第113回日本病理学会総会

会長挨拶

会長:豊國 伸哉

第113回日本病理学会総会
会長 豊國 伸哉
名古屋大学大学院医学系研究科 生体反応病理学 教授

 このたび、第113回日本病理学会総会を、2024年3月28日(木)から30日(土)の3日間にわたり、愛知県名古屋市熱田区の名古屋国際会議場において開催させていただきますこと誠に光栄でございます。名古屋での日本病理学会総会開催は2015年以来であり、9年ぶりの開催となります。また、対面のみでの開催は2019年東京開催以来であります。今回の会期は3月末の春期休暇中とさせていただきました。多数の医学生や初期研修医のみなさまの、将来を見据えての参加を期待しております。

 第113回日本病理学会総会のテーマは「医学を支える情熱的病理学:原点を見つめ、レジリエントなサイエンスを目指して」とさせていただきました。病理学は、医学において、それぞれの時代のひとびとを悩ませる疾患の発症機構を解明する学問として始まりました。明治時代に大学が開設されたときにほとんどの医学部において創立当初から存在する講座の1つです。第二次世界大戦後は、病理学の中から顕微鏡観察による病理診断が臨床医学、特に診断において極めて重要であることが認識されるようになり、病理診断学の分野が確立されました。そして、日本においても1970年から病理認定医制度(現在の病理専門医制度)が確立され、2008年からは病院において病理診断科を標榜できるようになっています。さらに現在では、がんの治療においては、通常の病理診断だけでなく、免疫染色やゲノム解析を駆使した詳細な解析によりひとりひとりのがんの特徴を認識することが、治療方針自体を決定する時代になっています。また、病理学は医学部において、基礎医学と臨床医学の橋渡しを行い、すべての疾患概念を教授する医学教育として重要な役割を担っています。また、ここで忘れてはならないのが、病理学発祥の精神、今でもまだ十分に克服されていない疾患の原因や病態の追究やその治療法の開発です。ここにはあらゆる種類のサイエンスが密接に関係してきますが、顕微鏡で培われた病理研究者の眼力が多くの困難な局面を切り拓いてきたのも事実です。

 上記テーマにあわせ、シンポジウムとワークショップ計20題を企画しております。宿題報告としては、石井源一郎先生(国立がん研究センター)、北澤荘平先生(愛媛大学)、鰐渕英機先生(大阪公立大学)に、研究の集大成をご講演いただきます。女性病理医、留学生、若手研究者、学生を対象とした、種々の特別企画も準備いたしました。また、病理専門医育成・生涯教育のための、系統的病理診断講習会、臓器別病理診断講習会、先端的分子病理講習会、剖検講習会も開催いたしますが、こちらは自分の好きな時間に繰り返し聴講できるように、また会場が混雑しすぎることのないように、すべて4月以降にオンデマンド配信とさせていただきます。国際的な企画としては、フェロトーシス・酸化ストレスのシンポジウムや英国病理学会・欧州病理学会・中国病理学会との交流も予定しております。我と思わん学生や若手病理医は是非自分の英語を試してみてください。本総会では、カーディオ・オンコロジーのような、健康寿命を考える上で極めて重要な、全く新しい領域への挑戦も仕込みました。また、毎年最終日午後に行われる全国から100名以上の医学生が集うポスターセッションも本総会のハイライトの1つです。

 愛知県は織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の3人の天下人を輩出しました。そしてその中心地、名古屋は徳川400年の武家文化が感じられる街です。それを存分に感じていただくように今回は、徳川美術館館長・徳川義崇氏(尾張徳川家22代当主)の特別講演も企画させていただきました。一方、食べ物としては、台湾ラーメン・台湾まぜそば・手羽先・みそカツ・あんかけスパゲティー・小倉トースト・櫃まぶし・きしめんなどB級グルメが目白押しです。そして、子供さんや若者向けのアミューズメントも多数用意されている都市です。是非、ご家族と少し早めにお越しいただき、観光やショッピングもお楽しみいただければと思います。

 本総会の開催にあたりまして、多数の企業や皆様にご協力を賜りました。深く感謝の意を表します。本総会が、参加者の皆様方の日々の病理診断・研究や日本の科学研究推進に寄与し、若手の方々には未来の羅針盤となり、また日本病理学会の発展にもつながりますことを心より祈念しております。

令和5年3月