受賞記念講演のご案内

Gold Medal

手島	昭樹

手島 昭樹

(野崎徳洲会病院 放射線科)

大変な栄誉を与えていただき、宇野理事長、櫻井学術大会長、辻野賞等推薦委員長、理事会、代議員会、会員の皆様に深い感謝を捧げます。45年のキャリアを振り返り、皆様にお役に立てる情報でお返しできれば幸いです。

大阪府立成人病センター、大阪大学:日米セミナーに初参加し、放射線治療の構造の違いに驚きました。厚労省班研究(井上班)にて米国Patterns of Care Study(PCS)に注目し、A CRを訪問し、Gerald Hanks教授から講義を受けました。同所に留学し、日米構造比較から顕著な差を観察しました。米国も実は30年前は同じような状況だったと逆に励されました。

大阪大学保健学科:診療放射線技師、医学物理士の教育研究に携わりました。PCSを本格導入しました。2段階クラスタサンプリングにより施設規模と性格に応じて訪問調査しました。全国の先生方の施設にお邪魔し、調査者は班員、研究協力者の施設から参加いただきました。双方にご尽力賜り、施設規模による診療patternの違いを観察しました。定期構造調査や米国NCDBを目標として症例登録JRODを進めました。特に前者やPCSデータはがん対策の中で放射線治療推進の論拠として活用いただけたでしょうか。所属学生院生が支えてくれました。

大阪国際がんセンター、大阪重粒子線センター:臨床現場に復帰しました。症例数が2,000例、1,200例と大幅に増えました。30年前に米国で見た施設規模に到達しました。現場の意見が重要でした。

がん患者として:薬物療法の進歩により放射線治療の立ち位置は刻々変化しており、進行がんにも基礎、臨床面から挑戦いただきたいです。

梅垣賞

小出	雄太郎

小出 雄太郎

(愛知県がんセンター 放射線治療部)

この度は栄えある梅垣賞にご選出いただき、大変光栄に存じます。
本研究1は、これまで梅垣賞を受賞された偉大な先人の先生方の研究とは異なり、「緩和照射」に関するものです。日常診療で広く行われる一方、研究対象とするとその実施には多くの困難が伴いました。がんの症状に苦しむ患者さんやご家族からの多大なご協力なくしては、本研究は成立しませんでした。研究にご参加くださった300名もの患者さんとそのご家族の皆様に、心より感謝申し上げます。

特に研究の鍵となったのは、麻薬性鎮痛薬を使用中で再照射を受ける患者さん(クラス3、疼痛緩和率36%)です。この集団は標準的な緩和照射の効果が乏しく、今後の治療開発が強く求められることを示しました。一方で、最も追跡が難しい集団でもあり、多くの患者さんが12週の評価時点では通院が困難でした。そうした中で、担当医からの電話や手紙に加え、ご本人・ご家族・在宅医の先生方のご協力を得て収集された貴重なデータが、本研究の基盤となっています。

この受賞論文1を礎に、つづくQoL研究2、非骨転移に対する有効性の研究3、さらに本大会で発表する非骨転移のQoL研究4へと成果が広がっています。今後も研究を継続し、緩和照射の新たな知見の創出や治療開発への貢献につなげてまいります。

最後に、ご推薦くださいました名古屋大学の石原俊一先生、日頃よりご指導いただいている愛知県がんセンターの古平毅先生、立花弘之先生、橋本眞吾先生、塩川病院の田中寛先生、そして日々支えてくれた家族に深く感謝申し上げます。また、ご選考いただいたJASTRO賞等推薦委員会および理事の先生方に、心より御礼申し上げます。

参考文献

1. Koide Y, et al. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2024;120:79–88.

2. Koide Y, et al. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2025;121:1125–1133.

3. Koide Y, et al. Radiother Oncol. 2025;208:110901.

4. Koide Y, et al. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2025; (Article in press, published online 2025 Oct 9). doi:10.1016/j.ijrobp.2025.09.055.

阿部賞

水本 斉志

水本 斉志

(筑波大学附属病院 放射線腫瘍科)

このたび、日本放射線腫瘍学会より栄誉ある阿部賞を賜り、大変光栄に存じます。長年にわたりご指導くださった筑波大学放射線腫瘍科の櫻井英幸先生をはじめ、日々の診療と研究を支えてくださっている同僚の先生方、スタッフの皆さま、そして治療を受けてくださった患者さんとご家族の皆さまに、心より感謝申し上げます。

私はこれまで、小児や肝腫瘍をはじめとする希少がんに対して、陽子線治療を中心に放射線治療全般の有効性と安全性を科学的に検証する研究を続けてまいりました。臨床の現場で得られた知見をもとに、晩期影響や稀な副作用の実態を明らかにするなど、治療の質向上に向けた取り組みを進めています。多施設共同研究や国際レジストリを通じて、多くの先生方と協力しながら、次世代の放射線治療の発展に貢献できるよう努めております。

放射線治療の基礎と臨床を結びつけ、その発展の礎を築かれた阿部光幸先生の精神を受け継ぎ、今後も患者さん一人ひとりに寄り添いながら、研究・教育・臨床の三つの柱を大切に歩みを進めてまいります。

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