第36回日本緑内障学会
会長 栗本 康夫
(神戸市立神戸アイセンター病院 院長)
第36回日本緑内障学会を2025年9月12日(金)~14日(日)に神戸ポートピアホテルで開催させていただきます。本学会の神戸での開催は、2006年に根木昭会長が開催された第17回以来19年ぶりとなります。学会長は神戸市立神戸アイセンター病院の栗本が務めさせていただき、副会長は兵庫県眼科医会会長の古川清実先生にお願いいたしました。
今回の学会テーマは「緑内障が治る時代に向けて」としました。御承知のように緑内障の視神経障害は非可逆的であり、病気を進行させないために早期発見と早期治療を推進し疾患を管理するのが緑内障診療の基本です。しかしながら、国民の平均寿命がどんどん延びて人生百年時代とも言われる今日、緑内障患者さんの視機能を生涯にわたって守り切る戦いはその厳しさを増しています。緑内障の診断と治療がどんどん進歩しているにもかかわらず我が国の失明原因の第一位の座を返上できないでいる現実を見ると、疾患管理による進行の抑制だけでは限界があるのかもしれません。今後も平均寿命が延びていくと予想される中、緑内障を治すという治療戦略の強化が望まれます。実際、近年の再生医学や遺伝子治療の進歩により将来的には進行した視神経症を治療できる可能性が出てきています。また、遺伝子診断や分子疫学とデータサイエンスの進歩に伴い、早期診断早期治療のみならず、そもそも緑内障を発症させない先制医療の実現も視野に入ってきました。我々は緑内障が治る新しい時代を開く扉のすぐ目の前に立っているのかもしれません。一方では、本来であれば現在でも“治せる緑内障”であるはずの原発閉塞隅角病や一部の続発緑内障などであってもリアルワールドでは必ずしも治せていないという現実があります。そこで、今回の学会では「緑内障が治る時代に向けて」の現在の到達点と今後の見通しを俯瞰すると共に、“治る緑内障”のカウンターパートとも言える緑内障患者のロービジョンケアと社会的支援にもスポットを当て、緑内障による視機能障害を抱えた患者さんが社会で活躍しwell-beingを実現していく上での問題点についてもフォーカスします。
こうした学会テーマに沿って、特別講演をiPS細胞による再生医療への道を切り拓きノーベル賞を受賞された京都大学iPS細胞研究財団の山中伸弥先生にお願いし、招待講演には “治る緑内障”である原発閉塞隅角病の大家でらっしゃるSingapore National Eye CentreのTin Aung先生、そして須田記念講演にはビッグデータやAIを駆使した我が国の眼科データサイエンスを牽引される山梨大学の柏木賢治先生にお願いいたしました。
上述のテーマ以外にも緑内障の臨床と研究の最新のトピックと論点を考えるシンポジウムや年々進化する緑内障診療をアップデートし新たな学びを得るための教育セミナー、若い医師やコメディカルの為のセミナーも充実させました。さらに新しい試みとして、専門化と細分化が進む今日の眼科医療においてその重要性を増しているチーム医療について考えるセッションも企画します。緑内障を専門とする医師やコメディカル医療従事者はもちろんのこと、緑内障を必ずしも専門としていない医師や医療従事者にとっても学びと新たな発見の多い学術プログラムが、素晴らしいプログラム委員の先生方の御尽力にて完成しつつあります。
そして、久しぶりの神戸での開催ということで、現地参加の皆様には海と山の美しい自然に囲まれ異国情緒溢れる街並みや多種多様なグルメスポットに恵まれた港町神戸を堪能して頂ければと思います。神戸スイーツ読本など神戸の街とグルメを楽しんで頂くための企画やポートピアホールでの参加型クラシックコンサートなどのソーシャルイヴェントを鋭意企画中です。学会の合間やアフターにお楽しみ頂ければ幸いです。そして、学会最終日の翌日は祝日です。おりから大阪で開催されている大阪・関西万博にお立ち寄りいただき神戸と関西を満喫してお帰り頂ければ望外の幸甚です。
良い学会にすべく微力を尽くして準備を進めて参りますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
2024年10月
© 2024 The 36th Meeting of Japan Glaucoma Society