優秀教育講演賞・Highly Cited Award・
JRR誌優秀論文賞・優秀査読者賞・地域貢献賞のご案内

優秀教育講演賞

森	祐太郎

森 祐太郎

(筑波大学医学医療系)

この度は、日本放射線腫瘍学会第37回学術大会における教育講演1(物理)「放射線の単位を再確認:その意味と使い方」に対し、優秀教育講演賞の栄誉を賜り、心より御礼申し上げます。私の講演が教育のお役に立てましたことを嬉しく思います。

本講演は放射線防護を主題としました。私が放射線防護研究に本格的に取り組む契機は、2011年3月11日の東日本大震災でした。この時の経験として、住民の方々に放射線影響や防護を正確に伝えるには「線量」を正しく理解し、使い分けることが不可欠であると痛感しました。物理量としての「線量」、リスク評価・安全管理のための「線量」、測定のための「線量」など、目的により指標は異なります。線量は“被ばく”に直結しますが、原子力災害、放射線診療、放射線治療では、想定する影響(組織反応/確率的影響)と扱うスケールが異なるため、同じ“被ばく”でも許容や説明の枠組みが変わります。これらを丁寧に使い分けることが、放射線の量や影響を議論する上では重要となります。臨床現場で考えた時、患者さんと話し合う際に何か違和感を覚えたら、「双方がどの線量、あるいは物差しで話しているか」を確認することが、円滑なリスクコミュニケーションに寄与すると考えます。

今回の受賞は、日頃ご指導くださる諸先生方、共に研鑽を積む同僚・学生、そして患者さんからの学びの賜物です。放射線影響・防護の知見は新たなエビデンスで日々更新され続けます。私自身、今後も「線量」への理解を深化させ、患者さんと学会員の皆様のお役に立てるよう精進いたします。

安藤 謙

安藤 謙

(群馬大学医学部附属病院 放射線治療科)

この度は栄誉ある「優秀教育講演賞」を賜り、身に余る光栄に存じます。本賞は昨年度の日本放射線腫瘍学会第37回学術大会における教育講演(婦人科腫瘍)に対していただいたものです。私はキャリアを通じ、画像誘導小線源治療(IGBT、なかでもHybrid照射)と重粒子線治療の臨床・研究・教育に継続して携わってきました。講演では、子宮頸癌に対するIGBTの実装・普及が進み、重粒子線治療の保険収載が段階的に拡大するなど、実地臨床の選択肢が確かな前進を見せている現状を整理しました。加えて、長らくシスプラチン併用化学放射線療法が標準であった局所進行子宮頸癌領域において、昨年KEYNOTE-A18の結果により免疫チェックポイント阻害薬(ペムブロリズマブ)の併用が保険収載され、新たな局面に入りつつある点を紹介しました。さらに、日常診療では触れる機会の少ない子宮体癌・外陰癌についても、JROSGで進行中の研究の概要を取り上げ、最新の動向に触れました。講演を聴講いただいた会員の皆様の一助となれたら幸いです。婦人科治療の質向上には座学だけでなく小線源の実地手技の研鑽も欠かせません。今後も変化の速い状況の中で知見を深め、小線源技術の普及にも地道に努め、患者さんと学会に貢献できるよう取り組んでまいります。演者にご推挙くださった教育委員会の皆様、ならびに大会長・大西先生に心より御礼申し上げます。

岸 徳子

(京都大学医学部附属病院 放射線治療科)

このたびは、日本放射線腫瘍学会優秀教育講演賞という名誉ある賞を賜り、身に余る光栄に存じます。第25回放射線腫瘍学夏季セミナーで講演の機会をお与え下さいました岡嶋馨先生、JASTRO教育委員会委員長の山内智香子先生、座長の石倉聡先生をはじめ教育委員会の先生方、ならびにご聴講くださいました皆様に心より御礼申し上げます。
夏季セミナーでは、私の前にご登壇の福井基成先生(公益財団法人田附興風会医学研究所北野病院 呼吸器センター長)と約10年ぶりに再会し、初期研修医時代にご指導頂いた部長の先生のお話を拝聴でき、深く感激いたしました。ご講演は肺炎をテーマとする大変分かりやすく学びに富む内容で、まだご覧でない方はぜひJASTRO教育講演スライドをご高覧いただければ幸いです。
拙講「呼吸機能と心機能から探る放射線治療の最前線」は、かつての指導医の前で呼吸機能を論じる、まことに畏れ多く身の引き締まる機会でしたが、準備の過程での文献検索等を通じ、何より私自身が多くを学ぶことができました。
今回の受賞は先輩方からの叱咤激励と受け止め、本賞を励みに一層精進してまいります。
引き続きのご指導ご鞭撻のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。

Highly Cited Award

川村 麻里子

川村 麻里子

(名古屋大学大学院医学系研究科 量子介入治療学)

この度は、「Highly Cited Award」という栄えある賞にご選出いただき、誠に光栄に存じます。編集長をはじめとする編集委員の皆様、そして本論文を引用し、この分野の議論を深めてくださった研究者の皆様に心より御礼申し上げます。

受賞対象となりました論文「Revolutionizing radiation therapy: the role of AI in clinical practice」は、JJRのTopGun projectの一環として、多くの放射線診断医の先生方との貴重な協働作業の賜物です。 本論文は、AIの専門家ではない臨床医の視点から「AI技術によって、臨床現場のどのような課題を解決できるか」という率直な問いを探求したものです。 日本の放射線診断医と治療医の緊密な連携という土壌があったからこそ生まれた成果だと感じております。

今回の受賞を大きな励みとし、これからも研究、そしてその原動力である臨床に真摯に取り組み、医療の発展に貢献できるよう精進してまいります。この度は誠にありがとうございました。

JRR誌優秀論文賞

高津	淳

高津 淳

(順天堂大学医学部 放射線治療学講座)

 この度はJRR誌優秀論文賞という栄えある賞を賜り心より感謝申し上げます。受賞対象の論文(Jun Takatsu, Naoya Murakami, Noriyuki Okonogi, Tatsuya Inoue, Kotaro Iijima, Yoichi Muramoto, Yasuo Kosugi, Terufumi Kawamoto, Tatsuki Karino, Yasuhisa Terao, Naoto Shikama. Optimizing dwell time weight for interstitial needles in intracavitary/interstitial hybrid brachytherapy: balancing tumor coverage with organ sparing using the inverse planning technique.)は、子宮頸癌に対する組織内照射併用腔内照射(IC/IS)における組織内照射針の停留時間比率の最適化を通じて、腫瘍線量確保と正常臓器線量低減の両立を実現する定量的根拠を明らかにしました。IC/ISにおける針の停留時間比率をアプリケータに対して10-20%に留めるよう国内外のガイドラインで推奨されていますが、この数値の妥当性を示す明確なエビデンスは存在しませんでした。本研究では、医学物理士として外部照射で培ったインバースプランニング技術を用いて、この臨床的課題に対する定量評価に取り組みました。本研究成果が、これからIC/ISを受ける患者様へより良い医療を提供する一助となれば幸いです。

今後も、医学物理士の立場から放射線治療の更なる品質の向上と、研究成果の積極的な発信に向けて研鑽を重ねてまいります。日本放射線腫瘍学会学術大会事務局の皆様およびJRR編集委員会の先生方、そして日頃から臨床と研究を支えてくださっている順天堂大学放射線治療学講座の先生方に心より感謝申し上げます。引き続きご指導ご鞭撻のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。

玉利 慶介

玉利 慶介

(大阪大学大学院医学系研究科 放射線治療学)

この度は、私どもの論文に「JRR誌優秀論文賞」という栄誉を賜り、誠に光栄に存じます。
本研究では、NDBオープンデータとJASTRO構造調査のデータを用いて、地域間におけるIMRT提供の実態とその要因を検討いたしました。分析の結果、都道府県ごとのIMRT率には大きなばらつきがあり、特に1施設あたりの放射線治療医数やIMRT対応機器数が多い地域でIMRT率が高い傾向が認められました。当たり前と言えば当たり前の結果ではありましたが、実データに基づいてその関係性を明確に示した点をご評価いただけたのではないかと考えております。

日本は米国・中国に次いで世界第3位の放射線治療施設数で、患者さんから見た放射線治療へのアクセスの良さという点では、世界でも屈指の国といえます。その中で、今後さらに均てん化された放射線治療提供体制の構築が重要になると考えます。

また、本研究を通じて改めて実感したのは、JASTRO構造調査の意義の大きさです。今回初めてデータを請求・活用させていただきましたが、その整備状況や精度の高さに深く感銘を受けました。このような基盤データを整備・管理されているデータベース委員会の皆様はもとより、データ提供にご協力くださった会員の皆様に心より敬意を表します。

最後になりますが、本賞をお選びいただいた編集委員会の皆様、ならびに関係者の皆様に、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

優秀査読者賞

松原 礼明

松原 礼明

(藤田医科大学 医療科学部)

この度は優秀査読者賞に選出して頂き、関係者の皆様に感謝申し上げます。私がこのような賞を頂いてよいのかと驚くとともに、微力ながらも放射線治療業界に貢献していると実感ができて安堵している部分もあります。私が査読の際に心がけていることは、可能な限り断らず、採択に向けてよりよい改善点を指摘し、そして迅速に返却する、の三点です。特に自分の著者として経験から(例えネガティブであっても)査読コメントが迅速に返ってくるのは何よりもありがたいと感じていますので、可能な限り日数をかけずに返却できるよう心がけています。もちろんそれでコメントの質が低下してしまっては本末転倒ですが、スピードも重要だと考えています。一方、よりよい改善点についてですが、自分だったらこう書くかな、こういう方針で解析するのではないかな、ということを指摘させて頂いていますが、まだまだこちらは自信が持てません。とはいえ、査読者を経験させて頂くことで著者の視野が広がり、そしてその逆も然りですので、著者としても査読者としても成長中できるよう今後も精進してまいります。

平田 岳郎

平田 岳郎

(大阪大学大学院医学系研究科 放射線治療学)

この度は過分な表彰をいただき、誠にありがとうございます。

私は一人の臨床医師として日々患者さんと向き合う中で、研究成果がいかに臨床実践に活かされるかという視点を大切にしており、研究と臨床現場を結ぶ架け橋となることを常に意識して査読を行ってまいりました。研究としての妥当性はもちろんのこと、その研究結果が実際の医療現場でどのように活用できるか、患者さんの治療の質向上にどう貢献しうるかという観点から、建設的なコメントや提言を心がけてまいりました。例えば、臨床判断に役立つデータの提示を著者の先生方に提案することもございました。今回の表彰は、このような理念に基づいて査読活動に取り組んできた姿勢を評価していただいたものと理解しております。

査読活動を通じて多くの研究論文に接する中で、改めて質の高い研究の重要性と、それが臨床現場に与える影響の大きさを実感しております。今後は査読者としての責務を果たすだけでなく、研究者かつ臨床医として、自らも臨床現場での経験と知見を活かし、放射線腫瘍学の発展に寄与する研究を継続していく所存です。患者さんにとって真に利益となる研究成果が世に送り出されるよう、微力ながら貢献してまいります。

今後ともご指導ご鞭撻のほど、何卒よろしくお願いいたします。

礒橋 文明

礒橋 文明

(奈良県立医科大学 放射線腫瘍医学教室)

このたび、昨年に続き2年連続で優秀査読者賞という栄誉ある賞を賜り、心より感謝申し上げます。再びこのような形で評価していただけたことを、大変光栄に思います。

放射線腫瘍学の発展は、個々の研究者の創意工夫と、査読を通じた学術的対話の積み重ねによって支えられています。査読という営みは、単に原稿を評価する作業ではなく、研究の質を磨き、学問全体の信頼性を高める重要な過程であると感じています。
臨床・教育・研究に加えての査読活動は容易ではありませんが、論文を通じて多くの優れた研究者の思考に触れ、共に学ぶ貴重な機会でもあります。

今回の受賞を励みに、今後も科学的に公平な視点を持ち続け、より良い学術環境づくりに微力ながら貢献してまいります。また、次世代の若手研究者が学術的議論に積極的に参加できるような土壌づくりにも努めたいと考えています。
最後に、このような機会を与えてくださったJASTRO編集委員会の皆様、そして日々共に切磋琢磨している同僚・後輩の皆様に、心より御礼申し上げます。

中村 光宏

中村 光宏

(京都大学 大学院医学研究科 医学物理学分野)

このたび、日本放射線腫瘍学会より「優秀査読者賞」を賜り、大変光栄に存じます。Journal of Radiation Researchにおける査読活動は、学術共同体の健全な発展を支える責務であり、その一部を担わせていただけることを誇りに感じております。査読の過程では、研究の新規性や妥当性を客観的に評価し、著者にとって建設的なフィードバックとなるよう努めてまいりました。今回の受賞は、そのような取り組みを評価していただいたものと受け止め、今後も公正かつ誠実な査読を継続する励みとなります。円滑で質の高い査読環境を整えてくださっている編集委員会の皆様に、心より感謝申し上げます。本賞を契機に、今後も微力ながら放射線腫瘍学の学術的発展に寄与してまいりたいと存じます。

有賀 拓郎

有賀 拓郎

(敬愛会 中頭病院 放射線科)

この度は、優秀査読者賞という栄誉ある賞を賜り、心より大変感謝申し上げます。過去に受賞された方々のお名前を拝見するたび、この列に小生の名前が並ぶのか…と思うと、何だが申し訳ないような気がしております。こんな私ですが、推薦していただいた日本放射線腫瘍学会編集委員会の先生、ご承認いただいた日本放射線腫瘍学会理事会の先生にこの場をお借りして感謝申し上げます。

この賞をいただいたのには個人的にきっかけがありまして。
東北大学の神宮先生と自治医科大学の白井先生が過去に受賞されていた際に、お二人とも『JRRの査読は会員の義務である(ドーン!という効果音も聞こえたような…)』とめちゃくちゃかっこよく宣言されていたのを拝見して、衝撃を受けました。あぁ、断らないように努力せねばと反省至極でございました。物書きとしてはどうも劣る私ですので、人様のお書きになられた論文を査読するなどという立場は全くしっくりこなくて毎度毎度胃がキリキリするのですが、それでも何かこのいただいている論文がより良きものになるような建設的な批判をできるように、調べては鉛筆をなめなめ、書いては消して書いては消して、を繰り返しております。この時間が一番勉強させていただいているような気がしております。

最近はEditorの先生方にも知り合いが増えて、ますます断りづらくなってきておりますが、
査読を通じて多くを学ばせていただいておりますし、何より、日本の南の果てからでも微力ながらJASTROおよびJRR誌の力になれていることに対して賞をいただけたと嬉しく思っておりますゆえ、これからも一査読者として日々精進する次第であります。
今後ともよろしくお願いいたします。

地域貢献賞

牧野 壮壱

牧野 壮壱

(長崎県島原病院 放射線科)

このたびは、栄ある地域貢献賞を賜り、心より御礼申し上げます。

この地域貢献賞の創設は、地域に根ざした医療連携の重要性を深く認識されている柄川順先生のご意志とご支援によるものであり、私どもの地道な取り組みが、この賞の趣旨と合致したことを大変光栄に存じます。選考委員長の辻野先生はじめ選考委員会の先生方に深く感謝申し上げます。

今回の受賞は、私個人に対してではなく、在宅医療の現場に緩和的放射線治療を届けるという活動を主導された、富士見在宅クリニックの院長であられた故・鈴木純一先生の類まれなる功績に対して贈られたものと認識しております。鈴木先生は元呼吸器内科医でもあられ、緩和ケアの重要性、なかでも緩和的放射線治療の重要性を深く理解していらっしゃいました。

在宅医療を受ける末期がん患者に対し、放射線治療を提供するには、適応判断、通院手段、多職種連携など、多くの困難が伴います。この活動は、鈴木先生が自身の在宅患者の中から放射線治療の適応があると考えられる患者を私に相談し、放射線治療医である私が最終的な適応を判断し、治療を実施するという、極めて具体的な連携体制のもと行われました。私自身の役割は、鈴木先生の活動を微力ながらサポートし、その貴重な経験を後に論文としてまとめるという、後方支援に徹したものでした1)2)

在宅からの放射線治療への紹介の中に様々な「障壁」があるにもかかわらず、患者が不安なく治療を受け入れられたのは、ひとえに患者の鈴木先生への絶対的な信頼があったからです。当初、私たちは放射線治療という技術の提供が患者にとっての最善だと考えていました。しかし、連携の継続と円滑化が進むにつれて、患者と家族の精神的・社会的苦痛を、深く認識するに至りました。このような苦痛に対して放射線腫瘍医がどのように対応をするか悩み、鈴木先生の助言に従い緩和認定医を取得しました。この資格取得を通じて、緩和治療の知識や技術に加え、患者・家族に深く寄り添う姿勢を習得したことは、鈴木先生との医師同士の連携のみにとどまらず、患者・家族を支える様々な職種との連携にも役立ちました3)

一見万能に見えた鈴木先生が、私の前で見せてくれた姿があります。それは、困難な症例に対し悩み、苦しみ、それでも患者のために最善を尽くそうとあがき続ける、真摯な医師としての姿でした。この受賞は、その献身的な『あがき』と、関係者との密な情報共有によって結実したものです。

我々の活動は、不幸な事故により一時期は終わりを迎えましたが、鈴木先生が築かれたこの連携モデルは、在宅緩和ケアの灯火として決して消えることはありません。今後は、鈴木先生の志が全国の在宅医療の現場で引き継がれ、このモデルケースを実践する後継者が現れることを心より祈念しております。

引き続きご指導、ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。

1)Palliat Care Res 2023;18(4):207-212

2)YouTube Live URL:https://youtube.com/live/O6jRF7cOQiY?feature=share

3)Jpa J Urol Surg 36(5):411-416,2023

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