第31回日本心臓リハビリテーション学会学術集会会長
藤田医科大学医学部 循環器内科学
井澤 英夫
「新しい世界とともに進む心臓リハビリテーション」
新型コロナウイルス感染症による様々な行動制限が撤廃され社会経済活動はほぼ元に戻ってきました。しかし、私たちの生活様式はコロナ前とは大きく変わって、コロナ後の新しい世界の中での生活が始まっています。オンライン会議はコロナ前にはとてもハードルの高い方法だと思っていましたが、今やオンライン会議の方が集まりやすくてオンサイトの会議よりも簡単な方法に感じます。学会はオンサイトに戻りつつありますが、移動時間や交通費の負担を考えるとオンライン方式とハイブリッドでの開催を望む声があるのも事実です。遠隔心臓リハビリテーションはまだまだ普及していませんが、オンライン会議同様に場所を選ばない利便性などを考えると、今後一気に広がる可能性は高いと考えます。遠隔心臓リハビリテーションを行う上でも必要な血行動態をモニタリングするウエアラブルデバイスもどんどん進化していくでしょう。ウエアラブルデバイスを身につけて、ロボットや生成型AIも活用した場所を選ばない心臓リハビリテーションが普通に行われる世界が想像以上に早く到来するかもしれません。医療施設自体もデジタル技術やロボット技術が次から次へと導入されスマート化が進み全ての医療施設がネットワークで結ばれて、医療施設や介護福祉施設、調剤薬局や訪問看護ステーションなど地域全体での情報共有も容易になるものと思います。急性冠症候群や急性心不全の入院期間は短くなる一方ですが、将来は遠隔診療やロボット医療の発達により急性期の治療を入院せずに自宅で受けることが可能となってくるかもしれません。急性期から慢性期まで自宅で治療が完結するようになり、急性期病院や回復期病院、診療所などの区別もなくなってくるかもしれません。
医療の変革が進み、入院期間の短縮や在宅での急性期治療が行われ、患者さんは高齢化が進む新しい世界では、社会復帰を後押しし、また、二次予防や長期予後改善を目指す包括的心臓リハビリテーションの果たす役割は今まで以上に重要になってくるものと考えます。新しい世界ととともに心臓リハビリテーションも進化していかなくてはなりません。すべての患者さんのために、一人も取り残さないために、新しい世界で心臓リハビリテーションが実力を発揮するための方策を、暑い名古屋で熱い議論ができればと考えています。
学会場の徒歩圏内にはJR東海リニア博物館、レゴランド、キッザニアがあり、また近隣には名古屋港水族館もあります。名古屋駅周辺には名古屋めしの代表的な店が並び、栄にはテレビ塔と久屋大通公園、オアシス21があり、連日、日本を代表するフォトジェニックスポットとして海外からの旅行者が大挙して訪れています。リニア新幹線の工事が進み成長し続ける名古屋で有意義な学術集会が開催できるように準備を整え、多くの皆様の参加をお待ちいたしております。