第107回日本病理学会総会

2018年6月21日(木)〜23日(土)

会長挨拶

会長 笠原 正典

第107回日本病理学会総会
会長 笠原 正典
(北海道大学理事・副学長 / 北海道大学大学院医学研究院 分子病理学教室 教授)

この度、第107回日本病理学会総会を開催させていただくことになりました。札幌市での開催は札幌医科大学の佐藤昇志会長(第102回総会)以来5年ぶり、北海道大学病理学教室がお世話するのは長嶋和郎会長(第93回総会)以来14年ぶりです。また、私の恩師であります相沢幹先生(北海道大学)が総会会長を務められてからちょうど30年ぶりの開催です。このような機会をいただきましたことを、大変光栄に存じます。

病理学は病気の仕組みを研究するとともに、その成果を臨床の場に還元し、診断と治療に貢献する学問です。病理学の歴史を振り返ってみますと、関連分野や異分野の革新的な概念と技術の受容が重要な役割を果たしたことが分かります。古くは光学顕微鏡による組織観察の導入、最近では免疫組織化学や分子生物学的手法の導入は病理学に大きな発展をもたらしました。さまざまな分野における革新を取り込み、伝統との融合を図ることは、今後も病理学の発展にとって重要と思われます。ここ数年は、コンピュータサイエンス、データサイエンス、ゲノムサイエンスがめざましい進歩を遂げた結果、ビックデータや人工知能を用いた画像診断、患者さん由来の核酸情報に基づいた精密医療などが可能になりつつあり、病理学はまた新たな「伝統と革新の融合」の時代を迎え、大きく飛躍しようとしています。このような状況を踏まえて、本総会のテーマは「病理学の未来を考える ―伝統と革新の融合―」としました。

指定演題としては、宿題報告のほか、特別講演、海外招聘講演、特別企画シンポジウム、シンポジウム、ワークショップ、病理診断講習会、特別企画、Meet the Professor、コンパニオンミーティングなどを用意いたしました。今回の宿題報告は、吉野正教授(岡山大学)、内木宏延教授(福井大学)、北川昌伸教授(東京医科歯科大学)が担当され、それぞれライフワークとして取り組んでこられた研究の集大成を報告されます。特別講演は大阪大学の荒瀬尚教授にお願いしました。自己免疫疾患の成因としてネオ・セルフ(新規自己抗原)が注目されておりますが、生体内でネオ・セルフが生成される機序について最新の研究成果を紹介していただきます。海外招聘講演は米国メモリアルスローンケタリングがんセンターのMarc Ladanyi教授とドイツ連邦共和国ハイデルベルグ大学のAlexander Marx教授にお願いしました。Ladanyi教授はがんのクリニカルシークエンス検査に基づいた精密医療について、Marx教授は胸腺上皮性腫瘍の診断について講演されます。

シンポジウムとワークショップは、なるべく多くの会員の皆様に興味を持っていただけるよう、病理学の広範な領域をバランスよく網羅するように配慮しました。シンポジウムは12テーマについて、ワークショップは18テーマについて企画しました。3つのシンポジウム「がんと免疫 2018」、「ICT、AI を病理診断に活かす」、「腫瘍微小環境の病理学」は特別企画シンポジウムとし、診療領域別講習 研究講演会として開催されます。ご多忙の中、シンポジウム、ワークショップ企画の労を取ってくださったオーガナイザーの先生に心から御礼申し上げます。

今回、新しい企画としてMeet the Professorを設けました。これは、シニアな教授にライフワークを中心に自らの思うところを自由に語っていただき、後進に励みや助言を与えていただく企画です。岡田保典教授(順天堂大学)、高橋雅英教授(名古屋大学)、江石義信教授(東京医科歯科大学)にお願いしております。

総会3日目の夕方には市民公開講座「病理医とともにがんを学び、がん治療の未来を考える」を開催します。この行事には一般市民のほか、総会に先立って病理医による出前講義を受けた医学部志望の高校生も参加する予定です。

本総会には、1092題の一般演題(口演、示説)の申し込みをいただきました。言うまでもなく総会における学術発表の基盤をなしているのは一般演題です。このようにたくさんの演題を出して下さった会員の皆様にこの場をお借りして厚く御礼申し上げる次第です。

本総会の準備にあたっては、松野吉宏、田中伸哉両副会長をはじめとして、北海道大学大学院医学研究院病理学教室、北海道大学病院病理診断科・病理部関係者、道内在住の病理関係者から全面的なご協力をいただきました。世話人一同、実りある会とすべく最善をつくしたつもりですが、至らぬ点も多々あるかと存じます。ご寛恕のほどお願い申し上げます。

北海道の6月は初夏の爽やかな天候に恵まれ、色あざやかに花が咲く季節です。学術総会とともに美しい自然も楽しんでいただきたいと思っております。皆様のご参加を心よりお待ちしております。

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