会長挨拶

第42回日本肩関節学会
会長 井樋 栄二
東北大学大学院医学系研究科外科病態学講座整形外科学分野

第42回日本肩関節学会の開催まで残すところ1ヶ月余となりました。現在鋭意準備を進めているところです。演題は予定通り5月11日の正午で受付を締切りましたが、過去最高の460演題の申し込みをいただきました。誠に有り難うございます。代議員の先生方の査読の結果、435演題を採択することにしました(採択率94.6%)。肩関節という限られた分野の研究発表ですので、1つの会場でできるだけ多くの人に発表を聞いてもらいたいと思います。口演が3つや4つの会場に分散することは避けるべきです。本学会では口演は2会場に限定し、なおかつシンポジウムや特別企画などは1会場でのみ走らせることにしました。その結果、一般演題の口演採択は65演題(14.1%)となり、ほとんどの演題がポスター発表ということになりました。この点をまずご理解いただきたいと存じます。ポスター発表は演者と聴衆の距離が近いので本音で話しやすいという利点があり、ワインとチーズも用意致しますので、質問をぶつけ合って思いっきり議論していただきたいと思います。また、去年の森澤佳三会長のときと同様、第1会場の発表は英語のみとさせていただきます。海外の先生方は第1会場にいればすべて内容が理解できるというプログラム構成にすることで、より国際化の流れを加速させたいと考えております。黙って聞いているよりも、質問をしたほうが遥かに理解が深まります。ぜひ積極的に英語セッションでの質疑応答に参加していただきたいと思います。とくに明日の本学会を担う若手の先生方はぜひそのように努めて下さい。そのための英語セッションです。国内学会で英語の発表をし、英語での質疑応答に慣れることで、次の国際学会での発表に着実に備えることが出来ます。

海外講師としては、北米大陸を代表してアメリカのRobert Neviaser先生、南米大陸を代表してブラジルのSergio Checchia先生、ヨーロッパ大陸を代表してオーストリアのHerbert Resch先生、そしてアジア大陸を代表して韓国のKwang-Jin Rhee先生をお招きしました。そして特別企画では、大陸間の交流を通してどのように肩関節外科が発展してきたのかを4名の先生方にご講演いただき、日本を代表して信原克哉先生に日本と諸外国との交流についてご講演を頂くことになっています。肩関節外科発展の歴史を振り返ることで、今後の方向性を見いだすこと、そしてさらに大陸間の交流を深めることを目的とする企画です。これも国際化を目指す本学会の方針に則った企画の一つです。

今回の学会から、これまで学会終了後に開催されていた教育研修会を学会期間中にプログラムの中で行うことになりました。時間の制約のため2枠、2時間しか時間を取れませんでしたが、この講義形式の研修講演と並行して9月26日には札幌医科大学の協力のもと、本学会41年の歴史の中で初めての「遺体を用いた手術手技研修会」を本学会主催で開催することになりました。こちらはすでに定員を上回る参加申し込みがありましたが、今後毎年この企画を続ける予定ですので、奮ってご参加下さいますようにお願い申し上げます。

本学会では「肩の病態解明を目指して」を標語にさせていただきました。お陰様で病態解明に関わる多くの演題をお寄せいただきました。基礎的、臨床的研究を通して、疾患の本質に迫ることが、その疾患を正しく理解し適切に治療してゆく上で不可欠なことです。この点を蔑ろにして手術手技の細かいことにばかり気を取られてはいけません。日本の肩学会が世界に誇るべきことは、歴史の古さではなく、その歴史にちりばめられた先人たちの業績、病態に迫る素晴らしい業績です。そのことに思いを馳せ、この学会で今一度原点に立ち返って我々の進むべき道を考える機会にしていただければ会長としてこれに勝る喜びはありません。

東日本大震災から4年半が経ちますが、復興はまだ道半ばです。沿岸部への被災地ツアーを通して直に震災の大きさを体験していただきたいと思います。と同時に、10月は春と並んで仙台がもっとも美しい季節です。定禅寺通りのケヤキも色づき始めることでしょう。ちょっと内陸に足を伸ばせば鳴子温泉郷、蔵王など風光明媚なところが沢山あります。被災地ツアーとともに仙台周辺の深まり行く秋を楽しんでいただければ幸いです。皆さんのご来仙を心からお待ち致しております。

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