会長挨拶

大会長 白土博樹
日本放射線腫瘍学会第33回学術大会

大会長 白土博樹

北海道大学大学院医学研究院 教授

日本放射線腫瘍学会第33回学術大会は、2020年10月1日からのウェブ上での開催とさせていただくことになりました。

今回のテーマは、「真理の追究と人々の平安」で、私が若い頃に当時の北海道大学医学部放射線科教授の故入江五朗先生と交わした約束に由来します。ある時、「あんたがこれからの人生で大切にしたいことを紙に書いてこい。」と言われ、お渡ししたのがこの言葉でした。日本の放射線治療の発展に大きく貢献された、故入江五朗教授へのオマージュも込めて、テーマにさせていただきました。

理想的な学問は、真理の追究をすることが、そのまま人々の平安につながるものだと思います。しかし、真理を追究するだけでは人々の平安にはつながらず、人々が平安であればそれでよいと居直れば学問の進歩が止まるため、その両立は難しい課題です。放射線腫瘍学は、数学・物理という普遍的科学を土台とし、科学的な議論による真理の追究がそのまま患者や家族の苦しみを減らすことに繋がり、人々を平安に導くことができるという、学問として理想的な特徴を持っております。

オンライン学術大会システムの最近の発展は、目を見張るものがあります。まず、24時間視聴可能なオンデマンド配信により、居住地や一人医長等診療体制に起因する会員間の不公平は解消します。小さなお子様や介護すべき方と同居されている方も、皆、対等に研究発表や視聴ができます。世界的権威や最先端の研究者による慣れない英語講演も内容の把握がしやすくなります。ライブカンファレンスでは発表者と質問者が液晶画面上で、同じ画像サイズで、公平な議論ができます。もともとデジタル情報と相性の良い放射線治療ですので、ウェブならではのアクティブラーニング等にて、例年よりも深い知識の普及が期待できます。本学術大会において、個々の参加者が対等に議論し、参加者が主体的に深い知識を吸収し、その知識が波紋となって日本中そして世界に広がり、人々の平安に繋げることができれば、これに勝る喜びはありません。

ヴァーチャルワールドならではの醍醐味として、学問で頭を使ったあとに、自分のもっともリラックスできる自宅等から、研究発表を通して知り合った知らない方々との「初めてのご挨拶」、久しぶりに会える昔の同僚との「たわいもない語らい・笑い合い」、そして尊敬していた方々と「ウェブだからお話できる機会」などがあります。そのようなフレームワークをウェブ上に用意し、人生の師や友を見つけたり、新たな研究のヒントが生まれる、「生涯忘れられない、柔らかい時間」を過ごして頂きたいと思っております。また、今人気の札幌在住の画家・イラストレーターのふじたともみさんによる札幌周辺の「街歩き☆スケッチ」を学術大会のホームページで紹介します。暖かで感性あふれるペンのタッチから、セレンディピティの瞬間が訪れる可能性大です。

多くの皆様のご参加をお待ちしております。