第117回日本精神神経学会学術総会 The 117th Annual Meeting of the Japanese Society of Psychiatry and Neurology

ご挨拶

第117回日本精神神経学会学術総会
会長 木下利彦
関西医科大学精神神経科学教室 教授

 第117回日本精神神経学会学術総会を2021年9月19日から21日の3日間、国立京都国際会館で開催させていただくことになりました。この上ない喜びに存じます。昨今の新型コロナウイルスの蔓延で、フル企画on siteでの開催が可能かどうか不確かな状況でありますが、教室員一同懸命に頑張っておりますので、ご期待ください。関西医科大学主催で1988年、前任の斎藤正己教授が大会長で大阪国際交流センターにて開催してから33年ぶりの開催であります。今回のテーマは、「革新と伝統が紡ぐ質の高い精神医学」とさせていただきました。
 精神疾患の多くは病理所見を伴わない特殊性があり、内因性というような概念が長らく支配的でありましたが、近年の革新的な検査・治療法の開発で、その病態の解明に薄光がさすようになってまいりました。「氏より育ち」と昔から言われている環境因の大きさが依然難題として立ちはだかっています。遺伝と環境、両者に関する最新のデータもご披露いただき、両者の関係性にも新たな解釈をしていただく予定にしております。器質性疾患特に認知症も大きな問題ですが、診断の精度を上げるための診断分類の精緻化および進行を食い止める治療法の開発などの詳細な検討も議論していただく予定であります。
 コロナ禍による甚大な影響は、当然のことながら社会生活全体に未曽有の変化をもたらすことでしょう。人類の歴史を眺めてみますと、感染症の大流行後に社会が劇的に変化したり、逆に人間の移動によって感染症が流行したり相互に関係しあっているようです。14世紀のペストの大流行後のルネサンスの勃興、またルネサンス期の梅毒の流行、16世紀大航海時代における中南米の天然痘の大流行とその文明の滅亡、19世紀の産業革命と結核の流行、20世紀の世界大戦とスペイン風邪の大流行などが該当すると考えられています。今回の新型コロナのパンデミックは、今まで経験したことのない速さであり、一瞬にして全世界に広がってしまいました。社会に及ぼす影響は戦争による被害に比しても甚大なものになりそうです。また以前はあまり顧みられることのなかった精神医学に及ぼす影響も計り知れないものになることでしょう。グローバルな世界を創成した人類の今まで経験したことのない試練を議論していただくことはもちろんでありますが、コロナ後の対応についても、精神医学的見地から広く議論を戦わせていただきたいと思います。