第128回日本眼科学会総会

ご挨拶

村田 敏規
第128回日本眼科学会総会
総会長 村田 敏規
信州大学医学部眼科学教室 教授

長野県の小さな地方大学である信州大学に、参加者が例年1万人を超える日本眼科学会総会(2024年・第128回)の主管をお許し下さった、総ての日本眼科学会員の先生方の、冒険心とも呼べる寛大なるお心に御礼申し上げます。学会テーマは「視力を尽くさぬ闘い」。少し意味が不明確な日本語ですが、我々の思いの総てが込められています。

始まりは4-5年前のことになります。日々の外来・手術・病棟の運営で右往左往している地方大学ですが、周囲から「そろそろ先生も日眼の主管への立候補適齢期ですよね」と言われて、信州大学眼科が日眼を主管する姿を、想像するだけで震えるほど感動しました。同時に我々に責任をもって運営できるのかとても迷いました。この頃、立候補にむけて私の背中を押してくれた言葉が、日産のコマーシャルで矢沢永吉がつぶやいていた「やっちゃえ日眼(日産)」でした。その直後に、カルロスゴーンさんの衝撃が日本を襲い、コマーシャルが放映中止され、「やっちゃえ日眼」が学会テーマの最終案になる可能性は、残されない社会情勢となりました。

当初、本心として掲げたかったテーマは、「何としても治す」だったのですが、医局員からはその口語的な表現に、「格調が低い」、「先生はすべての病気を治せるとでもおっしゃりたいのですか?」と全国からご批判が殺到しますよ、といった懸念があげられ、医局の話し合いの段階で却下されました。トーンダウンして「何としても治したい心」を再提案しましたが、これも却下。

その後紆余曲折あり、最終案が決まりました。インスタグラムのフォロワー数がアイドル並みの370万人という、ミニチュアで「見立ての世界」をつくる芸術家田中達也氏に作品を依頼することに心を決めました。一番知られている作品は、もう数年前の朝ドラの「ひよっこ」で、給食のパンが新幹線に見えたり、一升瓶が高層ビルにしか見えなかったりする、不思議な世界を作り出す天才です。その彼が、コンタクトレンズを使って波動拳を表現している「視力を尽くした戦い」という作品を見て、これをどうしてもポスターに使いたいと思いました。私は波動拳という言葉を知らなかったのですが、悟空でいう揃えた手のひらから出る「かめはめ波」、宇宙戦艦大和の波動砲のような武器です。とはいえ、ホームページも、アトリエも非公開で、何のツテもなく、連絡方法を探すところから始まり交渉は難航して、完成したのはお披露目の期限である、前年つまり2023年の日眼開始直前でした。

普通にネットで[田中達也x視力を尽くした戦い]で検索していただければ、私の心を捕まえて放さないオリジナル作品をご覧いただけます。本来の言葉である「死力を尽くした戦い」を「視力」で置き換えているところも秀逸です。ロシアのウクライナ侵攻があり、「戦い」という文字が使えなくなり、これを「闘い」に置き換えました。さらに眼科医が「視力」を尽くしてはいけないという指摘もいただいて、最終的に「視力を尽くさぬ闘い」という言葉に、我々の気持ちを込めることになりました。

参加者が実際に集まって、議論を戦わせることができる環境が揃ってきました。すべての眼疾患を、「何としても治す」ための議論、つまり「視力を尽くさぬ闘い」が東京国際フォーラムで行われます。是非、ご参集ください。お集まりいただけない先生方は是非、オンラインでご参加ください。

本総会の総会長は信州大学眼科の村田敏規が務めさせていただき、副総会長は長野県眼科医会会長の永田征士先生が、プログラム委員長は北里大学眼科の庄司信行先生が務めてくださいます。プログラムは逐次更新されますので、ホームページをご参照ください。本総会を開催するにあたり、あらためて日本眼科学会の理事、監事、評議員、会員ならびに日本眼科医会の会員の皆様に心から感謝申し上げます。加えて、日本眼科学会事務局の方々、長野県眼科医会の先生方、信州大学医学部眼科同窓会(卓風会)の先生方、そしてご協力いただきます多数の関連企業に深く感謝申し上げます。

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