。
私自身は、整形外科と救急科の専門医として、これまで両領域の架け橋となることを意識しながら診療に従事してまいりました。働き方改革の影響により、緊急手術や重症外傷患者の受け入れが困難となる医療機関も増加傾向にありますが、これは危機であると同時に、外傷医療の集約化を進める好機とも捉えることができます。実際、緊急手術が可能な施設への異動を希望する医師も増えており、診療看護師や特定行為看護師との連携も広がりつつあります。
近年、頭部・胸部・腹部外傷に対する緊急手術は頭打ちの傾向にありますが、整形外科領域では高齢者の低エネルギー外傷による脊椎損傷、骨盤骨折、大腿骨近位部骨折の増加が続いています。これらの患者には、適切な手術タイミングや周術期管理を再考する必要があります。現状では、preventable trauma disabilityが見過ごされがちですが、私たちはこれに真剣に向き合うべきです。
重症外傷に加え、高齢者外傷に対する緊急手術への取り組みを本学会がリードすることで、日本外傷学会は真の「Game Changer」となり得ると確信しております。
本学術集会では、専門分野や職種を超えた実りある議論と新たな連携の芽が生まれることを願い、全力で準備を進めてまいります。多数の皆様のご参加を、心よりお待ち申し上げます。
謹白
2025年5月吉日