会長挨拶

第70回日本音声言語医学会総会・学術講演会

会長 丹生 健一

神戸大学大学院医学研究科 外科系講座
耳鼻咽喉科頭頸部外科学分野 教授

丹生 健一

このたび、第70回日本音声言語医学会総会・学術講演会を、2025年10月23日(木)・24日(金)の二日間にわたり、神戸国際会議場にて開催させていただく運びとなりました。本学会の開催は、昭和43年の第13回(浅井良三教授)、昭和57年の第27回(服部 浩教授)、平成9年の第42回(天津睦郎教授)に続き、当教室としては4回目となります。長い歴史を誇る本学会において、記念すべき第70回大会を再び神戸の地で開催できますこと、教室一同、誠に光栄に存じます。

今回の大会テーマは、「言葉で伝える 思いが伝わる」といたしました。音声・言語によるコミュニケーションは、単なる情報伝達ツールにとどまらず、私たちの感情や思いを共有するための、かけがえのない手段です。本大会では、インプットとアウトプットの両側面から、音声と言語の多様な機能と意義について、基礎・臨床・研究・教育の各視点を交えて、幅広く議論を深めてまいります。

特別企画としては、1日目午前にInternational Association of Communication Sciences and Disorders(IALP)のBrian B. Shulman会長をお招きし、国際セッションを企画しております。音声言語・コミュニケーション障害に関する国際的な最新の知見と課題を共有する、貴重な機会になることを期待しております。続いて初日午後には、歴代会長にご登壇いただき「第70回記念式典」を開催いたします。両企画の出席者には70周年記念品をもれなくご用意しております。皆様、奮ってご参加ください。

特別講演では、高知大学の柿木章伸先生のご旧友であり、吃音を克服されたご経験を持つローランド金田氏をお招きし、「プロレス中継のアナウンスを真似ることで吃音を乗り越えた体験」を語っていただきます。言語と自己表現の力を実感できる貴重なお話を楽しみにしています。

シンポジウムおよびパネルディスカッションは、計5題を企画いたしました。シンポジウム1では、このほど公開された「痙攣性発声障害診療の手引き」をご紹介いただき、シンポジウム2では、これまで本学会を牽引してこられた諸先生にご登壇いただいて、今後の学会の展望を語っていただきます。パネルディスカッション1では、音声・聴覚の両側面からみた中高音域の重要性について、パネルディスカッション2では、発足して3年目を迎える音声言語認定医・認定士制度の現状と課題について、パネルディスカッション3では、音声障害の治療における医師と言語聴覚士の協働について議論していただきます。

教育講演は「喉頭微細手術」、「ことばの遅れへのアプローチ」、「APD(聴覚情報処理障害)」、「AAC(拡大・代替コミュニケーション)」、「嚥下改善術」の5題をご用意し、実技講習としては、筋電図の活用を学ぶハンズオンセミナーに加え、専攻医を対象とした「音響分析・空気力学的検査」も企画しております。

ランチョンセミナーは、事務局長の肝煎り企画として、近畿大学の安松隆治教授による「喉頭摘出後の代用音声と呼吸器リハビリテーション」と、パフォーマーのMAHONEさんを迎え、李庸學先生(リー ボイスクリニック銀座)による「Death Voice」に関する講演を予定しております。

会期翌日のポストコングレスセミナーは、会場を神戸大学医学部附属病院に移し、音声治療の第一線でご活躍のエキスパートから「音声治療のコツと肝」を伝授いただきます。臨床現場に直結する、実践的な知識が得られる内容を予定しております。

本大会が、研究者、臨床家、教育関係者の皆様の知見と経験を結集し、「ことば」を通じた人と人とのつながりの本質に迫る場となることを、心より願っております。多数の皆様のご参加と、活発なご議論をお待ち申し上げております。

2025年7月28日

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