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TEL:092-718-3531
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Email:jcs2026@congre.co.jp
第90回日本循環器学会学術集会(JCS2026)
 
 
プログラム
 
  プレナリーセッション
Plenary Session 1
  英 語  
  PL01  
冠微小循環障害
Coronary Microvascular Dysfunction
座 長:
辻田 賢一
熊本大学大学院生命科学研究部 循環器内科)

本プレナリーセッション1では、「冠微小循環障害(coronary microvascular dysfunction: CMD)」を取り上げます。近年、虚血性心疾患患者の中にも、冠動脈造影上の閉塞・狭窄を認めないINOCA患者が多く存在し、心血管イベントも想定より多く発生することが分かってきています。診断においては、侵襲的診断手順(invasive diagnostic procedure: IDP)の進歩と普及により、これまで「非閉塞性冠動脈疾患」とされてきた多くの症例に、CMD病態が潜んでいることも明らかとなってきました。今やCMDは、心筋虚血の新たな理解をもたらすのみならず、日常臨床においても無視できない重要な要素となっています。
またCMDは、狭義の虚血性心疾患のみならず、心不全(特にHFpEF)、さらには心筋症など多彩な循環器疾患の背景にも関与しており、その診断とマネジメントは、循環器診療のパラダイムを拡張する可能性を秘めています。
一方で、CMDの病態は一様ではなく、血管密度低下、内皮機能障害、スパスム、構造的リモデリング、代謝異常など、実に多岐にわたります。そのため、現在のところ画一的な治療戦略では効果が限定的であり、病態ごとの個別化医療が求められます。CMD診療は、まさに今、臨床と基礎の接点で進化を遂げつつある「未踏のフロンティア」であります。
本セッションでは、最前線でご活躍の先生方より、CMDに関する診断・病態・治療の最新知見を披露頂き、活発な議論を通じて、CMD診療の未来像をともに描ければ幸いです。

Plenary Session 2
  日本語  
  PL02  
冠動脈の石灰化病変(石灰化結節)に対する対応
Management of Coronary Calcified Lesions: Focus on Calcified Nodules
座 長:
中澤  学
近畿大学 循環器内科)
 
中嶋 博之
秋田大学 心臓血管外科)

本セッション「冠動脈の石灰化病変(石灰化結節)に対する対応」では、冠動脈病変の中でも治療を難渋させる“石灰化結節”に焦点を当て、その病態理解と最適な治療戦略について多角的に議論いたします。石灰化病変は、加齢や慢性腎臓病、糖尿病、炎症などに起因する血管内石灰化の進展と深く関連し、近年その存在意義と治療抵抗性が再認識されつつあります。
本セッションでは、内科的観点から石灰化の発生機序や進展メカニズムを、またインターベンション領域からはステント拡張不良や再狭窄・血栓形成といった臨床的課題を、さらに外科的立場からはバイパス術と瘤形成における対応の工夫を、それぞれ第一線で活躍される専門家の先生方にご講演いただきます。
各演者からは自身の診療・研究データに基づいたエビデンスの提示に加え、現状の課題と今後の方向性に関するオーバービューがなされる予定です。診療現場に即した実践的な知見とともに、今後のデバイス開発や診療ガイドライン整備に向けた議論が活性化されることが期待されます。
石灰化病変に関心のある内科医・外科医・研究者の皆様にとって、臨床と研究を結ぶ貴重な機会となることを願っております。多数のご参加を心よりお待ち申し上げます。

Plenary Session 3
  日本語  
  PL03  
血管炎の診断・治療の最前線
Advances in the Diagnosis and Treatment of Vasculitis
座 長:
前嶋 康浩
獨協医科大学日光医療センター 心臓・血管・腎臓内科)
 
笠島 里美
金沢大学医薬保健研究域保健学系病態検査学)

血管炎は、全身の多臓器に影響を及ぼし、多彩な臨床像を呈する難治性疾患群である。なかでも高安動脈炎、巨細胞性動脈炎、IgG4関連血管病変といった大型血管炎は、循環器疾患としても極めて重要な位置を占めており、冠動脈病変、心筋炎、心膜炎、不整脈、肺高血圧症など、循環器医が主体的に関与すべき病態をしばしば引き起こす。
近年、FDG-PET/CTや造影MRI検査など画像診断技術の進歩により、非侵襲的かつ高精度な病変評価が可能となり、診断能は飛躍的に向上している。また、ステロイド療法に加え、免疫抑制薬や分子標的薬、さらには寛解維持を見据えた個別化医療の展開が進み、治療戦略も多様化している。さらに、バイオマーカーや遺伝子解析による病態理解も急速に進展しつつある。
本シンポジウム「血管炎の診断・治療の最前線」では、こうした最新の知見と技術を共有し、今後の診療と研究の方向性について活発な議論を行いたい。循環器医として、血管炎にどう向き合うべきかを考える場となることを期待している。

Plenary Session 4
  英 語  
  PL04  
Pulsed Field Ablation (PFA) が切り拓く新時代の心房細動治療
Pulsed Field Ablation: Ushering in a New Era of Atrial Fibrillation Therapy
座 長:
里見 和浩
東京医科大学 循環器内科学分野)

2024年に臨床使用が開始されたPulsed Field Ablation(PFA)は、心房細動(AF)に対するカテーテルアブレーション治療において急速に普及しており、2025年初頭の時点で初回AFアブレーション例の約60%に導入されています。
当初、PFAの有効性は高周波やクライオアブレーションと同等とされていましたが、近年ではクライオを上回る治療成績を示す報告も散見されるようになりました。心筋に対する特異性が高く、食道や横隔神経、肺静脈周囲構造などの非標的組織への影響が少ないことから、安全性にも優れると考えられています。しかしながら、原因不明の脳梗塞症例が報告されるなど、依然として新規治療技術としての慎重な評価が求められています。
今後、PFAの新たなデバイスが続々と登場することが予想されており、肺静脈隔離にとどまらないアプローチや、心房細動以外の不整脈への応用も視野に入っています。
アブレーション治療は単なるAFの抑制手段にとどまらず、抗凝固療法、左心耳閉鎖デバイスとの併用、さらには心不全治療の一環として、AFトータルマネジメントの中核的ツールとして位置づけられるべきです。
本セッションでは、PFAによって切り拓かれた新たなAF治療の展望と可能性を共有するとともに、その安全性や臨床的位置づけに関する課題について多角的に検討いたします。

Plenary Session 5
  英 語  
  PL05  
心室不整脈アブレーション新時代
Future Perspective for Catheter Ablation for Ventricular Arrhythmia
座 長:
副島 京子
杏林大学 循環器内科)

心室不整脈治療は、いままさに大きな転換期を迎えています。アブレーション技術の進化、デバイスの高機能化、心臓MRIやAI解析などによる心室不整脈基質の診断精度の向上などにより、これまで治療困難とされてきた症例へのアプローチも、確実に変わりつつあります。
本シンポジウムでは、「心室不整脈治療の新時代」をキーワードに、今後の診療に革新をもたらすような最新の知見や臨床経験を広く共有したいと考えております。日々の実臨床での工夫、研究成果、あるいは未来を見据えた提案まで、多様な切り口を歓迎いたします。

Plenary Session 6
  英 語  
  PL06  
EFのカットオフ値再考―3学会合同ステートメントからひもとく次世代の心不全治療
Reconsidering EF cutoff values: The next generation of heart failure treatment unraveled from the joint statement of three academic societies
座 長:
絹川 弘一郎
富山大学 第二内科)

慢性心不全治療においてはこれまでEF40%と50%を区切りにHFrEF/HFmrEF/HFpEFと分類され、それぞれのカテゴリーでの推奨薬が定められてきた。もちろん、これは過去の臨床試験のエントリー基準を重視した結果であるが、最近HFmrEFの存在意義に対する疑問が強くなっており、むしろHFrEFとHF with normal EFの2つでいいのではないかという意見すら出てきている。日米欧の3心不全学会によるEFに対するコンセンサスステートメントが発表され、JCS/JHFS心不全診療ガイドラインにもその考え方が取り入れられた。
本セッションでは最新のEFに対する考え方を紹介いただくとともに、それに基づく次世代の心不全治療のあり方を議論したい。

Plenary Session 7
  英 語  
  PL07  
新時代を迎えたcardiac replacement therapy ―心臓移植とDTの未来
Cardiac replacement therapy in the new era- What will we see in heart transplantation and destination therapy?
座 長:
小野 稔
東京大学 心臓外科)

日本における心臓移植は増加傾向にあるものの、ドナーの更なる増加は不可欠である。5年を超える長期の待機期間のために、これまで植込み型補助人工心臓(iVAD)が移植待機に不可欠となっていた。しかし、2026年からは新たな移植配分システムが導入され、iVADが装着できない特殊な病態、両心補助症例、iVAD装着後遠隔期の特定の合併症例、再心臓移植例などがStatus 1Aとして待機最優先となる。iVADについては現在HeartMate 3(HM3)の寡占状態にある。HM3は完全磁気浮上システムの搭載などにより重篤な合併症を有意に減少されることが示されているが、遠隔期大動脈閉鎖不全症、遠隔期右心不全、ドライブライン感染症などの残された課題がある。さらに小児や小体格の成人への装着には制限がある。ケアギバー要件はデバイスの安全性の向上に伴って緩和されつつあるものの、課題は残されている。iVAD装着中は車の運転が禁止されているために地域によっては大きな行動制限が強いられる。世界ではさらに安全性と機能性の高いiVADや置換型人工心臓が臨床応用されている。日本への導入を視野に入れた議論を期待したい。

Plenary Session 8
  英 語  
  PL08  
心臓CTの新時代 -AI診断と次世代技術の未来を探る―
A New Era of Cardiac CT: Exploring the Future of AI Diagnosis and Next-Generation Technologies
座 長:
陣崎 雅弘
慶應義塾大学 放射線科)

近年、心臓CTは目覚ましい進化を遂げ、冠動脈狭窄評価に始まって、プラーク解析、虚血評価(FFR計測)、心機能評価、リスク層別化へと応用の幅を広げています。さらにAI技術の急速な進展により、撮影・画像再構成から診断・予後予測に至るまで、ワークフロー全体において自動化と精度向上が進んでいます。加えて、フォトンカウンティングCTのような次世代技術も登場し、これまで困難だった微細構造の描出やさらなる被ばく低減が現実のものとなりつつあります。
本プレナリーセッションでは、こうした技術革新が心臓の画像診断に与えるインパクトに注目し、臨床応用、技術開発、AIとの融合、将来展望といった多角的な視点から議論を深めたいと考えています。現場の課題に根ざした実践的な発表から、先進的な研究・開発に関する報告まで、幅広い内容を歓迎いたします。
本セッションを通じて、心臓CTの“これから”を共に考え、分野のさらなる発展に寄与できるものになれば幸いです。多くの皆様からの積極的なご応募を心よりお待ちしております。

Plenary Session 9
  日本語  
  PL09  
Low-risk ASに対するSAVRとTAVRの現在地
Current Perspectives on SAVR and TAVR for Low-Risk Aortic Stenosis
座 長:
白井 伸一
小倉記念病院 循環器内科)
 
田端  実
順天堂大学 心臓血管外科)

本セッションは低リスク大動脈弁狭窄症(AS)に対する治療として、外科的大動脈弁置換術(SAVR)と経カテーテル大動脈弁留置術(TAVR)の現状について議論を深める機会となります。
近年、TAVRのデバイスおよび手技の進化は目覚ましく、その適応は当初のハイリスク患者から中リスク、そして低リスクへと拡大してきています。複数の大規模臨床試験において、低リスクAS患者においてもTAVRはSAVRに劣らないアウトカムを示すことが報告されており、その安全性と有効性は確立されつつあります。
一方で、SAVRは長期成績が確立された標準治療であり、特に若年患者においてはその耐久性や将来的な再介入の可能性を考慮すると依然として重要な選択肢であるだけでなくTAVIにおいて懸念される術中合併症を避けうる治療でもあります。また、最近では低侵襲外科治療(MICS)によるSAVRが導入されたことで正中切開を必要としない外科手術も出現しておりより治療の選択が広がってきています。
本セッションでは、最新の臨床エビデンスに基づき、低リスクAS患者におけるSAVRとTAVRそれぞれの長所と短所、患者背景や併存疾患を考慮した適切な治療選択について、活発な議論が展開されることを期待しております。皆様の積極的なご参加をお待ちしております。

Plenary Session 10
  英 語  
  PL10  
Lp(a)研究の最前線
Frontiers in Lp(a) Research
座 長:
斯波 真理子
大阪医科薬科大学 循環器センター)

リポ蛋白(a)[Lp(a)]は、LDL様粒子にプラスミノーゲンに類似した構造を持つアポ(a)が結合したリポ蛋白であり、様々なメカニズムを介して動脈硬化性病変の成立に関与すると考えられている。近年はCopenhagen General Population StudyやUK Biobankなど多くの疫学研究やメンデルランダム化研究により、Lp(a)が独立した動脈硬化性疾患(ASCVD)の危険因子であり、さらには真のcausal factorであることが示唆されている。
Lp(a)を低下することにより、動脈硬化性心血管疾患を予防するという治療戦略が期待されるが、現在のところ有効な薬剤は存在しない。スタチンはLp(a)をやや上昇し、PCSK9阻害薬はわずかな低下にとどまる。現在、Lp(a)を標的とした核酸医薬の臨床開発が行われ、アウトカムスタディが進行中である。
Lp(a)の測定は保険診療になっているものの、限られた症例のみに行われているのが現状である。測定キット間の標準化に問題を残しており、日本人におけるLp(a)値と動脈硬化性心血管疾患との関連のエビデンスも十分ではない。Lp(a)についての医療従事者および患者さんへの知識の啓発も今後の課題である。
本プレナリーでは、我が国におけるLp(a)にまつわる諸問題に対して基礎および臨床研究の最前線を議論し、来るべきLp(a)低下療法時代の第一幕としたい。

Plenary Session 11
  英 語  
  PL11  
循環器疾患管理と遠隔診療
Cardiovascular disease management and telemedicine
座 長:
高木 俊介
平塚市民病院 循環器内科)

我が国の人口動態推移は高齢化の一途をたどっており、それと合わせて地方の過疎化、医療提供体制の衰退が大きな社会問題となっている。また医師の都市部への偏在により、都市部と地方との間での医療レベルの格差の拡大も懸念されている。こうした医療環境の変遷や新たな医療ニーズが出現する中で、技術の進歩と相俟って医療DXの推進・導入が重要視されている。中でも情報通信技術(ICT: information and communication technology)の飛躍的な進歩により、ICTを用いた遠隔診療が注目されている。遠隔診療には患者の利便性の向上、早期介入の可能性、医療リソースの効率化などの利点が挙げられる。また遠隔診療は大きく二つのカテゴリーに分けられる。一つはICTを用いての患者診療であり(Doctor to Patient)、もうひとつは医師による医師に対しての診療サポートや新たな医療技術の指導・教育である(Doctor to Doctor)。こうしたICTを駆使しての遠隔診療が、我々が従事する循環器疾患診療領域においても一部には保険診療の導入と相俟って広がりを見せている。具体的な事例としては、今日の心臓植込型デバイスには、デバイスの機能を監視し、不整脈イベントや生理学的パラメータなどの情報を医療従事者に転送する遠隔モニタリング機能が備えられている。これらの情報に基づいた医師の判断により、外来の臨時受診の削減、入院期間の短縮、および生命予後改善効果などが報告されている。
このように循環器疾患管理における遠隔診療の導入は近年の医療技術の進化と医療ニーズの変化により急速な発展を遂げている。このセッションでは、国内外におけるこの領域の先駆者による最新の話題提供の場としたい。

Plenary Session 12
  日本語  
  PL12  
Fontan術後遠隔期の肝臓病変を考える
Fontan Circulation: Current Understanding and Management of FALD
座 長:
大内 秀雄
国立循環器病研究センター 成人先天性心疾患センター)
 
考藤 達哉
国立健康危機管理研究機構 国立国際医療研究所 肝炎免疫研究センター)

フォンタン手術の導入で機能的単心室循環患者の生命予後は飛躍的に改善した。しかし、フォンタン術後の循環が健常者と異なる特異な循環であり、体静脈圧(中心静脈圧)上昇、低心拍出量と軽度の低酸素血症を特徴とする両心室不全からなる慢性心不全の病態である。そのため術後に様々な合併症を引き起こす。中でも慢性的な静脈圧上昇は肝臓鬱血から様々な肝臓病に至り、中でも肝線維化の進行による肝硬変や肝癌の発症はフォンタン術後患者の予後悪化と関連するとされる。最近の研究から、これらの肝病態の発症・進展の機序が肝臓の炎症ではなく肝鬱血を基盤とすること明らかにされつつある。このような新たな知見の積み上げられている現状で、担当医は実臨床でどのようにフォンタン循環関連肝臓病(FALD)を診断、管理するのがフォンタン患者の生命予後を含めた長期QOL改善につながるかを常に意識した判断が求められる。このような背景から今回は最新の知見を基に循環器および肝臓専門医がFALDをどのように理解し、どのように治療、管理するべきかを議論したい。

Plenary Session 13
  英 語  
  PL13  
右心不全の基礎から臨床
From Basics to Clinical Practice in Right Heart Failure
座 長:
阿部  弘太郎
九州大学大学院医学研究院 循環器内科学)
 
福本 義弘
久留米大学医学部内科学講座 心臓・血管内科部門)

右心不全は、長らく左心不全の陰に隠れ、循環器領域においてその重要性が十分に認識されてこなかった領域です。しかしながら、肺高血圧症、慢性肺疾患、左心系疾患では、右心不全が予後規定因子であり、その病態生理の理解と治療戦略の構築が喫緊の課題となっています。
本セッションでは、右心不全の進展機序、早期診断に関する画像診断やバイオマーカー、さらには臨床における治療戦略に至るまで、包括的に右心不全を捉えることを目指しております。基礎研究と臨床現場、それぞれの専門家による講演を通じて、右心不全に関する知見が一層深まることを期待します。

Plenary Session 14
  英 語  
  PL14  
HFpEFの基礎研究と治療開発の最前線
Frontiers in Basic Research and Therapeutic Development for HFpEF
座 長:
尾池 雄一
熊本大学 分子遺伝学講座)

近年、高齢社会の到来に伴い、左室駆出率が保たれた心不全(HFpEF: Heart Failure with preserved Ejection Fraction)の患者数が世界的に増加しています。日本においても、全心不全患者のうちHFpEFが占める割合は、左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)を上回る状況となっています。HFpEFはHFrEFと同様に予後不良であるにもかかわらず、その病態が多様のため基盤となる病因解明がいまだ十分でないことから、予後を改善する有効な治療法が乏しいことが喫緊の課題です。
HFpEFは病態の異質性が高い症候群であるため、発症機構に立脚した治療を開発するためには、「その表現型の誘導によってHFpEFが再現できるHFpEF発症に共通する背景的表現型(症候)を明らかにすること」、次に「その表現型がもたらす基盤病態への介入によってHFpEFの発症を抑制・改善できること」が重要だと考えます。2019年Natureに、欧米で多く認める肥満を背景とするHFpEFが肥満マウスにおける代謝ストレスにL-NAMEによるメカニカルストレスを付加することで再現できることが報告されたことを契機に、肥満型HFpEFの病因解明と創薬研究が加速度的に進んでいます。さらに日本で多く認める非肥満型HFpEFの病因解明基礎研究も活発化しています。
本セッションでは、HFpEFの病因解明および治療開発の基礎研究に取り組む新進気鋭の研究者の皆様をお招きし、最先端の研究成果をご紹介いただきます。本企画が、HFpEF治療の未来を展望する貴重な機会となることを願っております。

Plenary Session 15
  英 語  
  PL15  
心血管系における細胞間コミュニケーションとマルチオミックス
Multiomics view of cardiovascular cellular communication in health and disease
座 長:
眞鍋 一郎
千葉大学大学院医学研究院 疾患システム医学)

言うまでもなく心臓や血管では、常に構成細胞がコミュニケーションすることにより恒常性が維持されている。近年、心臓においても非心筋細胞の役割に関する研究が進み、心筋細胞と非心筋細胞、あるいは非心筋細胞間の相互作用の生理学的・病理学的役割が明らかになってきている。特にシングルセル解析や空間トランスクリプトーム解析等の技術革新は、特定の場所や時間における細胞間コミュニケーションの解析を飛躍的に進歩させるインパクトを持っている。実際、従来の手法では同定できなかった新たな細胞サブタイプや新規細胞種を含めた細胞社会の多様性の理解も急速に進んでいる。また、トンネリングナノチューブや細胞間ミトコンドリア移送等、新たなコミュニケーション様式も同定されている。さらに、多数のヒトデータの集積やマルチオミクス統合解析技術の開発もあいまって、組織における細胞社会のダイナミクスを解き明かすことが可能となってきている。本セッションでは、多様な技術により心血管系の生理機能あるいは病態における細胞間コミュニケーションの生物学的意義に迫るご講演をいただき、最新の知見を共有するだけでなく、診断・治療法への展開や新たな疑問、また今後求められる技術についても議論したい。

Plenary Session 16
  英 語  
  PL16  
循環器病学におけるAIの進化と生成技術の活用
Advances in AI and the use of generative technology in cardiology
座 長:
小室 一成
国際医療福祉大学大学院 循環器内科)

本プレナリーセッションでは、近年急速に発展するAI技術が循環器領域に与えるインパクトと、その臨床・研究・教育への応用可能性について多角的に議論します。特に、心電図や心エコー、CT・MRIなどの医用画像の自動解析、洞調律心電図による心房細動の予測、電子カルテデータを用いたリスク層別化や予後予測モデルの構築など、ディープラーニングを中核とするAIアルゴリズムの実装例を紹介します。また、自然言語処理や強化学習などの新たな技術が、診療支援ツールやガイドラインの個別化に貢献しつつある現状についても触れます。また近年注目される生成AIの医療分野における活用にも焦点を当てます。例えば、症例提示や教育コンテンツの自動生成、患者向け説明文書、研究仮説の生成やプロトコル構築の効率化など、医療者の創造的業務をサポートするツールとしての可能性を検討します。さらに、マルチモーダルデータを統合的に扱う次世代AIの展望についても論じます。一方で、AI活用に伴う倫理的・社会的課題、医療現場への導入における制度的・心理的障壁、データの質・偏り・プライバシー問題など、慎重な議論を要する側面も無視できません。こうした課題に対して、責任あるAI利活用のための共通基盤の構築を目指します。
本シンポジウムが、AIと生成技術を積極的に取り入れた循環器医療の未来像を共有し、新たな研究と臨床実践の橋渡しとなる契機となることを期待しています。

  シンポジウム
Symposium 1
  英 語  
  SY01  
冠動脈不安定プラークの診断・治療のフロンティア
Frontier of Theranostics for Coronary Vulnerable Plaques
座 長:
上村 史朗
川崎医科大学 循環器内科)
 
前原 晶子
コロンビア大学)

PREVENT試験は、予防的PCIが長期的な心血管イベントを抑制することを初めて示したランダム化試験であり、その効果は心筋梗塞の予防ではなく、血行再建の減少によるものであった。病変単位での個別化治療の可能性を示したといえる。
近年、冠動脈CTとAIを組み合わせた全心臓プラーク解析が、冠動脈疾患の生涯管理において重要な役割を担う可能性が示されている。脆弱プラークの特徴を詳細に把握し、集中的な薬物治療と併用することで、疾患進展の動的モニタリングが可能となることが期待される。さらに、炎症やプラーク内出血などの残存リスクも、先進的なイメージング技術により可視化が進みつつある。
本セッションでは、冠動脈疾患の進化する管理戦略の中で、不安定プラーク検出の現状と将来展望を論じる。

Symposium 2
  日本語  
  SY02  
AIを虚血性心疾患診療に活かす―AIの今と未来を見据えて―
Applying AI in the Treatment of Ischemic Heart Disease — Looking at the Present and Future of AI —
座 長:
石井 秀樹
群馬大学 循環内科)
 
中川 義久
滋賀医科大学 循環器内科)

医療分野にも急速にAI技術が導入されている。虚血性心疾患診断に近年汎用されているFFR-CT、FFR-angioなど、判定の過程はブラックボックスとなっているがAIを利用した技術である。経皮的冠動脈インターベンションなどで使用するIVUS、OCTなどの読影にも実用化されつつある。
遠隔医療などで使用するデジタル聴診器はAI診断技術も実装され、日常診療で行う聴診にとってかわられるような時代がくるかもしれない。また、最も汎用される検査である心電図でも、AIによる解析により虚血性心疾患に対する診断と予後を想定できるシステムも大きな発展を遂げている。これらの技術は、遠隔医療のみならず医師の人手不足を補う技術としても期待されるものである。
虚血性心疾患では、様々な臨床研究もおこなわれている。多忙な医師が研究計画書などを作成することは非常に困難なことがあるが、この点でAI活用が非常に期待される。レジストリー登録、DPCデータ登録などへの応用も検討される。
本セッションでは、AIについて虚血性心疾患を中心とした循環器診療について現在実装されている技術を発表していただきながら、5年・10年後の未来図を想像してみたい。

Symposium 3
  日本語  
  SY03  
急性期脳梗塞救急診療の最新の進歩を多角的に解析する
Analyzing the Latest Advances in Emergency Treatment for Acute Ischemic Stroke
座 長:
吾郷 哲朗
九州大学 病態機能内科学)
 
平野 照之
杏林大学医学部 脳卒中医学)

2005年のrt-PA静注療法、2015年の血管内カテーテル血栓除去療法の保険収載により、脳卒中急性期診療は劇的に変貌した。“Time is brain”―再灌流療法の進歩は、迅速な診療体制構築の必要性を再認識させ、脳卒中・循環器病対策基本法を背景に全国的な体制整備が進んでいる。近年では画像解析ソフトやAI技術を用いた救急トリアージの導入が始まり、診断から治療選択までを支援するDecision-makingツールとしての活用が注目されている。
脳梗塞の再灌流療法は、適応時間の延長や症例選別の柔軟化が進んでいる。また、抗血栓療法でもDOACや新規抗血小板薬の登場により、超急性期からの再発予防治療の最適化に関するエビデンスが蓄積されつつある。一方、がん分子標的薬などの進展で予後が飛躍的に改善したがん患者では、がん関連脳卒中が新たな臨床課題となっている。
本セッションでは、(1)地域医療に根差した診療体制、(2)AIを活用した診断・治療支援、(3)再灌流療法の最新知見、(4)抗血栓療法による再発予防、(5)がん関連脳卒中、(6)機能予後の予測手法といった観点から、最新の脳梗塞救急診療の現状と課題を多面的に解析し、今後の展望を議論したい。

Symposium 4
  日本語  
  SY04  
血管機能評価をどう生かすか?
How can we utilize the vascular functional assessment?
座 長:
佐田 政隆
徳島大学 循環器内科学)
 
田中 敦史
佐賀大学 循環器内科)

心血管疾患や生活習慣病などの臨床現場において、血管機能の定量的評価は心血管疾患のリスクや予後予測に加えて治療効果判定にも活用されることが期待されてきた。さらに近年では、生理学的血管機能検査法による血管不全に対する診断基準が提唱され、臨床現場における血管機能評価の普及促進に寄与している。同時に、血管は血液を全身に循環させるためだけの器官ではなく、種々のホルモンや液性因子を分泌し、全身の情報伝達系をダイナミックかつ繊細に調整する人体最大の臓器であることから、血管機能やその調節機構を理解することは、全身の臓器や細胞連関メカニズムの解明を通じて、多岐にわたる疾患や病態の理解や治療法開発などへの応用につながることが期待される。そのため、血管機能を単に測定するだけでなく、血管機能の評価を通じて複雑な血管ネットワークや血管不全の病態の謎を紐解く鍵としてとらえ、さらには日常診療へ還元していくための科学的知見の蓄積が求められている。
そこで本シンポジウムでは、血管機能評価の最新の研究成果や実臨床での応用例を交えながら、血管機能評価を臨床や研究に今後どのように活かしていくべきかについて議論したい。

Symposium 5
  日本語  
  SY05  
ウェアラブル心電計、AIを用いた不整脈診療の最前線
Latest advancements of arrhythmia diagnosis and treatment using wearable ECG devices and AI technology
座 長:
清水  渉
新東京病院  心臓内科)
 
池田 隆徳
東邦大学大学院医学研究科 循環器内科学)

近年、装着型(ウェアラブル)心電計が不整脈診療に活用されるようになった。時計型心電計(スマートウォッチを用いた心電計)はその代表といえる.これ以外にも、ネックレス型、ブレスレット型、眼鏡型、指輪型の心電計があり、さらには着衣型心電計など様々なタイプがある。不整脈の発作回数の少ない患者では、常に携帯型心電計を持ち歩くことはできず、スマートウォッチは習慣的に身に付けることができるため、記録のタイミングを逃さない点でメリットとなる。一方で、装着の具合や体動によるノイズの影響は装着型心電計に共通したデメリットとなっている。重要なことは、スマートウォッチで記録した心電図は、あくまでも不整脈診断の補助としてしか活用できず、この記録のみで不整脈を診断してはならないことが、機器の添付文書に明記されている。このようなウェアラブル心電計を不整脈診療においてどのように活用するかが議論されている。もう1つの話題として、AI技術を心電計に搭載した装置が医療機器として発売され、不整脈の予測に活用され始めている。AI技術を搭載した12誘導心電計は、隠れ心房細動のリスクを推定する機能が装備されている。また、AIを用いて解析する携帯型(貼付型)心電計が医療機器として最近認可され、今後、心房細動などの不整脈をより詳しく分析できるようなる。
本シンポジウムでは、このようなウェアラブル心電計あるいはAI技術を用いた心電図の不整脈診療における活用あるいは管理のしかたについて広く議論したい。

Symposium 6
  日本語  
  SY06  
進化する不整脈デバイス治療
Evolution and innovation of implantable cardiac devices for treating cardiac arrhythmias
座 長:
中野由紀子
広島大学 循環器内科学)
 
野田  崇
近畿大学病院 心臓血管センター)

ペースメーカが臨床使用されてから60年以上が経過し、植込み型除細動器(ICD)、心臓再同期療法(CRT)、左心耳閉鎖デバイス、植込み型ループレコーダー(植込み型心臓モニター)、遠隔モニタリングなどが開発され、不整脈治療に用いられている。近年の技術革新により、DDD型リードレスペースメーカや胸骨下リードを使用する血管外ICDシステム(EV-ICD)の使用が可能となっている。また、刺激伝導系ペーシングの有用性やデバイスに搭載された様々なアルゴリズムによる効果なども報告されている。一方で、進化を続ける不整脈デバイス治療に関して、「どのような患者で」「どのような時に」「どのような機器を」「どのような方法で」使用するかの詳細については、特に新しく出てきた機器に関して十分にわかっていない。
そこで、本セッションでは、この分野をリードする先生方から、不整脈デバイス治療の最新知見についてご発表を頂き、深く議論を行うことで、進化する不整脈デバイス治療についての実臨床における最適な使用法を模索したい。

Symposium 7
  日本語  
  SY07  
心不全は本当に予防できるのか? ―ステージA・Bからの介入戦略を再考する
Can we really prevent heart failure? – Rethinking approaches to Stage A and B heart failure
座 長:
桑原宏一郎
信州大学 循環器内科)
 
北井  豪
国立循環器病研究センター 心不全・移植部門)

心不全は、その薬物・非薬物治療の目覚ましい進歩にもかかわらず、依然として予後不良の疾患であり、医療経済的な観点からも問題となっている。このような中で、心不全の発症を予防することの意義がますます認識されつつある。心不全の発症リスクがあるステージA(心不全リスク: at risk)、また、構造的もしくは機能的な異常を有するが心不全症状のない状態として定義されるステージB(前心不全: pre heart failure)の段階で適切に介入することが、ステージCへの進展すなわち心不全の発症の予防につながるか、という問いは挑戦的だが極めて重要なテーマである。
特に、ステージBは心不全発症を予防する鍵となるフェーズであると考えられるが、その診断基準やスクリーニング方法、介入の有効性については、現時点で十分なエビデンスが蓄積されているとは言い難い。
本シンポジウムでは、ステージAおよびBに着目し、バイオマーカー・画像診断・オミックス解析などによるリスク層別化、治療介入のエビデンスや限界に関して幅広く議論し、心不全診療の新たなパラダイムとしての“予防”に対する戦略を共有する場としたい。

Symposium 8
  日本語  
  SY08  
心臓アミロイドーシス治療の最前線
Cutting Edge of Clinical Practice for Cardiac Amyloidosis
座 長:
猪又 孝元
新潟大学 循環器内科)
 
山野 哲弘
京都府立医科大学 感染制御・検査医学 / 循環器内科学)

骨シンチとM蛋白検出を軸とした診断アルゴリズムの確立と、有効な治療法、特にトランスサイレチン型心アミロイドーシス(ATTR-CM)に対するタファミジスの登場で、心アミロイドーシスの臨床は劇的に変化した。一方、診断数の増加や高額な疾患修飾薬が相俟って、超高齢患者や無症状早期例に対する治療適応の有無など新たな臨床的ジレンマが生じている。加えてこの2025年、疾患修飾薬の導入患者要件として組織学的診断が必須でなくなり、今後さらに治療適応患者の拡大が予想される。同年5月には第二世代四量体安定化薬であるアコラミジスが保険承認され、同年中には低分子干渉RNA(SiRNA)がATTR-CMに対し適応拡大する予定であり、個々の患者に対する最適な薬剤選択が新たな臨床的課題となろう。
これらのことから2025年は、わが国におけるATTR-CM臨床の第二幕の幕開けとなることが予想される。
本シンポジウムでは、ATTR-CMの診断と治療の最新知見を共有するとともに、日常診療における新たな課題や今後の展望について最前線で活躍される先生方とともに意見を交換する。

Symposium 9
  日本語  
  SY09  
心筋症診療の新展開
New Developments in the Diagnosis and Treatments of Cardiomyopathy
座 長:
北岡 裕章
高知大学 老年病・循環器内科学)
 
坂田 泰史
大阪大学大学院医学系研究科 循環器内科学)

心筋症は、冠動脈疾患や弁膜症などの明らかな原因がなく、心筋自体の異常により心機能が低下する疾患の総称である。近年、この心筋症領域には、診断から治療に至るまで新たな概念や技術が導入されている。
まず定義の点では、本邦では「原因疾患が特定できない場合に心筋症と診断する」という特発性の概念が長らく用いられてきた。一方、欧州では、まず形態によって心筋症を分類し、そこからさらに原因に基づいた分類を行うというアプローチが提唱されている。
原因検索の手法としても進歩がみられる。従来の画像診断や病理所見に加えて、人工知能(AI)を用いることで、これまでヒトの目では識別できなかった差異の抽出が可能となりつつある。加えて、ゲノム医療の進展により、1人の患者やその家族から全エクソーム、さらには全ゲノム情報を取得することが現実となりつつあり、その情報をもとに植え込み型除細動器(ICD)の適応判断が行われる時代が到来している。
治療面においても、従来の心不全治療が全身を対象にしていたのに対し、心筋組織や細胞そのものを標的とした新たな治療法が登場し、実用化が進んでいる。さらに、ダノン病やデュシェンヌ型筋ジストロフィーなど、原因となる遺伝子を直接標的とする治療法も試みられ始めている。
このように、心筋症は今、循環器領域でも最も注目されるテーマの一つである。急速に進化する診療の動向を捉えつつ、一方で倫理的・経済的課題も多いこの分野について、次の時代に向けた日本の心筋症診療のあり方を考えていきたい。

Symposium 10
  日本語  
  SY10  
心筋症診断の最前線
Cutting edge of cardiomyopathy managements
座 長:
泉 知里
国立循環器病センター 心不全・移植部門)
 
笠間 周
滋賀医科大学附属病院 臨床研究開発センター)

心筋症に対する治療薬の開発は目覚ましく、この数年、多くの新規治療薬が導入されてきたが、新規治療薬の導入により、早期診断の必要性が高まっている。また、病態の把握、治療に対する反応性の予測や、突然死や心不全イベントなどのハイリスク患者の抽出による患者の層別化を行うことが心筋症の予後改善に繋がる。
このような心筋症診療において、画像診断は大きな役割を果たしてきた。近年、それぞれのイメージングモダリティにおける画像技術の進歩、さらに複数のモダリティを補完的に用いることにより、心筋症診療における画像診断重要性は更に高まっている。
本セッションでは、心筋症の早期診断やリスク層別化において、あらゆる角度から多彩な情報を提供してくれる画像診断の現在の立ち位置、そして今後の方向性について議論したい。

Symposium 11
  日本語  
  SY11  
イメージングをHFpEF診療に活かす
Utilizing Imaging in the Management of HFpEF
座 長:
瀬尾 由広
名古屋市立大学 循環器内科)
 
大倉 宏之
岐阜大学大学院医学系研究科 循環器内科)

本シンポジウム「イメージングをHFpEF診療に活かす」では、左室駆出率が保たれた心不全(HFpEF)という、定義・病態・予後のすべてが多様な症候群に対し、画像診断が果たす役割とその将来展望について議論を深める。HFpEFは、高齢者や女性、肥満、高血圧、糖尿病、心房細動など多彩な併存症を背景に発症し、単一の指標やアプローチでは診断が困難なことが多い。このようにHFpEFは難治性疾患であり、近年ではその早期診断の重要性が強調されている。安静時には左室駆出率をはじめとする主要指標が正常範囲にあるにもかかわらず、運動時には顕著な息切れやうっ血症状が出現する症例が多く、従来の安静状態での評価のみでは病態を見逃すリスクがある。このため、心筋ストレイン解析、三次元エコーなどを併用した運動負荷心エコーは重要な診断法と考えられる。一方、心筋の組織性状にも関心が高まり、MRIによるT1マッピングなどの技術が注目されている。さらに、心筋微小循環障害はHFpEFの背景病態として重要視されつつあり、血管内皮機能不全や冠微小血管の血流応答異常は、早期の心機能障害や予後不良の予測に関与する可能性がある。これらを非侵襲的に捉える技術の臨床応用にも期待が高まっている。
本セッションでは、構造と機能、安静と負荷、マクロとミクロという多層的視点からHFpEF診療の未来像をともに描き出し、画像モダリティの融合的活用の可能性について議論したい。

Symposium 12
  日本語  
  SY12  
一次性MRに対する治療戦略:低侵襲医療を踏まえたハートチームの意思決定と展望
Strategic Approaches to Primary MR: Heart Team Decision-Making and Future Directions in the Era of Minimally Invasive Therapy
座 長:
森野 禎浩
岩手医科大学 内科学講座循環器内科分野)
 
坂口 太一
兵庫医科大学 心臓血管外科)

一次性僧帽弁閉鎖不全症(primary MR)に対しては、外科的僧帽弁形成術が第一選択とされ、MitraClipに代表される経皮的僧帽弁接合不全修復術(transcatheter edge-to-edge repair: TEER)は、外科的手術のハイリスク症例や高齢患者を対象とした治療選択肢として位置づけられています。しかし近年、デバイスの改良および手技の進歩によりTEERの治療成績は大きく向上しており、その適応拡大に向けた議論が活発化しています。一方外科的僧帽弁形成術は、優れた長期成績により一次性MRに対する標準治療としての地位を確立しており、無症状かつ正常心機能を有する症例においてもクラスIIaの推奨がなされています。さらに、近年では肋間小開胸による胸腔鏡下弁形成術、いわゆるMICS(minimally invasive cardiac surgery)が普及しつつあり、高齢者やハイリスク症例に対しても低侵襲な外科的アプローチが現実的な選択肢となってきました。
今後は、「ハイリスク vs ローリスク」という単純な二分法を超えて、弁形態、年齢、併存疾患、長期予後、QOLへの影響など、より多角的な要素を考慮した個別化医療が求められます。
本セッションでは、心臓外科および循環器内科のエキスパートが、それぞれの立場から最新のエビデンスと臨床経験をもとに、一次性MRに対する最適な治療戦略について多角的に議論します。MICS MVPとMitraClipが、単なる「競合的選択肢」ではなく、「補完的選択肢」としていかに共存しうるのか、将来的展望も含めた活発なディスカッションを期待しています。

Symposium 13
  日本語  
  SY13  
三尖弁閉鎖不全を多角的に検討する。~いつ、どのように治療するのがベストか?~
座 長:
石津 智子
筑波大学 循環器内科)
 
松宮 護郎
千葉大学 心臓血管外科)

孤立性重症三尖弁閉鎖不全症(TR)は長期予後不良な病態であることが明らかにされ、治療介入の適応、方法に注目が集まっている。侵襲的治療適応の判断において、弁の一次性・二次性病変の関与や程度、右心不全による肝腎をはじめとするうっ血性臓器障害、右室機能障害の重症度やその可逆性等が基準となると考えられるが、明確なコンセンサスは得られていない。バイオマーカーや種々の画像診断、およびその組み合わせの有効性も報告されつつあり、新たな知見の蓄積による適応の確立が期待される。治療に関しては、薬物療法と開心術に加え、カテーテル治療の臨床応用が近くわが国でも始まる予定であり、その使い分けに関して議論が始まっている。カテーテル治療の解剖学的適応条件、およびその治療効果に関しては、海外の知見をもとに我が国での展望につき議論したい。開心術に関しては、リスクが高いとされてきたが、重症例に対するより確実な形成術、低侵襲手術などの発達があり成績は向上してきている。治療法の選択肢が増えたことにより、より早期の介入による治療成績の向上がもたらされることが期待される。

Symposium 14
  日本語  
  SY14  
JSH2025で循環器診療はどのように変わるのか
How does JSH2025 change cardiovascular medicine?
座 長:
大屋 祐輔
沖縄北部医療財団)
 
苅尾 七臣
自治医科大学 内科学講座 循環器内科学部門)

JSH2025が2025年の8月に発表された。また、日本高血圧学会では、朝の血圧を測定し、130/80mmHg未満を目指す「朝活」キャンペーンを行っている。高血圧が脳心血管病のリスクであることは明確に示され、かつ、降圧がそれらを抑制することが証明されている。しかし、国民の血圧や患者の血圧は必ずしも望ましいレベルには下がっていない。今回のガイドラインでは降圧治療の実践に力点を置いて、内容はシンプルに実地医家が理解できる内容とすること、最新のエビデンスに対してシステマティックレビューを行い合理的な推奨を作っていることなど、従来の方針をさらに徹底させている。この中で、循環器領域と関連するトピックとしては、1)年齢にかかわらず目標降圧レベルを130/80mmH未満とした、2)降圧治療のステップを改変して、より早期の薬物の増量や併用を行うことを強調した、3)実地医家のために、最初に投与するCa拮抗薬、ARB、ACE阻害薬、サイアザイド利尿薬の使い分けをコラムで示した、4)必要な患者に対してβ遮断薬や利尿薬の利用を促進するように言及している、5)ARNIやアルドステロン拮抗薬関係の降圧治療薬としての位置づけを明確にした、6)HFpEF合併高血圧の目標降圧レベルを初めて明らかにした、7)降圧のための運動療法をアップデートした、などである。これらの話題を含めて演題を応募します。また、国民や患者に対して、ガイドラインのメッセージがより届くような戦略についての提案も歓迎する。

Symposium 15
  英 語  
  SY15  
Fallot四徴症のライフロングマネジメント
Life-long management of Tetralogy of Fallot
座 長:
赤木 禎治
心臓病センター榊原病院 循環器内科)

Fallot四徴症は代表的なチアノーゼ性先天性心疾患であり、かつては乳幼児期に致死的な疾患であった。本疾患に対する内科的・外科的治療は大きく進歩し生命予後は著しく改善し、多くの患者が成人期を迎えるようになった。しかし、初回手術では肺動脈弁を切開・切除することが多く、術後遠隔期には肺動脈弁閉鎖不全(PR)を主体とする右室流出路不全が高率に出現する。長期にわたるPRは右室容量負荷を惹起し、右室拡大、心機能低下、心室性不整脈のリスクを高め、生命予後にも影響を及ぼすため、タイミングを見極めた再手術(肺動脈弁置換)が必要となる。近年、外科的右室流出路再建術に加えて、経皮的肺動脈弁置換術(TPVI: transcatheter pulmonary valve implantation)が導入され、低侵襲での治療が可能となってきた。TPVIは特に再手術リスクの高い患者にとって有用であり、患者のQOL向上にも貢献することが期待されている。このような治療戦略が可能となった現在、小児期から成人期にわたるライフロングマネジメントを再評価し、TPVI適応の拡大や弁機能の長期成績の検証とともに、積極的な不整脈管理、新たな突然死予防策について国際的な議論を深めたい。

Symposium 16
  日本語  
  SY16  
循環器領域における性差医療
Gender-specific medicine in the field of cardiovascular medicine
座 長:
河野 宏明
熊本大学大学院生命科学研究部 健康増進学)
 
落合 由恵
地域医療機能推進機構 九州病院 小児心臓血管外科)

我が国でも女性と男性の生物学的な性と社会的な性を考えた診療を社会が求め始めています。2010年「循環器領域における性差医療に関するガイドライン」は、日本で初めて性差に着目した画期的な診療指針でありました。時代の変化に伴い多様性を考慮した医療の重要性が増してきています。ヒトの性は Y 染色体上の性決定領域(sex determining region on the Y: SRY)によって決定されます。外性器はアンドロゲンの働きにより男性型に、その働きかのないものは女性型に分化することが知られています。しかしながら、戸籍の性は外性器の形のみによって決定されることが多いと思います。2024年には「多様性に配慮した循環器診療ガイドライン」が発表されました。
本シンポジウムでは、心血管領域における男女(あるいは雌雄)の性に着目した臨床および基礎研究に加えて、性染色体異常疾患や性ホルモン作用異常疾患の心血管系疾患およびその治療、トランスジェンダーや人生のライフステージ(young people/pregnancy/old people)に関する心血管系疾患およびその治療に、各病態における薬物治療などについても広く学びたいと思っております。多くの研究者、医療者の応募をお待ちいたしております。

Symposium 17
  英 語  
  SY17  
老化のメカニズムから加齢変容を探る
Exploring Age-Related Transformation through the Mechanisms of Aging
座 長:
南野 徹
順天堂大学大学院医学研究科 循環器内科)

いま、心血管疾患を“老化”という軸から再定義することが、循環器医療における次のブレークスルーを生む鍵となっています。体細胞変異の蓄積やclonal hematopoiesis(CHIP)は、動脈硬化や心不全の独立したドライバーとして注目されており、これらの知見は従来のリスクモデルでは説明しきれない病態メカニズムを浮かび上がらせています。
細胞老化に伴うSASPの慢性放出が全身性の炎症状態――inflammaging――を形成し、免疫老化とも絡みながら、心血管系の構造と機能を静かに、しかし確実に蝕んでいく。こうした変化は、加齢を生物学的プロセスとして捉える視点を私たちに強く突きつけます。
一方、epigenetic clockを用いた老化度の定量化や、老化細胞を標的としたsenolyticsの開発は、老化制御が臨床応用の射程に入ったことを意味します。今や老化研究は、基礎と臨床を繋ぎ、社会実装へと向かう段階にあります。
本シンポジウムでは、老化の分子基盤、病態変容のダイナミクス、さらには革新的治療に至るまで、常識を揺るがす視点と、先端を切り拓く研究の発表を広く歓迎します。
老化を読み解き、変容を制御する――その先にある循環器医療の新しい地平を、ともに切り拓いていきましょう。皆さまからの挑戦的なご応募をお待ちしております。

Symposium 18
  日本語  
  SY18  
がん治療に関連する心血管毒性アップデート -Onco-Cardiologyガイドラインより-
Update of cardiovascular toxicity related to cancer therapy
座 長:
赤澤  宏
東京大学大学院医学系研究科 循環器内科学)
 
矢野 真吾
東京慈恵会医科大学 腫瘍・血液内科)

腫瘍循環器学は、最適ながん治療を安全に遂行するために循環器科医とがん治療医が協働で行う学際領域である。心血管合併症を適切に管理することによりがん治療を継続し、患者の生命予後と生活の質の改善を目指す。ダウノルビシンは1970年に、ドキソルビシンは1975年より使用されるアントラサイクリン系抗がん薬で、悪性リンパ腫、急性白血病、乳がんなどのがん腫に対して標準治療として用いられている。高い抗腫瘍効果を示す一方、骨髄抑制、消化器毒性、がん治療関連心機能障害(cancer therapy-related cardiac dysfunction: CTRCD)などの副作用を来すことが知られる。アントラサイクリン系薬剤は酸化ストレスなどにより直接心筋障害を惹起するため非可逆性になることが多く、CTRCDを発症すると患者のQOLは著しく低下する。さらに、アントラサイクリン系薬剤の投与継続が困難になるため、原疾患の予後にも影響を及ぼす。がん治療医は抗がん薬の累積投与量を遵守し、CTRCDの早期診断と早期治療に努める必要がある。また、がん薬物療法の進歩に伴い、可逆性の心毒性をきたすHER2阻害薬やカルフィルゾミブ、劇症型心筋炎を発症する免疫チェック阻害薬、不整脈または肺高血圧を誘発する分子標的薬、さらに虚血心疾患、血栓塞栓症、心膜疾患などがん治療関連心血管毒性(cancer therapy-related cardiovascular toxicity: CTR-CVT)を来す様々な薬剤が実臨床で使用される。がん治療医は薬剤の特性に応じた適切なCTR-CVTの管理が求められる。
本シンポジウムではがん治療に関連するCTR-CVTの最新の知見を議論する。

Symposium 19
  日本語  
  SY19  
JRC蘇生ガイドライン2025の主な改訂点は?
What are the major updates in the JRC Resuscitation Guidelines 2025?
座 長:
田原 良雄
国立循環器病研究センター 心臓血管内科/救急部)
 
野々木 宏
静岡県立大学 薬学部)

5年ごとに改訂される日本蘇生協議会(Japan Resuscitation Council: JRC)蘇生ガイドラインが、2026年3月に発表される。今回は新規に心原性ショックと緊急治療を要する不整脈の作業部会が活動を開始した。一次救命処置(BLS)、二次救命処置(ALS)、急性冠症候群(ACS)、心原性ショック(CS)、緊急治療を要する不整脈(Arrhythmia)の担当者から最新のガイドラインのトピックについて話題を提供する。

Symposium 20
  日本語  
  SY20  
循環器救急におけるプレホスピタル心電図の現状と展望
Prehospital Electrocardiography in Cardiovascular Emergencies: Current Status and Prospects
座 長:
藤田 英雄
自治医大学附属さいたま医療センター 循環器内科)
 
竹内 一郎
横浜市立大学 救急医学/高度救命医療センター)

近年、循環器救急における診療の質の向上および時間短縮、ひいては臨床転帰の改善を目的として、プレホスピタル12誘導心電図(phECG)の活用が全国的に注目されております。なかでもST上昇型心筋梗塞(STEMI)に対しては、発症早期からの心電図記録および迅速な医療介入により、予後改善効果が明確に示されており、我が国においても救急隊によるphECGの記録と医療機関への伝送体制の整備が各地で進みつつあります。しかしながら地域医療体制や救急医療システム、ICT基盤の整備状況によって運用に差異が生じているのが現状です。更には、非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)や不整脈など、他の循環器疾患における有用性の検証、診療現場における標準化、医療施設間連携、消防救急機関との情報共有や教育体制の構築、さらには行政との連携を含めた包括的なアプローチが求められています。
本シンポジウムでは、循環器救急医療のさらなる発展と最終的な臨床転帰の改善を目指し、phECGの臨床的有用性、地域差を含む実装状況、技術的・制度的課題、そして将来的な活用の展望について、多角的な視点から議論を深める機会といたします。つきましては、本主題に関連する幅広い分野からの演題を募集いたします。多くの皆様のご発表とご参加を心よりお待ち申し上げます。

Symposium 21
  日本語  
  SY21  
5年目を迎えた脳卒中・心臓病等総合支援センターの活動内容と課題
Five Years of the Nōsotchū / Shinzōbyō-tō Sōgō Shien Sentā: Achievements and Challenges
座 長:
安田  聡
東北大学 循環器内科)
 
前村 浩二
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 循環器内科学)

脳卒中・心臓病等総合支援センターは、2020年度に循環器病対策推進基本計画に基づき整備が始まり、現在は全国で約80施設が指定されている。急性期から慢性期、在宅まで一貫した医療体制の構築や地域連携、予防医療の推進、自立支援、人材育成に取り組んできた。5年目を迎え、一定の成果が見られる一方で、医療資源の偏在、多職種連携の難しさ、住民の行動変容の困難さといった課題も浮き彫りとなっている。今後は持続可能な運営体制とアウトカム評価の仕組みづくりが求められる。各地域での取り組みと見えてきた課題について議論する。

Symposium 22
  日本語  
  SY22  
心不全療養指導士の活動と今後の展望
Achievements and Future Prospects of Certified Heart Failure Educator
座 長:
山本 一博
国立循環器病研究センター)
 
眞茅みゆき
北里大学 看護学部)

2021年にスタートした心不全療養指導士制度は、心不全の発症・重症化予防のための療養指導に従事する医療専門職に必要な基本的知識および技能など資質の向上を図ることを目的として創設され、2025年現在、7,770名のメディカルスタッフが本資格を有し、本邦の心不全医療に貢献している。心不全療養指導士の活動は所属施設における心不全医療の質の維持や向上に留まらず、地域におけるネットワーク構築による連携の推進、予防啓発活動への参画、臨床研究の推進、後進の教育・育成など多岐にわたる。日本循環器学会学術集会で企画される心不全療養指導士caféは、参加者が実践報告や課題を共有し、心不全医療に貢献しようとする心不全療養指導士の代表的な活動の一つとなっている。一方、本制度の発足から5年が経過し、心不全療養指導士の活動上の課題や新たに求められる役割など、議論すべき点も多い。
本セッションでは、心不全療養指導士、医師、教育/管理者などあらゆる立場からの心不全療養指導士の活動、育成に関わる成果、あるいはこれらに関する問題提起を期待し、今後の心不全療養指導士のあり方を議論したい。

SY22のみ、日本語抄録でも応募を受けております。
日本語での抄録登録される場合は「チーム医療セッション・シンポジウム」からご登録が可能です。
希望セッション選択をSY22(日本語登録)を選択の上、ご登録ください。
Symposium 23
  日本語  
  SY23  
保険診療の持続可能性と医療イノベーションの相克
The Conflict Between the Sustainability of Insurance-Based Medical Care and Recent Medical Innovation
座 長:
岡村 智教
慶應義塾大学医学部 衛生学・公衆衛生学)
 
阿古 潤哉
北里大学医学部 循環器内科)

わが国では急速な高齢化の進行により、医療費を含む社会保障費の増大が避けられない状況にあります。これにより保険診療の持続可能性が問われる一方で、分子標的薬や最先端医療機器などの医療イノベーションが次々に登場し、医療の質は飛躍的に向上しています。しかしその多くは海外企業の特許に依拠しており、使用される医療費が国内経済に十分還元されない構造的課題を抱えています。 一方、こうした医療の高度化は、診療報酬の「薄利多売」構造からの脱却の契機ともなり得ます。例えばロボット支援内視鏡手術のように、有効性に基づいた診療報酬評価の試みも始まっています。今後は医療イノベーションの価値を、国民や政策決定者に向けて科学的根拠とともに発信し、費用対効果の視点を社会全体で共有していく必要があります。
本シンポジウムでは、循環器医療における高度治療の進展、AIの臨床応用、リスク管理技術などを例に、医療イノベーションがもたらす可能性と、それが公的医療制度に与える影響について多角的に議論します。医療費削減にとどまらず、生活の質の向上と経済的持続性を両立する道を模索します。

Symposium 24
  日本語  
  SY24  
外来診療における循環器標準的予防治療の実践: 2024年診療報酬改定後の現状と未来
Implementation of Standard Preventive Cardiovascular Care in Outpatient Practice: Current Status and Future Outlook Following the 2024 Medical Fee Revision
座 長:
中村 真潮
陽だまりの丘なかむら内科)
 
的場 聖明
京都府立医科大学 循環器内科)

2024年度診療報酬改定では、外来医療の質と効率の向上、医療DXの推進、そして地域完結型医療の実現に向けたさまざまな施策が打ち出されました。循環器疾患の予防的管理においても、生活習慣病管理料の創設をはじめ、ICT活用の評価、多職種連携の推進など、日常診療に大きな影響を及ぼす改定が行われています。とくに生活習慣病管理料は、診療所や200床未満の医療機関が中心となって、高血圧症・脂質異常症・糖尿病といった主要リスク因子の継続的な管理を担うことを目的としており、ガイドラインに基づいた治療目標の設定、療養計画書の作成と説明、行動変容を促す指導の継続と記録が求められています。これにより、患者の生活習慣の改善を支援する診療の取り組みが、より明確な枠組みの中で位置づけられることとなり、地域における予防医療の実践について改めて見直す契機となっています。一方、大学病院や大規模医療機関においても、地域との連携支援や専門診療の効率的運用、多施設間での情報共有など、改定の趣旨に応じた新たな役割が期待されています。
本シンポジウムでは、今回の改定が外来循環器診療に与えた実際の影響と課題を多角的に検討し、今後の制度のより良い活用と発展に向けた提言の場としたいと考えています。多様な立場からのご発表・ご参加をお待ちしております。

Symposium 25
  日本語  
  SY25  
看護師特定行為研修修了生が施設にもたらすメリット
~~外来、入院、在宅まで継続的な循環器チーム医療、タスクシフトの推進~~
Benefits that graduates of specific nurse practice training bring to facilities.
~~Continuous cardiovascular team medical care from outpatient, inpatient, and home care, and promotion of task shifting~~
座 長:
栗田 康生
国際医療福祉大学大学院)
 
樋口 靖子
国際医療福祉大学市川病院)

2015年に看護師に係る特定行為研修が開始され、延べ1万人以上の研修修了生が輩出されている。一部の特定行為研修修了生の配置により診療報酬が付き、また医師の働き方改革の際にも特定行為研修修了生にタスクシフト・シェアするよう盛り込まれるなど、特定行為研修修了した看護師には追い風も吹いている。循環器領域でも特定行為という行為のみにとどまらず、外来、入院、在宅まで継続的にチーム医療に携わることができる特定行為研修修了した看護師は、その役割と重要性が高まってきている。
今回のシンポジウムでは、特定行為研修修了した看護師がチーム医療やタスクシフト推進など施設にもたらすメリットについて、施設幹部の立場、研修修了生の立場など、様々な角度から現状を紹介していただく。今回のシンポジウムにより、循環器チーム医療がより円滑となるよう、特定行為研修修了生のメリットについてディスカッションしていきたい。

  チーム医療セッション シンポジウム
チーム医療セッション シンポジウム1  
  CS1  
心不全患者をみる ―退院調整から在宅支援までー
座 長:
眞茅みゆき
北里大学 看護学部)
 
櫻田 弘治
心臓血管研究所付属病院 リハビリテーション室)

日本における心不全患者数は増加しており、2024年度の循環器疾患診療実態調査では、年間心不全入院者数は約30万人と報告され、心不全パンデミックから心不全エンデミックの状態に移行したとも言える。心不全患者の増加に伴い、入院医療から在宅医療への移行も急速に進んでおり、心不全の重症化予防には、入院中の薬物・非薬物治療、心臓リハビリテーション、患者教育に加え、退院調整や訪問診療、訪問看護、訪問介護の積極的活用、つまり移行期支援が重要な役割を果たす。2025年に改訂された心不全診療ガイドラインでも急性・慢性という病期の分類をなくしたことは、入院医療から在宅医療へシームレスにつなげることの重要性を示すものである。心不全の移行期支援においては、心不全の重症度、併存症、身体機能、認知機能などの患者要因、介護力などの家族(介護者)要因、退院支援部門とケア・マネージャーを含む在宅医療関連機関との連携、看看連携、リハビリテーション連携、在宅医療・介護連携といった医療・介護・福祉に関する要因に着目する必要がある。本セッションでは、退院調整から在宅支援まで、患者アウトカムや医療の質の改善を示すエビデンスや先駆的な取り組みについて、様々な医療専門職による活発な議論を期待する。

チーム医療セッション シンポジウム2  
  CS2  
循環器診療におけるタスク・シフト/シェアを考える
座 長:
瀬尾 由広
名古屋市立大学 循環器内科)
 
加藤  守
秋田県立循環器・脳脊髄センター 放射線部)

超高齢社会の進展、医療人材の偏在、医師の働き方改革など、循環器医療を取り巻く環境は急速に変化しています。その中で、限られた医療資源のもとで質の高い医療を提供し続けるための戦略として、「タスク・シフト/シェア」の推進は喫緊の課題となっています。循環器診療の現場においても、医師に加え、看護師、臨床検査技師、診療放射線技師、薬剤師、リハビリスタッフなど、多職種の専門性を活かしたチーム医療が不可欠です。さらに急性期から慢性期、在宅・地域医療に至るまで、それぞれの場に応じたタスク・シフト/シェアのあり方を多角的に議論することが、今まさに求められています。本セッションでは、現場で実践されているタスク・シフト/シェアの先進事例や、制度課題、職種間の連携体制、教育・研修の取り組みなど、多様な観点からの発表を通じて、より実践的かつ建設的な議論を行いたいと考えております。全国の現場で取り組まれている創意工夫、医療チームとしての成長の軌跡、あるいは課題と向き合うプロセスなど、施設の規模や地域性を問わず、循環器診療の現場で日々奮闘されている皆さまから、幅広く演題をご応募いただければ幸いです。
本シンポジウムを通じて、循環器領域におけるタスク・シフト/シェアの現状と未来像をともに描き出す機会となることを願っております。多くの皆さまからの積極的なご応募を心よりお待ちしております。

チーム医療セッション シンポジウム3  
  CS3  
最新のリハビリテーション ―急性期から慢性期までー
座 長:
藤野 剛雄
九州大学大学院医学研究院 重症心肺不全講座)
 
田嶋 明彦
新潟薬科大学 医療技術学部)

近年、心臓リハビリテーション(心リハ)においては、従来の運動療法にとどまらず、多職種医療チームで行う患者と患者家族への教育、栄養食事指導、生活管理、職業復帰訓練などを含めた包括的心臓リハの重要性が認識されている。また、集中治療室での急性期からの早期介入や、デジタル技術を活用したオンライン管理型システムによる自宅での遠隔心臓リハなど、新しい取り組みも注目されている。従来、外来での継続率が低いことが心リハの課題とされてきたが、実施率向上のため厚生労働省からクリニックで行う回復期心臓リハが推奨されている。
このセッションでは、これら急性期から回復期までの心リハに関わる最新の話題を紹介し、これからの心リハのあり方について議論を行いたい。

チーム医療セッション シンポジウム4  
  CS4  
いま知っておきたい、心筋症治療薬
座 長:
木田 圭亮
聖マリアンナ医科大学 薬理学)
 
岸  拓弥
国際医療福祉大学大学院医学研究科 循環器内科)

心筋症は、その病態の多様性と診断・治療の難しさから、循環器診療において常にチャレンジングな領域です。特に、サルコイドーシス、アミロイドーシス、ファブリー病、そして肥大型心筋症は、いずれも特異的な病因を持ちながら、心不全、不整脈、突然死など重篤な臨床経過をたどることがあり、早期診断と個別化治療が求められています。
近年、これらの希少疾患に対しても治療選択肢が広がりつつあり、疾患修飾薬(disease-modifying therapy)の開発や適切な薬剤選択が可能となってきました。たとえば、心サルコイドーシスでは免疫抑制療法の適応判断、心アミロイドーシスではトランスサイレチン安定化薬やRNA干渉薬の使用、ファブリー病では酵素補充療法やチャペロン療法、肥大型心筋症ではミオシン阻害薬など、新たな治療薬が臨床に導入されつつあります。
こうした高度に専門的な治療は、循環器内科医のみならず、薬剤師、遺伝カウンセラー、病理医など、多職種の連携によるチーム医療が不可欠です。
本セッションでは、日本臨床薬理学会とのジョイント企画として、最新の治療薬情報とその臨床応用について多角的に議論いたします。心筋症治療の最前線を、皆さまとともに学び、明日からの診療に役立てる機会となれば幸いです。

チーム医療セッション シンポジウム5  
  CS5  
低侵襲画像診断による虚血性心疾患評価の最前線
座 長:
髙岡 浩之
千葉大学 循環器内科)
 
梁川 範幸
つくば国際大学 医療保健学部 診療放射線学科)

循環器領域における画像診断の近年の進化は目覚ましいものがありますが、その重要なコンセプトは患者さんの負担を減らす低侵襲化、並びに診断精度向上や新たな診断技術の開発と考えます。特に放射線領域では被ばく最適化の技術革新がキーワードとなり、心臓CTや侵襲的冠動脈造影、さらには核医学部門での技術発展は大きなものがあります。
心臓CTは最新画像再構成法等による被ばく低減、造影剤減量や、救急疾患を中心とした非心電同期撮影や、FFRCTによる精度の高い冠動脈機能評価が可能になっています。また、新たに臨床使用可能となったフォトンカウンティングCTでは、低侵襲と高画質の両立が期待できます。侵襲的冠動脈造影はFlat Panel Detectorの技術進歩により高精細な画像の提供を実現しています。MRIは、被ばくや造影剤の投与なしでの冠動脈狭窄評価が可能な点が強みであり、従来欠点とされてきた長い撮影時間についても、深層学習技術や圧縮センシングによる克服が期待されます. SPECTは半導体検出器の登場により高分解能の画像の描出が可能になりました。また、心筋Perfusion撮影は虚血心の機能的診断に欠かせず、CTやMRIにおいても可能とされる同様の撮影・診断技術の向上についても興味深いところです。
それらの立場から最先端技術の紹介を含め、キーワードは低侵襲検査の技術発展として、お互いの画像診断モダリティを補うことの重要性についても議論したいと考えます。