会長挨拶

佐田 尚宏

第86回日本臨床外科学会学術集会
会長 佐田 尚宏
(自治医科大学医学部外科学講座 
主任教授)

 この度、第86回日本臨床外科学会学術集会を、2024年11月21日(木)~23日(土)の3日間、JR宇都宮駅東口再開発で2022年に新築されたライトキューブ宇都宮およびホテル東日本宇都宮、ホテルマイステイズ宇都宮を会場に開催いたします。宇都宮は東京からJR東北新幹線で49分、学術集会の主会場はJR宇都宮駅徒歩2分の場所にあり、地方都市での開催ではありますが、利便性が高い会場での学術集会をご参加いただく方々に楽しんでいただけるよう、自治医科大学、附属病院、さいたま医療センターだけではなく、自治医科大学卒業生も含めた「オール自治医大」体制で準備を進めています。

 学術集会のテーマは『地域に外科を、そして世界へ』としました。外科医の数は減少しています。1994年28,209人であった外科医師数は、2020年には27,946人となりました。調査方法に変更があったため単純には比較できませんが、全医師数が1994年220,853人から2020年323,700人とほぼ1.5倍に増加していることを考慮すると著明に減少しているといえます。
そして、2014年成立した医療介護総合確保推進法により制度化された地域医療構想では、医師の診療科偏在対策、医師確保がそれぞれの医療圏の課題とされています。このような社会的状況を踏まえて、日本全国津々浦々に均一な質の高い外科診療を提供するために、地域における外科診療の持続可能性(sustainability)について真剣に議論する時期にきているのではないでしょうか。外科医を増やし、外科診療を維持するためには、「外科の魅力」を若い世代に伝えて行くことが重要です。日本の外科医には様々な可能性があります。本邦の優れた手術成績、高い外科技術を海外に発信することは私達の責務であり、実際に様々な形で日本の外科医は海外で活躍しています。「外科の魅力」とは、多様な可能性(diversity)にあります。そのような思いを込めて本学術集会のテーマに選定しました。

 1972年に開設された自治医科大学は、開学2年後の1974年に附属病院を開院しました。2024年は附属病院の50周年にあたります。その記念すべき年に日本臨床外科学会学術集会を主催することを大変光栄に感じています。地域の外科診療を支える多くの本学卒業生と力を合わせて「臨床外科」を考え、外科診療のsustainabilityとdiversityを考察する学術集会とすることができればと考えています。2019年末発生したCOVID-19の世界的蔓延で、医療の世界だけでなく社会構造自体が大きく変化しました。それに伴い、学術集会の在り方、開催形式も大きく変容した感があります。有史以来、人類は多くの苦難を克服し、新たなイノベーションを基に社会、生活を最適化する努力を続けてきました。本大会は学術集会の未来を見据え、現地で情報交換し、開催地を楽しんでいただく従来の学会の良さに加えて、オンラインの利便性も考慮した大会にしたいと考えています。多くの方々のご参加と暖かいご支援をいただきますよう心からお願い申し上げます。