第23回日本再生医療学会総会

選考結果

中高生のためのセッション 作文コース 全体講評

 毎年、この再生医療学会総会に合わせて作文コンクールを開催してきました。本年度も総会テーマである「心−Compassion」に合わせてテーマを設定したところ、たくさんの作文が寄せられました。ありがとうございます。
 さて、「Compassion」の訳語にある「思いやり」という言葉は、自分の「思い」を向こうに「遣る」こと。つまり、相手に思いを届けること、相手の思いを受け取ること、その心の交流のことを意味する言葉です。寄せられた作文の多くが、この私たちが掲げたテーマに添って、心の交流を綴ってくれました。そして、様々な経験を単に思い出にするのではなく、これからの未来を切り開く力にしようとしていることが感じられる作文の数々でした。
 特に、金賞を受賞された大宮薫子さんの作品は、幼稚園の時の実体験に基づくものであり、自分の病と向き合った際の葛藤や気持ちがよく伝わってきました。提案された治療方法に対する自分の思いを伝え、その思いをくみ取ってくれる医師と出会えたことが、薫子さんの今を作っていると感じさせます。このことは、医療というものが、技術面だけではなく、心と心が向き合ったときにそこに成立する命の営みであることを私たちに思い出させてくれました。そしてこの作文テーマの説明に掲げた「啐啄」の意味を「奇跡が生まれる」と表現しています。医療が命という奇跡と向き合っていることをも思い出させる文章でした。
 本学会は、医療技術の進歩・発展のために尽くすことを目指していますが、そこには人間がいて、治す側と治される側の心があります。この人と人との間に生まれる心の揺らぎなしに医療は成立しません。AIの普及が加速度的に進んでいる現代社会において、多くの医療技術が進歩し発展することは間違いありません。その反面、見落とされてしまうことは何か。このようなことも皆さんの作文からは伝わってきました。また、現在、世界では紛争が生じ、多くの命が失われている現実があります。このことについて心を痛めている作文も多くありました。これは戦争の当事者はもちろん、その影響は様々なところで人々の心を傷つけていると感じます。そして、コロナ禍を経た今だからこそ、人と人の間にある「思い」に気付き、心を寄せながら未来に向かって進み始めている、そんなことを感じさせてくれた作文の数々でした。
 最後になりましたが、様々な視点で「心」に思いを巡らせてくれた皆さん、ありがとうございました。学校全体として本コンクールに取り組んでいただいている学校もあり、多くの作品を応募いただきました。この場を借りて感謝申し上げます。

受賞者

学校名・学年・氏名 作文タイトル
金賞 慶応義塾⼥子高等学校 高校1年
大宮 薫子
聴心器とAI(愛)
本文はこちらに掲載
銀賞 茨城県⽴緑岡高等学校 高校2年
森㞍 彩名
考えることで繋がる心
銀賞 学習院⼥子高等科 高校1年
長崎 愛子
Compassion=共感 x 情熱
銅賞 新潟県立新潟高等学校 高校1年
板垣 陽菜
未来を変えるために
銅賞 慶應義塾⼥子高等学校 高校1年
佐藤 夏帆
心の対話を欠かさずに
銅賞 東京農業大学第一高等学校中等部 中学3年
本田 伊紗也
今、できることがある

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