JSGS2016 TOKUSHIMA
会長挨拶
会長 島田 光生 第71回日本消化器外科学会総会 会長 島田 光生 徳島大学 消化器・移植外科学 教授

メインテーマ 「外科の矜恃」 ―Orthodox & Serendipity―

ご挨拶
 第71回日本消化器外科学会総会を主宰させていただく光栄に浴しております。本会のテーマは「外科の矜恃」と銘打ちました。サブタイトルにもこだわりを入れOrthodox & Serendipityとしました。

 矜恃(きょうじ)という言葉には、プライドとは若干異なる意味合いの「自分の能力を信じて抱く誇り」といった意味や「職業人が持つ独特のこだわり、信念を貫こうとする意思」という意味が含まれています。私たちは今こそ外科医としてまた学会として社会や若い世代に対して、憧れや確かな信頼を感じてもらえる「矜恃」を持たなくてはならないと強く思っています。「矜恃」を確かなものとするためにサブタイトルにも思いを込めました。オーソドックスは、私自身これまでもオーソドックスな消化器外科臨床・研究を常に心懸けてきましたが、奇を衒った臨床や研究はもはや過去のものでエビデンスに基づいたオーソドックスな臨床や研究がきわめて重要であることを再確認するためです。もう一つがセレンディピティーです。過去を踏襲しただけの何の変化も求めない日常臨床・研究に埋没することなく常に新しいものを探すという気持ちで、一つの夢や目標を全力で追求することが重要です。その過程で、思いもよらないユニークな事象にぶち当たった時に、ユニークな出来事を予想外のものとして関心を示さないのか、あるいは想定外だが新発見に近いものと認識するのかで、その頭脳と品格と柔軟さが試されることになります。まさにそれがセレンディピティーです。細菌研究で培養実験をしていたアレキサンダー・フレミングが誤ってアオカビを混入させたことがのちに世界中の人々を感染症から救う抗生物質の発見につながった事実が典型的なセレンディピティーです。

 オーソドックスな消化器外科診療・学問を追求し、その中にセレンディピティーとして新たな事実を認識する能力を是非とも有して頂きたいと思っております。そして、皆さん一人一人の臨床・研究・教育でのオーソドックスとセレンディピティーをこの総会で披露して頂ければ望外の喜びです。

 徳島での開催は、昭和44年10月に田北周平教授が第2回総会を開催されて以来、約五十年ぶりの開催となります。総会では、学術的内容の充実はもとより、若手・女性外科医の視点や地方都市からの視点、前述のセレンディピティーの観点など加味し、“元気”あふれる国際色豊かな楽しい集会としたいと考えております。四国は、弘法大師が四国霊場88ケ所を開創されて1200年余にあたります。徳島はその中で「発心の道場」と言われ古くからお遍路さんを心から迎える「おもてなし」の精神が根付いています。来る第71回総会を永く記憶に残る学術集会とするため、徳島大学外科同門会一同ともども全力を尽くし、日本の「お・も・て・な・し」のてっぺんを目指す所存であります。

 七月中旬のまさに暑い会期ではありますが、本学術集会が次の10年に向かっての臨床・研究・教育の問題点を抽出し新たな多施設共同臨床・基礎研究が生まれる場となることと、そして日常診療などでお疲れの先生方の安息の場になることを期待して筆を置きます。どうぞ、日本の夏のてっぺん、阿波徳島へご参集ください。

第71回日本消化器外科学会総会
会長 島田 光生
徳島大学 消化器・移植外科学

Serendipity The natural ability to make interesting or valuable discoveries by accident.
何かを探しているときに、探しているものとは別の価値あるものを見つける能力を示す言葉で、何かを発見したという現象でなく、何かを発見する能力を示す。偶然をきっかけに閃いて幸運をつかみ取る能力のことである。